“いま”の需要に応えるシステム構成は、次のとおりです。マルチフォーマットスイッチャーのXVS-7000を中心に、4KシステムカメラのHDC-4300を3台、カメラコントロールユニット（CCU）とベースバンドプロセッサーユニット（BPU）はHDCU-2500とBPU-4000をそれぞれ3式、さらにマルチフォーマットコンバーターユニットHDRC-4000を3式常設しています。カメラについては、CCUとBPUをさらに7式、合計10式搭載できるよう、ラックにスペースを用意しています。いままでの経験から、車内には機材仮設などに備えた大きな多用途スペースを確保しています。そちらにCCUやBPUを仮設することで、それ以上のカメラ台数についても車内に増設することができます。

レコーダーは地上波番組制作用にXDCAM HDを常設しているほか、プロダクションビデオサーバーPWS-4500を搭載しており、スポーツ中継向けスローからマルチカメラのパラ録りまで、幅広く対応できるようにしています。PWS-100MG1を介して持ち込みメディアへの転送も可能です。

既存の小型HD中継車の運用では、導入から11年の間で求められたニーズが大きく変化しました。この先10年も同様に「どんな需要が出てくるか分からない」という前提で、フレキシビリティーを最優先した設計をしました。4K にはじまりHDRへの対応、また、HDR もHLGやPQ、S-Log、中継、パラ録りまで、「とにかく何でも」こなせるうにしたのは、その象徴です。
スペックの面に限らず、運用の面も同様です。仮設の作業性を重視し、ユーティリティー系の入出力の系統を豊富に用意したほか、ほかの中継車との連携運用を考慮して、S-BUS で制御するタリー外部接続端子を用意しています。また、XVS-7000のメニューパネルと1MEを持ち出し可能とし、2PGM制作などに対応します。
仕様づくりに当たっては、いままでの経験だけでなく、他社の中継車も参考にしながら検討を重ねました。おかげで期待通りの中継車になったと思います。
時期的には12G-SDIには間に合わず、3G-SDIベースの設計となりましたが、ソニーからは、スペース確保のために新しい細い同軸ケーブルの提案があるなど、いろいろと欲張った仕様を盛りこみながらも、配線重量を抑えて積載重量を確保することができました。

今回の中継車の導入に当たっては、複数の会社さんから提案を受けました。最終的にソニーに決定したのは、グループ会社で運用しているカメラがソニー中心であることも一面ではありますが、4KやHDR対応の機材のラインアップ、システムの完成度の面で、ソニーにしかできなかった中継車だったからです。
振り返ってみて、他社製品を組み合わせた部分のインテグレーションや、他社製品を含めてのサポート能力の高さの面でも、やはりソニーにして正解だったと思います。
2月に納車を受けてからすぐに沖縄まで運び、プロ野球オープン戦の中継で運用を開始しましたが、その後も大きなトラブルもなく非常に安定しています。広島で運用していたときにサポートをお願いした際も、広島営業所で素早く対応してもらい、ソニーの全国ネットワークのサービス体制がとても心強く感じました。
今後もソニーには、サポートやサービス体制などを通じた、心強いバックアップを期待しています。