株式会社TREE Digital Studio 様
株式会社TREE Digital Studio 様は、新設したカラーグレーディングルーム「Bay301」に31型4K液晶マスターモニター『BVM-HX3110』を導入され、2024年2月に運用を開始されました。導入の経緯などをカラリストのみなさまに伺いました。
CMを中心に映画・ドラマ・ミュージックビデオなどのグレーディング
足立様:今回、31型4K液晶マスターモニター『BVM-HX3110』を導入したのは、「Bay301」というカラーグレーディングルームです。近年需要が増加しているカラーグレーディングルームを新設しました。当社のカラーグレーディングルームでは、テレビCMを中心に、映画、テレビドラマ、ネット配信作品のほかミュージックビデオなどの作業を幅広く手掛けています。
歴代ずっとソニーのマスターモニター
足立様:当社ではCRTモニターの時代から、マスターモニターはソニー製を使い続けて います。4K対応以後では、30型4K有機ELマスターモニター『BVM-X300』、31型4K液晶マスターモニター『BVM-HX310』などを使用しています。現在、「Bay301」以外のお客様がお立ち会いになる部屋は、全て『BVM-HX310』で統一しています。
川村様:今回、マスターモニターを選定するにあたって比較検討をしたのは、機種統一という観点で『BVM-HX310』を選ぶか、新しく登場する『BVM-HX3110』を導入するか、というところでした。
足立様:当社では各部屋の区別はせず、統一したコンセプト・機能で部屋を設計しています。過去には他社のモニターも評価・検討したことはありますが、見え方の統一の観点から同じソニーのモニター、できるだけ機種も統一するようにしています。
仕上がりの印象を共有する上で不可欠な“視野角の広さ”で
『BVM-HX3110』に
足立様:『BVM-HX3110』の導入を決めた1つのポイントは、「視野角がさらに広がった」というところです。当社の各グレーディングルームは、カラリスト・カメラマン・監督がマスターモニターとクライアントモニターを見比べながら作業することができる配置に設計しています。そのため、卓の位置関係から、カメラマンや監督がマスターモニターをご覧になる際には画面に対して角度がつきやすくなっています。カラリストとカメラマンや監督が、仕上がりの印象を共有しながら作業する上で「視野角の広さ」は大きな条件でした。
4000 cd/m2の映像を実際に見て将来性を実感、いち早い対応を決意
川村様:『BVM-HX3110』の導入を決めたもう1つのポイントは、4000 cd/m2というピーク輝度の高さです。現状のHDR作品制作においては1000 cd/m2あれば足りるのですが、実際に映像を見てみて「4000 cd/m2もの高輝度によるHDR映像のインパクトはすごいな…」と将来性を感じました。特にネット配信系ではHDR作品が増加しているという背景もあり、4000 cd/m2にいち早く対応できることは当社としても強みになると考えました。
視野角がさらに広がり、カメラマンとの“見え方の共有”も一層加速
足立様:これまで使ってきたマスターモニターでは、カメラマンにモニター正面に回ってもらって確認をしていただく…といった場面もしばしばありました。しかし『BVM-HX3110』では、視野角が一層広くなったので、そういった頻度を減らせるようになりました。
平田様:視野角がさらに広がったことは、実際にグレーディング作業を行っていると大きく実感するポイントの1つです。当然ながらこれからも、お客様が隣に座る位置関係にあることは変わりがないので「視野角はどこまでも広がって欲しい」というのは、今後も変わらない望みでもあります。
川村様:視野角の面では、原理的に有利な、有機ELを採用した『BVM-X300』と比べても変わらない印象を受けています。実用上は十分満足できるラインに達していると思います。
暗部再現性の一層の向上で、グレーディングの追い込みもしやすく
川村様:『BVM-HX3110』は“黒の再現性”が一層高まった、というのを実際に使っていて実感するところです。カメラマンとのやりとりにおいて、暗部のグレーディングの追い込み作業が一層しやすくなりました。
足立様:確かに暗部再現は「ぐっと良くなった」と感じます。
SDR作品の作業でもハイライト再現の向上を実感
足立様:『BVM-HX3110』ではハイライトの再現性の向上も実感しています。SDR作品のグレーディングを行っていても、ハイライトの表現がさらに良くなったことを作業しながら感じるほどです。
“部屋を明るくして見たい”ときにも、映り込みの少なさが強みに
