「攻殻機動隊 SAC_2045」
株式会社SOLA DIGITAL ARTS 様
株式会社キュー・テック 様
2020年4月からNetflixで全世界配信中の人気3D CGアニメ作品「攻殻機動隊 SAC_2045」
(制作:Production I.G × SOLA DIGITAL ARTS)。シーズン2が現在、制作の真っ最中です。
その制作現場のHDRモニタリングにおいて、24型業務用4K液晶モニターPVM-X2400が使用されています。
塚田様:今回の「攻殻機動隊SAC_2045」では、SOLAさんからリニアワークフローを導入し、OpenEXRフォーマットで素材を持ち込みたいという要望をいただきました。
髙橋様:データを浮動小数点で持ち、階調が広いOpenEXRフォーマットで受け渡しを行えば、HDR制作にも理想的です。
塚田様:シーズン1では、HDRでの仕上がりサンプルをあらかじめご覧いただいた上でマスタリングを開始しました。しかし、実際に始めてみると、SDRとHDRで想定していなかった見え方の違いが発生するなど、さまざまな問題が起こりました。
髙橋様:代表的なケースが「リンゴの上にARの文字が出る」というシーンで起きた現象です。CGで作った赤いリンゴの上に、2Dで制作した白い文字をARとして重ねたシーンでした。それをキュー・テックさんで見たところ、HDRでは文字も赤くなってしまっているということでした。
塚田様:乗せた白文字にうっすらと背景の赤が透けていたことで、HDRでは赤が強く出てきてしまったことが原因でした。SDRでは、RGBチャンネルすべてが100nitsでクリップしていたため白となり、HDRとまったく異なる見え方になっていました。乗せたARのグラフィックがSDR素材だったことも原因の一つでした。
髙橋様:初めはなぜそのようなことが起きたのかわからず、原因特定に時間がかかりました。最終的には、データのRGB値を見ながら、赤を落としていく修正を行って対処しました。
塚田様:ポスプロでは合成済みのものの色をいじるのは難しいので、バラ素材から直していただくのが一番です。しかし、PQ信号のモニタリングをするまで、そのような問題が発見できないことが数多くあり、HDR制作ではやりとりの難しさを感じました。
松本様:例えば、太陽の被写体への映り込みによるスペキュラーが異常にギラついてしまうとか、HDRではこちらで意図したものではない画になってしまう現象が数多くありました。そのあたりがコントロールできないと、画作りには支障があります。キュー・テックさんに持ち込む前にそれを把握したいと思うようになりました。
笹倉様:塚田様からPVM-X2400という新しいモニターを紹介いただき、手が届きそうな価格だったので、シーズン2の制作開始に向けて導入を考えることにしました。
塚田様:制作をスタートする前に、SOLAさんでお使いになるNukeやHiero、当社で使用するRioやDaVinci Resolveで、しっかりと見え方が一致することを確認し、正式に導入していただきました。
松本様:PVM-X2400を導入して、監督OKをもらえるのが明らかに早くなりました。BVMシリーズにはない内蔵スピーカーも便利です。画音の同期ズレを心配することなく、映像と一緒に音もチェックできます。
笹倉様:映像技術は日々進歩していて、「我々もHDRを作れるようになりたい」と思いました。日々新しいことに挑戦をしていきたいと思っていますが、新登場したPVM-X2400がそれを叶えてくれました。
髙橋様:ノウハウの蓄積とPVM-X2400の導入でモニタリング環境が整い、現場で意図した通りのHDR映像をポスト・プロダクションでも再現できるようになりました。これによって、現場では技術的な心配をすることなく映像の演出クオリティーそのものに集中できるので、とても助かります。
[ 取材協力 Production I.G 様 ]
24型業務用4K液晶モニター
PVM-X2400