株式会社テレテック 様
当社では、大型中継車を4台、小型中継車を1台、報道用SNG車を1台保有し運用をしており、現在、フラッグシップであるトレーラー型中継車「107号車」を多様化する4K中継に対応すべく改修を行っています。107号中継車は、以前からマルチフォーマットスイッチャーMVS-7000Xを搭載し、3G-SDIに対応するシステム構成を採用していたため、4K制作にも簡易で対応していました。しかし、今回はスイッチャーをマルチフォーマットスイッチャーXVS-9000に、カメラをマルチフォーマットポータブルカメラHDC-4300などに入れ換え、HDと変わらない本格的な4K制作ができるようにするための改修・更新を行っています。当社では、やや小ぶりの大型中継車「108号中継車」が既に4K対応となっていますので、2台目の本格的な4K中継車になります。
この107号中継車は、ゴルフ中継など、大型のスポーツ中継におけるセンター中継車の役割をメインにこなしています。今回の改修は、日本で今後、数多くの大規模な国際的スポーツイベントが控える中で、海外のお客様などからの「4K」「HDR」「広大な制作空間」といった、中継車に対するニーズに応えていくためのリニューアルです。
当社では、制作技術部門以外に、中継車のSI(システムインテグレート)部門を持ち、設計からシステムアップまでをワンストップで行っています。自社で用いる中継車だけでなく、社外の放送局様などが使う中継車のSIも行っています。社内にSI部門を持つフットワークの軽さから、中継車は都度新造して更新するのではなく、需要の変化に応じて、頻繁に改修などを行いながら運用しています。同じ中継車を10年間そのまま使うようなことはありません。今回の改修も、その1つになります。
今回、VE用マスターモニターの選定にあたっては、ソニーを含め3機種のモニターを実際に比較して検討をしました。今後4K HDR制作においてはHLGでの制作が増加することから、「4K HDR対応」「制限のない1000nitsのハイライト」「100万対1の高いコントラスト」などが選定条件でした。
それらの条件を満たす製品の中からBVM-HX310を選ぶに至った理由は、色再現などはもとより、メニュー操作などの使いやすさ、そして、グレアパネルの採用でした。
比較した3機種のうち他社の2機種はノングレアパネルでしたが、中継車内の監視用としては、よりクリアな発色が得られるグレアパネルが最適でした。ノングレアと違って、透明性がよく非常にきれいに見えます。加えて、生放送などを扱う中継車では、ストレスなく素早く操作できることが重要です。メニューなどに入らず各機能をダイレクトに操作できる使いやすさ、他の中継車のマスターモニターと共通した操作性という観点でBVM-HX310を選びました。
今回の改修では、23.98や29.97などのフレームレートへの対応の都合から、クアッドリンクの3G-SDIでシステムを構成しています。しかし、当社では改修などを行いながら使っていきますので、12G-SDIにも対応していることも、将来性の面で良いと思います。
BVM-HX310は4K制作におけるマスターモニターとして導入しました。しかし、4K制作はまだ多くなく、改修完了後も当面は9割近くがHD運用になると思います。BVM-HX310は寿命を気にせずに使える液晶パネルであることや、4Kパネルを生かしたHDの4分割表示機能もあります。加えて、車内の設置場所も便利な場所にしましたので、HD制作時にも活用できると思います。
先行して4K化した108号中継車では、すでに4Kで花火大会の中継や、4K HDR(収録)・HD SDR(生放送)のプロレス中継の制作なども行っています。107号中継車が竣工した後は、4KやHDRによる、さらに大きな案件も積極的に獲得していきたいと考えています。
今後、制作を重ねる中で、ノウハウを蓄積しながら、BVM-HX310の3D LUTなど、充実した機能をフルに活用していきたいと思います。
液晶や有機ELの時代を迎えてから、当社の中継車におけるマスターモニターは、17型有機ELマスターモニターBVM-F170に始まり、ソニーが中心となりました。4Kマスターモニターとしても、すでに30型4K有機ELマスターモニターBVM-X300を2台保有し、主に4K制作における108号中継車のマスターモニターとして使っています。また、最近更新を行った中継車のVE卓には全て、17型有機ELマスターモニターBVM-E171を埋め込んでいます。
今まで使ってきて、ソニーのモニターは製品の信頼性が高く、サポートもしっかりしていると感じています。
今後の導入においても、ソニーのモニターをマスターモニターの第一候補として考えていくと思います。
取材日:2019年4月下旬
株式会社テレテック
テレビ番組の中継や、スタジオ制作におけるサービスを中心に提供する制作技術会社として1975年に創業。地上波・BSテレビ放送局を中心に、スポーツやコンサート・ライブ中継、バラエティー番組のスタジオ技術、報道中継、ENG制作、照明技術などさまざまな分野で活躍。
制作技術会社としては特徴的な、システムインテグレーション部門も擁し、中継車の設計や架装から、映像コンテンツを活用するオリジナルシステム開発、Webアプリケーション開発まで幅広く手掛ける。