ZX100 Project Member’s Voice 世代を重ねることで進化した、 軸のあるプレミアムサウンド
ハイレゾ・オーディオの火付け役となったNW-ZX1の後継機「NW-ZX100」。先代を超える音質だけでなく、音楽専用機に求められるユーザビリティーをも追求した開発メンバーに、ZXシリーズ3作目ゆえのアドバンテージと重圧、そして高音質への変わらぬこだわりを聞いた。
高音質が凝縮された、手応えのある一体感
大西 民恵[デザイン]
初めに設計チームからざっくりとした外形寸法などを聞いたのですが、ZXシリーズとしては横幅が控えめで、手にすっとなじむサイズ感にまず驚きました。ZX1を超える音質で、スタミナもぐんと増えていて、新たな高音質パーツも搭載しているのに、こんなにコンパクトになっているのはどういうことって(笑)。そこはもう、なんとしても、このサイズ感を生かしきる形を考えたいと心に決めました。
大西 民恵[デザイン]
ZXシリーズはそれぞれ、金属から削り出した筐体により剛性を高めることで、音質にも大きく貢献してきました。当然そこはZX100でも踏襲して、金属の塊感を強調した、小ぶりだけどずっしりと重みを感じる――「高音質がギュッと凝縮されたいいモノを持っている」という印象をお客さまに抱いていただけるような仕上がりを目指しました。
カラーリングをシルバーにしたのも、ツヤ感を含めたアルミの質感をダイレクトに伝えたいという思いからです。
大西 民恵[デザイン]
大型のコンデンサーや極太のケーブルを収めるために必然的にふくらむこの部分は、ZX1やZX2同様デザインに生かしたいと考えました。結果的に見た目は同じようですが、ZX100のモノコック構造はこの段差の部分までアルミ1枚でつながっているので、ここから背面ラバーにかけて不要な部分を削ぎ落とすようなイメージで形作っています。
大西 民恵[デザイン]
コンセプトでお話したように、ここでも一体感にこだわった、できるだけシームレスなデザインを追求しました。筐体とボタンの間の隙間をギリギリまで詰めたり、お互いの質感を可能な限り合わせたり・・・特に、上下左右どこかのキーを押したときに反対側が浮き上がってしまわないようなフラットな機構にするために、メカ設計の方々には苦労をおかけしました。
高橋 功[メカ設計]
ボタンを押したときの傾き加減や姿勢制御については本当に苦労しましたね。前面ボタンのど真ん中に、独立した丸ボタン(再生/一時停止/決定)もあるので、ボタンの傾きを司る軸を素直に中心にもってくることができず、難易度が余計高くなりました。
大西 民恵[デザイン]
たとえばプラスチック製だと、素材自体にたわみがあるので比較的容易なのですが・・・アルミは板の剛性がそのまま出てしまうので、反対側が浮かないように抑えるには特殊なメカニズムが必要になります。しかし、その高い剛性こそがデザイン的に精度の高い、精密なインターフェースの実現につながるので、アルミの採用はどうしても譲れない部分でした。
高橋 功[メカ設計]
悩みに悩んで解決策を模索した結果、今回は通常のボタンより部品点数をかなり増やした構造を採用しました。特別な部品をボタンの中に設置して、常に下方向に引き込む仕組みをとることでフラットな見た目を実現しています。
そしてもちろん、小気味のいい操作感をないがしろにするわけにはいきませんから、なおさら難易度が上がり、私としては「このボタンの出来次第で、今回のモデルの品位が左右されてしまう」という背水の陣で設計に臨みました。
大西 民恵[デザイン]
小さめのボディには細かなパターンを合わせる方が、より精緻な印象を与えられるので、ZX1やZX2に比べてかなりキメの細かいシボ目にしました。また、ブラスト処理*された背面のふくらみとスムーズにつながるようなテイストに仕上げているので、そういった一体感にも注目していただけると嬉しいですね。
* 粒子の吹き付けによる加工処理
大西 民恵[デザイン]
レーザーで焼くことで少し彫り込んだような凹みと色が付くので、周りとの質感の違いが表れます。微妙なさじ加減に苦労しましたが、レーザー照射の時間などによって色の濃度を変えたサンプルを真っ白〜真っ黒まで何種類も作って、最終的にシルバーと親和性が高く落ち着きのある、マットな淡めのグレーに決めました。 通常の印刷ではなく金属ならではの表現ですから、触るとアルミの素材感が伝わってきますし、長く使っても消えることがないのも魅力ですね。
大西 民恵[デザイン]
