ソニー株式会社 デジタルイメージング事業本部 AMC事業部 アルファシステムビジネス部
鏡筒機構設計
寺井 孝志
光学設計
末吉 正史
ソニー株式会社 デジタルイメージング事業本部 オプト技術部門 要素技術部
要素技術 (光学エレメント)
上田 博之
要素技術 (アクチュエーター)
河野 隆
ソニー株式会社 デジタルイメージング事業本部 AMC事業部 開発部
要素技術 (制御)
松井 将
G レンズの場合は「他社に負けないもの、画質で勝負できるもの」が必ず付記される…。
新しいレンズをつくるとき、焦点距離やFナンバーを外枠にした「製品コンセプト」が示されるわけですが、想定するユーザーさんが違いますからね。 プロ写真家や写真マニアの方が、作品とかを撮るときにお使いになる。 レンズに対しての要求がシビアで、微妙な差をわかってくださる方々…操作性とかもありますが、まずは画質。 レンズ屋にとっては嬉しい限りです。
ほかのセクションでも同じと思いますが、光学設計は一段上のレベルでやります。 遠近、どの範囲でもきっちりと性能が出るように、絞り込んだときでも背景がきれいに描写できるように、色収差が少なく、シャープな、コントラストの高い絵が撮れるように…。 それらをすべて高い次元で満たすように設計します。
G レンズにはなりません。 表面の粗度もナノメートルオーダーの世界。 ごくわずかでも粗い部分があれば、光が散ってコントラストが落ちる。 枚数が多くなると影響も倍加していきますから、妥協は許されません。 レンズ玉をつくるプロセスの調整・検査値も厳密になり、当然コストは上がってきます。
私は、贅沢しすぎかな?と思うほどのレンズ玉をつくります。 形状は光学設計で決められていますが、どの程度の誤差が許されるのか…精度を上げていかないと鏡筒設計では、メカの機構に精度の高い部品を使って、設計理論上の性能にトライします。 鏡筒の内面で余分な光が反射するとフレアーになってコントラストを低下させてしまいますから、フレアー発生を抑えるのも鏡筒設計の役割です。 また、シビアなユーザーが対象ですから、使ったときの感触も重要。 ズームなど接触する部品は現合で仕上げて、なめらかな動きにしています。 いい部品に、驚くほどの手間をかけて仕上げる…感触は、使っていただければわかります。
ヨーロッパで賞を頂いた70-300mmF4.5-5.6G SSMも、「使いやすくて高性能」という点が認められたのですね。
あらゆる領域で妥協していません。 ズームのワイド側からテレ側まで均質の性能を出しています。 普通であれば、近いところは画質が良くないのですが、こだわった結果です。 描写力がいい。 高い次元でバランスがとれています。
描写性能が高い理由のひとつは、手ブレ補正機構です。 レンズ内に手振れ補正の機構を組み込むと、描写性能に影響してくる場合がある。 αシステムは、その機構をレンズに付ける必要がない。 スペースに余裕がある分、描写性能にこだわった設計ができるわけです。
もちろん、ピントの領域外の描写力をきわだたせる円形絞り機構の効果も見逃せない。 レンズ本来の性能を余すことなく引き出しています。
G レンズの中にはSSM (超音波モーター) を搭載したものもあります。 圧電素子に電圧をかけると振動し、ウエーブが発生します。 この波にのって、機構が回転するしくみですが、高トルクで静粛性に優れています。 G レンズは求められているパフォーマンス、動かす距離・速さが繊細ですから、形状や電圧・周期の設定など設計に苦労します。
G レンズの場合は、要求内容が緻密で高度ですからやりがいがあります。 もちろん電子回路には、そのほかの制御機能・ボディとの情報交換機能も組み込みますから大変です。
その制御は、レンズに搭載する電子回路で行います。 静かに動かしたいとか、速く動かすべきだとか、パラメータを考えます。
私たちの目標は、お客様に喜んでいただけるレンズをつくること。 ソニーらしい自由な発想が、レンズの進化を加速すると確信しています。