佐藤 浩朗 [ 音質設計 ]
私はどうしてもこの部品を使いたかったのですが、ポータブルオーディオに通常載せるようなサイズではなく、とても高さがあるので普通は敬遠されるんです。そこで、この「OS-CON」と、他に候補にあがった2種類のコンデンサーを使った計3つの基板を作って、実際にみんなで聴き比べました。やっぱり低音の力強さと高域の伸び、中域のボーカルの艶やかさが明らかに違うので、メンバー全員納得の上で採用が決まりましたね。
佐藤 浩朗 [ 音質設計 ]
これは電源のもとのところに搭載される部品で、ESR(等価直列抵抗)が低いという特性があり、広い周波数帯域でコンデンサーの仕事をしてくれます。ここから「OS-CON」にノイズを除去したきれいな電気を流すことで、最終的な音も澄んできます。
佐藤 浩朗 [ 音質設計 ]
計算上はもっと細い線でも十分で、電力的にはまったく問題はないのです。でも線を太くして短くして実験してみると、結果としてノイズが減る。やっぱり低域の力強さや高域の伸びなどが変わってくるので、ここも譲れない部分でした。
佐藤 朝明 [プロジェクトリーダー]
はじめは半信半疑で(笑)、別に太くしても変わらないんじゃないかと思いながら実際に聴いたら……格段に違いましたね。
佐藤 浩朗 [ 音質設計 ]
さらに電池保護回路のFET(電流スイッチ)についても大電流用に変更しましたが、こちらも聴感上有効でした。
佐藤 朝明 [プロジェクトリーダー]
保護回路自体は機能しなくても回路には電流が常に流れるので、そこの土管を太くしたんです。線材・保護回路含めて全部の土管を太くしてインピーダンス(電流の流れにくさ)を下げたことで、実際に聴いたら本当に音が良くなって表現力が高まったのには感心しました。
佐藤 浩朗 [ 音質設計 ]
デジタルオーディオなので、もとになるクロックはとても大事です。高精度な周波数を出してくれる水晶発振器を使うことで波形のクオリティーが向上し、ジッター(信号波形の時間的なズレ)が少なくなるので音が綺麗になります。専用のものを設置できたことは、ZX1の大きな強みです。
佐藤 浩朗 [ 音質設計 ]
基板からヘッドホンジャックへの出力に低抵抗のOFC(無酸素銅)ケーブルを使っていて、これは極太です。どうしてもヘッドホンにロスなく音を伝えたかったので、はじめから「ここはOFC使います」と言い切って進めていました。
でも途中で「本当に無酸素銅なんて必要なの?」という疑問が開発メンバーから出たので、同じ太さの一般的なケーブルに替えてみたのですが、思ったとおり透明感がガクッと落ちた。結果的に貢献度がはっきり確認できたので、あらためて堂々と強く推しました(笑)。
土屋 亮 [ メカ設計 ]
OFCケーブルは硬くて曲がりにくいので、メカ設計としてはかなり迷惑な存在でした(笑)。その上、「OS-CON」が普段使っているコンデンサーの倍ぐらいのスペースを取るので、効率良く組み込んでもどうしてもフロントボトムは分厚くなりましたね。
佐藤 浩朗 [ 音質設計 ]
さらに、デジタルアンプの不要なノイズを取り除くローパスフィルターにも改良を加えています。この回路はコイルとコンデンサーで形成されていて一般的にはセラミックコンデンサーを使うのですが、フィルムコンデンサーのほうが中域のボーカルの艶やかさに優れているので、全体のバランスをみながら、こちらを採用したほうが狙った音質になると判断して押し切りました。
佐藤 浩朗 [ 音質設計 ]
金属部品を使うことで硬性が高くなり、ガタが出にくい構造になっています。これにより正しい接触圧を保つことができるので、持ち歩き時の振動などに起因するノイズを防ぎます。