ZX100 Project Member’s Voice 世代を重ねることで進化した、 軸のあるプレミアムサウンド
ハイレゾ・オーディオの火付け役となったNW-ZX1の後継機「NW-ZX100」。先代を超える音質だけでなく、音楽専用機に求められるユーザビリティーをも追求した開発メンバーに、ZXシリーズ3作目ゆえのアドバンテージと重圧、そして高音質への変わらぬこだわりを聞いた。
あらゆるパーツを音質のために働かせる、突き詰めた開発スタイル
高橋 功[メカ設計]
アルミの塊を切削してメインシャーシと一体化するというモノコック構造で、基本的にはZX1と同じですね。今回、そこからさらに攻めて進化させたポイントは背面にあります。ZX1はバスタブのような形になっていたのですが、ZX100では背面下部のふくらみの部分までラウンド形状でつなげて、一体化させることにこだわりました。これによってZX1以上の剛性を持たせています。
若林 宏明[電気設計]
このがっしりとした構造がまさに電気的に機能していて、低音のどっしり感が変わってきます。音にまとまりも出てきます。もちろんグラウンドの安定にも関わってきます。
高橋 功[メカ設計]
このプレートには、銅メッキと金メッキを施しています。銅メッキの厚みに関してはさまざまなパターンを作り、音の変化を確認しました。やはり、厚くすればするほど効果が大きくなりましたが、どうしても高価になってしまうのが悩ましいところです(笑)。
若林 宏明[電気設計]
コストはかさみますが、銅メッキを一番厚いものにしたおかげで電気的な抵抗値(インピーダンス)はぐっと下がりました。さらに銅メッキの上に金メッキをかけることで酸化(腐食)を防止でき、このステンレス鋼板と筐体との一体感が生まれます。これにより電圧のズレが生じにくくなるので、グラウンドもさらに安定します。
佐藤 浩朗[音質設計]
インピーダンスを下げることで、音はどんどん変わっていきます。ここは、これまでのZXシリーズで培ったノウハウが存分に生かされた部分ですね。
若林 宏明[電気設計]
AシリーズやZX1、ZX2でもさまざまな技術を導入しましたが、さらにもうワンステップ、「基板やデバイスで何かできないか」ということを、実際に音質原理試作を行いながら、変化する音を確認しながら常に検討してきました。
特に今回の「Filled VIA」とはんだに関しては、我々エンジニアが基板メーカーさん、はんだメーカーさんの工場に伺うなどして現場の方々とお話をしながら、こちらの意向を理解していただいた上で、ご提案もいただきながら採用にこぎつけました。
佐藤 浩朗[音質設計]
社外秘のため詳しく言えないのが残念ですが、はんだだけでかなり音が変わります。今回、いろいろ条件を変えたものを何種類も用意し、ホームオーディオの開発チームとも試聴会を重ねることで理想のはんだにたどりつきました。
若林 宏明[電気設計]
この0.7ミリ厚の基板の中に、8層の銅箔がミルフィーユ状に重なっています。基板の表面だけでは信号線を全部つなぎきれないので、内部の銅箔も使って接続しているというわけです。
若林 宏明[電気設計]
そうですね。断面の拡大写真を見るとわかりやすいのですが・・・1層目(基板表面)と2層目を接続するのに、これまでは凹型のような形でくっつけていたのですが、その凹みの部分を銅で埋めることで導通性能が良くなります。電気信号の通りが良くなるわけですから、当然音質に貢献して、スピード感やエッジ感などにけっこう効いてくるんです。
若林 宏明[電気設計]
基板の銅箔と銅箔の間にはプリプレグと呼ばれる材料が入っているのですが、その誘電率が高いと銅箔がお互いに干渉してしまって、電気信号の流れに遅延やひずみが生じる場合があります。そこに低誘電率の素材を使った基板を作って実際に聴いてみたところ、これも音が良くなるわけです。
高周波を扱う機材では利用されてきた素材なのですが、それをウォークマンにも生かせるのではないかというチャレンジです。こういったオーディオとは一見関係なさそうな素材に着目して、実際に試作してみて、効果があれば即採用するというノリのよさは、ZXシリーズ独特の開発スタイルだと思いますね。
佐藤 浩朗[音質設計]
ZX2ほどスペースの自由度があるわけではないので、こういった部分でせっせと工夫を重ねる必要があるんです。
高橋 功[メカ設計]
たかがビスです。されどビスなんです。ちょっとどこかのキャッチコピーみたいですが(笑)。
さて、どこにこだわりがあるかと申しますと、「緩み止め」の部分です。ビスというのは振動や衝撃等でだんだん緩んできてしまうので、通常は緩み止めが施されているんです。いろいろなタイプがあるのですが、樹脂を塗るのが一般的です。
今回は、その樹脂の中に導電フィラーというものを配合したビスを初めて採用し、ビスを介しても導通させることを実現しました。このフィラーはお付き合いのあるねじメーカーさんから紹介されたもので、さらに我々の細かい要望に沿ってアレンジしていただいたZX100専用のカスタム品を、1台あたり20本ぐらい使っています。
田中 光謙[商品企画]
この「導電ビス」はメカ設計の高橋から提案してくれたのですが、お互いの専門領域や守備範囲の関係でぶつかることも少なくないメカ設計と電気設計が同じ目的に向かって全面的に協力する姿勢は、音質向上の点で非常に大きかったと思います。さきほどの基板もそうですが、ZXシリーズの強みのひとつは、本来の役割とは違う観点で、筐体や部品に高音質化のための工夫をこらしているところですよね。
若林 宏明[電気設計]
44.1kHz系と48kHz系を独立させることで、ハイレゾ音源だけでなく、CD音源やDSD音源*も一層楽しんでいただければという考え方ですね。ZX2のときにわかっていたことですが、明瞭感・定位・音場がはっきり向上します。
* 44.1kHzの倍数の176.4kHzにリニアPCM変換再生
若林 宏明[電気設計]
ZX1のときは47μF(マイクロファラッド)でしたが、今回は100μFの「OS-CON」を使いました。倍以上の容量にグレードアップすることによって、低域・中域・高域のすべての音質が一段上がりますね。
若林 宏明[電気設計]
電池パックそのものは1500mAhという容量のものなんですが、ZX2同様に保護回路基板のパターンを最適に設計し、よりインピーダンスが低く効率の良い仕様に変えています。
ウォークマンZXシリーズ
NW-ZX100
未体験の、心震える感動を