平田様:最近は、ネット配信作品やスマホ向けなど、明るい環境で視聴されることが前提の作品が増えました。そのため、監督やカメラマンからも「部屋を明るくして見たい」とリクエストされる場面が多くなっています。『BVM-HX3110』では、部屋の明るさを最も明るくしても、画面への映り込みは大きく減り、作業に影響を受けにくくなったのが嬉しいところです。
半年に一度のキャリブレーションを全室の全モニターに実施
平林様:『BVM-HX3110』の導入は1台目ですが、各部屋のモニターは概ね半年に一度のペースで定期的に実施しているキャリブレーションによって、どの部屋でも常に同じように見えるようにコンディションを統一、維持しています。キャリブレーションには推奨のディスプレイカラーアナライザーを用いて、自動で行っています。
ソニーの有機ELテレビは“発色の良さ”と“色再現性の高さ”が魅力
足立様:今回、「Bay301」のカラーグレーディングルーム化と合わせて、全室のクライアントモニターもソニーの4K有機ELテレビ『XRJ-55A95K』に入れ替えました。これまで他社の有機ELテレビを使用していましたが、導入後5年ほど経過していたこともあり、全室一斉に入れ替えました。選定にあたっては、カラリストがまず量販店の店頭に出向き、各社の製品を見比べるところから始めました。その中でも、ソニーの有機ELテレビは色再現性の高さが際立っていたことから、有力候補となりました。
マスターモニターとの発色傾向の近さはソニーで統一した強み
足立様:クライアントモニターは「あくまでテレビ」として、「一般家庭でどのように映るのか」「意図がテレビで再現しそうか」を確認するのが主眼ですが、主張が強すぎても困ります。また、赤など彩度の高い部分が破綻しないか、なども重要な要素です。
川村様:以前のクライアントモニターでは、マスターモニターとの発色傾向の違いが顕著で、細かな調整をしていました。一方でソニーの有機ELテレビはマスターモニターとも発色の方向性が近く、無理に合わせ込む必要がなさそうだったことも、ソニーを選ぶ決め手になりました。この点はマスターモニターと同じメーカーに統一したメリットと感じています。
基本的な見え方は変わらないまま、性能が上がった『BVM-HX3110』
足立様:モニターを新しくしたからと言って、見え方が大きく変わっても困る、ということもあって、カラーグレーディングを依頼されるお客様が「モニターが新しくなったね。」と気づくような場面はありません。しかし『BVM-HX3110』は、「これまでと基本的な見え方は変わらないままに、性能が上がった」ということを実感させてくれるモニターです。隣に座るカメラマンなどとの見え方の差が小さくなったことは、自信をもって『BVM-HX3110』のある「Bay301」をお勧めできるポイントになったと思います。
川村様:当社では、各部屋の更新のタイミングでモニターも入れ替えながら統一を図っていく流れがあります。現在『BVM-HX310』を運用している部屋は、2年〜6年ほど経過しています。今のところ決まっている次の更新の予定はありませんが、今後の更新では必然と『BVM-HX3110』を導入し、機種を統一していく流れになるのではないかと思います。
常に最新を維持することで、お客様の要望を達成できる
足立様:現場としても、今後、更新や新設がある時には『BVM-HX3110』を導入していけると嬉しいと思っています。今回のクライアントモニターの全室更新もそうですが、私たちは常にお客様に対して「どのようにしたらいいプレゼンができるか」ということを日夜考えています。機材や設備の面でも、常に「最新」を維持することで、「どんなコンテンツの制作においても、最も高いクオリティでお客様の要望を達成できる」と考えています。これからも、お客様には、この最高の環境をご活用いただけたら嬉しいと思っています。
※本ページ内の記事・画像は2024年5月に行った取材を元に作成しています
株式会社 TREE Digital Studio
東京・広尾の2拠点にカラーグレーディングルーム4室、ノンリニア編集室17室、MA室6室の計27室を擁し、テレビCMを中心に、映画やテレビドラマからネット配信作品、ミュージックビデオなど幅広い分野における日本のハイエンド作品制作を支える大規模ポストプロダクション。近年は、アメリカ・ハリウッド近傍に本拠を置き、アメリカ各地のほか世界に広く拠点を構える世界的に著名なポストプロダクションCompany3社や、イギリス・ロンドンに本拠を置き、同様に世界各地に拠点を置くポストプロダクションThe Mill社などとも業務提携を行い、先進的なリモートグレーディングサービス(遠隔カラーグレーディング)を提供するなど、グローバル展開も強力に推進している。
31型4K液晶マスターモニター
BVM-HX3110