2017年8月掲載
看板番組の制作を担うAスタジオを4K対応に更新。HD番組の制作においても、大幅なクオリティーアップ使い勝手のさらなる向上を実感。
HDC-4300を8式導入。うち4式は大型レンズアダプターHDLA-1500を装着し、大型レンズに対応。
株式会社TBSテレビ様は、同社 赤坂放送センター Aスタジオ/サブシステムを、マルチフォーマットポータブルカメラHDC-4300や、マルチフォーマットスイッチャーXVS-8000を中心とした、4Kライブ対応の制作システムに更新され、2017年2月より本格運用を開始されました。
同社 技術局 制作技術統括部 山下 直様、同局 制作技術統括部 菅沼智博様、同局 制作技術統括部 依田 純様、株式会社TBSテックス 現業本部 スタジオ技術部 映像技術担当 テクニカルエキスパート 高橋康弘様、株式会社エヌ・エス・ティー 現業本部 技術部 木野内 洋様に、システム更新の目的、機器選定のポイント、導入後の運用状況ならびにご感想などを伺いました。
なお、記事は4月中旬に取材した内容を、編集部でまとめたものです。
山下 直様
菅沼智博様
依田 純様
高橋康弘様
木野内 洋様
当社のAスタジオは、Bスタジオと並んで、赤坂放送センター内に8つあるスタジオの中で、最も大きな規模のスタジオです。主にゴールデン帯のバラエティ番組を中心に、多くのレギュラー番組の収録に用いているほか、土曜日の「新・情報7daysニュースキャスター」や日曜日の「アッコにおまかせ!」といった生放送にも使用しています。この他にも、選挙特番の生放送などにも使用しており、TBSの顔となる番組を支えているスタジオでもあります。
スイッチャーコントロールパネルはTD卓(左奥)とセカンダリー卓(手前)に2式常設。
当社では、おおむね12年周期でスタジオの設備更新を行ってきており、今年はAスタジオの更新の時期でした。一方、2018年のBSにおける4K放送開始の方向性が打ち出される中、今から更新をするスタジオで4K対応をしない、という選択肢は考えにくい状況になっていました。当社には、すでに先を見据えて、一部4K対応のスイッチャーが導入されているサブはありますが、今回は、先のような状況から、当社としては初めてカメラシステムまで含めて4K制作に対応できるスタジオ/サブを導入しました。実際の計画は2015年の春からチームを作り、完成まで約2年弱のプロジェクトでした。
VE卓用にBVM-E251 2式とPVM-A250 1式を配置。VE卓にはモニターの奥行を前後に調整できる機構の他、使い勝手を重視したさまざまな機能を装備。
今回は、運用比率やコストなどのバランスを考え、HDをメインに据えつつ、必要時には4K対応に切り替えができるシステムとして、検討を行いました。カメラはHDC-4300をベースバンドプロセッサーユニットBPU-4000とカメラコントロールユニットHDCU-2000をともなって運用する形で8式常備しています。うち4式は大型レンズアダプターHDLA-1500を組み合わせています。ハンディクレーン1式、大型クレーン1式も使用可能です。レンズはHD用を使用しており、今後の更新を検討しています。スイッチャーは、XVS-8000の4M/E+P/P構成です。コントロールパネルはTD卓に3M/E、セカンダリー卓に2M/EとAUXパネルが用意されており、2名でのオペレーションが可能です。可搬型コントロールパネルも用意しており、選挙特番などでの使用を想定しています。
今回の更新にあたり、システムインテグレーションをどこに依頼するか、そして、機材をどのメーカーにするか、という検討をしました。すでに、同規模のスタジオであるBスタジオでは、2013年にソニーのカメラHDC-2000シリーズのほか、スイッチャーMVS-7000Xを導入していました。当社としては、AスタジオとBスタジオを“ブラザースタジオ”と位置付けており、この2つのスタジオで、共通性の高いシステム構成やオペレーションを可能にしたい、という思惑がありました。HDC-4300やXVS-8000は、同じソニー製品なのでこれらと高い運用の共通性・互換性があります。これらの機材を中心に構成することにより、スタジオ間での番組の移動なども円滑に行えるとの期待がありました。
当社における生放送サブ用スイッチャーとしては、先のBスタジオ更新において、初めてソニー製品を採用しました。当初は従来の既設スイッチャーとの使い勝手の違いにおいて現場で少々戸惑いはあったものの、徐々に習熟して、幅広い機能を使いこなせるまでになりました。Bスタジオで採用したMVS-7000Xの後継であるXVS-8000は、現状4K対応スイッチャーとしては最も大規模で機能が充実しているスイッチャーだと考えています。当社で従来導入している一部のサブ用スイッチャーが4K対応であるとは言っても、仕様や運用面での制約が多く、このXVS-8000の導入があってはじめて、4K番組制作への対応が実現できたと考えています。ソニーは、4K制作システムにおいて、その導入事例や製品ラインアップについても、最も実績のあるメーカーだと考えています。これまでの当社の他システムにおけるシステムインテグレーションやアフターサポートに対する実績などからも総合的に見て、カメラ、スイッチャー、システムインテグレーションを全てソニーに任せるのが良いだろう、という最終判断になりました。
実際に運用を開始してみてわかったことは、HDC-4300がとてもSN比が良く、またHD映像で見てわかるほど解像度が良いということです。現状は他スタジオのHDカメラの画質に印象がマッチする様、HDC-4300のディテールなどを調整していますが、現状全く気にならずに運用できています。4Kの番組制作については、制作サイドの意向と関係しますが、まずは音楽番組から着手してみたいと考え現在検討をしており、機会があれば順次取り組んでいきたいと考えています。ただし、4Kでの生放送はまだ先と考えており、当面は収録番組中心の運用を想定しています。
ソニーには、今後も引き続き、制作現場でのニーズを反映した幅広い4K対応製品のラインアップの拡大と充実を期待しています。