別売のアクセサリーだからこそ一番いいものをメーカー側から提供したいという思いで、本革にこだわりました。最も苦労したのは、サイドのボタンとスロットのところですね。同サイドに穴を2カ所空けると、コバ(革の端っこ)の処理など成形上の難易度が上がってしまうので。
特にこだわった点は、ZX100のボディをつかむ部分のプロポーションです。ケース装着時に本体と一体感がでるよう工夫をこらしました。
大西 民恵[デザイン]
ウォークマンでは、HOME画面に行くとBluetoothや各種設定などさまざまなアイコンがタイル表示で並んでいるのが普通です。でも、今回は音楽再生に特化したモデルなのだから、プライオリティーをつけようと割りきりました。そこで、HOME画面に簡易音楽プレーヤーアプリを置き、基本的な音楽操作ができるようにしました。
田中 光謙[商品企画]
もうひとつ、オプションボタンを押すことですぐにHOME画面から音楽再生画面へジャンプできるところもポイントです。お客さまが迷うことなく自由に行き来できるよう、ソフト設計担当のメンバーに改良してもらいました。
大西 民恵[デザイン]
手のひらになじむサイズだけれど金属の質感をずっしりと感じられる、そしてもちろんZXシリーズならではの高音質で音楽を堪能できる会心のモデルです。いつも一緒に出かけるお気に入りの腕時計のような、そういう愛着のある道具として長く使っていただけると嬉しいです。
田中 光謙[商品企画]
ZXシリーズとして3モデル目になり、これまで培ってきたノウハウと今回初採用の高音質技術を一体感のあるアルミの筐体にギュッと凝縮させて、狙いどおりのプレミアムサウンドを実現できたと思います。音質へのこだわりから重さはZX1よりやや増えていますが、本当に持ちやすくなっているのでぜひ手にとっていただき、音質と質感をお確かめのうえ、気に入っていただければ幸いです。
佐藤 浩朗[音質設計]
今でも、当時のウォークマンの中では最上位機種のNW-X1000シリーズやNW-A860シリーズを愛用してくださっているお客さまがいらっしゃいます。本当にありがたい限りです。
実を言うと今回のZX100は、それらのモデルに携わったメンバーが関わっているので、X1000やA860ユーザーの方にもご満足いただける品質に仕上がっていると思います。ぜひ店頭などでチェックしていただき、そしてお買い上げいただけるとみんな喜びますので、どうぞよろしくお願い致します。
若林 宏明[電気設計]
我々もだいぶノウハウを蓄積してきた「S-Master HX」の能力をいかに引き出すかということが、今回のミッションのひとつでした。同時に、ZXシリーズで培ってきた技術を贅沢に盛り込んで、必要なところは改良して、その上でこのサイズに収めることに成功したZX100は、開発メンバー全員の技術の結晶だと誇りに思っています。
それと、別売のヘッドホン(MDR-NW750N)も私が担当したので、騒音をカットした静かな環境でいい音を楽しめる「ハイレゾ対応デジタルノイズキャンセリング機能」の効果も喜んでいただけると嬉しいですね。
高橋 功[メカ設計]
私は20年以上のエンジニア人生で、いろいろな製品を設計してきました。当然ですが、その中で100%満足できるものは残念ながらひとつもありません。このモデルに関してもそれは同じなのですが・・・ただ今回は、100%とまでは言えませんが少なくとも自分史上最高の出来だと自負しておりますので、お客さまにもZX100を気に入っていただけると、まさにエンジニア冥利に尽きます。
関根 和浩[プロジェクトリーダー]
今回の「高音質ガイド」はアプリではなくリーフレットになったのですが、その一番初めにあえて「音源を取りこむヒント」という項目を付け加えました。というのも、「Medio Go」を使ってCDからリッピングするとAACコーデックがデフォルトになるので・・・。
やはりZXシリーズですし、今はFLACという可逆圧縮できる便利なコーデックもあるので、我々としてはCD音質でそのまま取りこんでいただきたいという思いをこめて書きました。
関根 和浩[プロジェクトリーダー]
そうですね。CDで販売された楽曲の数はそれこそ膨大ですし、たくさんのコレクションをお持ちのお客さまも多いですよね。かつて私はCDウォークマンを作っていたのですが、このようにCDと同等の音質をコンパクトに持ち歩ける時代になって、ZX100という自信作を送り出せることが全くもって感慨深いです。ぜひ、ハイレゾ音源とともにCD音源も楽しんでいただきたいですね。
ウォークマンZXシリーズ
NW-ZX100
未体験の、心震える感動を