モノの性格をむき出しに表現した必然のデザイン
モノの性格をむき出しに表現した必然のデザイン
「好きなようにデザインして最高のモノを創ってください」と任されたときのお気持ちは?
「好きなようにデザインして最高のモノを創ってください」と任されたときのお気持ちは?

矢代 昇吾 [ デザイン ]
商品企画から「コスト制約はないです」と言われたときは、ソニーに入って初めてそんなセリフ聞いたので驚きました(笑)。非常に燃えましたし、もう楽しくてしかたがないという感じ。プレッシャーは全くなかったですね。

矢代 昇吾 [ デザイン ]
強い意志を感じるフォルムですね。どのようなコンセプトでデザインされたのか興味があります。
矢代 昇吾 [ デザイン ]
強い意志を感じるフォルムですね。どのようなコンセプトでデザインされたのか興味があります。

矢代 昇吾 [ デザイン ]
もちろん色々なデザインがあっていいのですが、私は「モノが持っている性格をできるだけむき出しに表現」したほうが、強くて良いデザインになると考えているタイプなんです。特に今回の背面のふくらみ。「OS-CON」などのパーツによる隆起は、普通にデザインしようとするとかなり足かせになる部分ですが、逆にこれを見た瞬間に「宝の山だな」「他とは全く違う顔ができるな」と内心喜んだくらいです。
だから、何よりも高音質を構成するためのファクターありきで、それらを「最短距離で結んだデザイン」。それがZX1にとって最も望ましい、必然の形だと捉えました。デザインも音質のコンセプトと一緒で、余計な色を付けずに品位と完成度の高さだけを自然と感じられるものにしたかったのです。

スマートフォンなどに特徴的な、フラットなスタイルとは対極にある形が目を引きます。
スマートフォンなどに特徴的な、フラットなスタイルとは対極にある形が目を引きます。

矢代 昇吾 [ デザイン ]
やはり、スマートフォンとは違う方向に行きたい――ウォークマン®はあくまでもオーディオプレーヤーだし、音楽専用機でしか成り立たない姿を目指すべきだと強く思いました。
スマートフォンは薄くてフラットな筐体にさまざまな機能を凝縮させた素晴らしいプロダクトですが、一方で、その薄さを実現するがために機能をあきらめている部分も感じるんです。そういうものとは一線を画した姿にしたい。薄さにこだわるのではなく、むしろこの製品が持っているポテンシャルを最大限に引き出す形状を探るべきだと考えました。

背面下部のふくらみは、高音質をあきらめなかった――むしろ優先した証なのですね。
背面下部のふくらみは、高音質をあきらめなかった――むしろ優先した証なのですね。
背面下部のふくらみは、高音質をあきらめなかった――むしろ優先した証なのですね。

矢代 昇吾 [ デザイン ]
まさにそうです。高音質コンデンサーを入れるために背面がふくらむのなら、包み隠さずにありのままデザインとして生かすべきだと思いました。そのほうが「ココに何かあるぞ」っていうのがストレートに伝わりますよね?
確かに、普通に寝かせて置いても傾いてしまうなど、理想的ではないところもあります。ふくらんだ厚みに合わせて「全部フラットにしたほうがいい」という意見が途中段階で出たのも事実です。でも、偏ってはいるけれど一点素晴らしいところがあるほうがモノも人も魅力的だなと私は思うのです。

グリップの効くラバーを背面に張った意図とは?
グリップの効くラバーを背面に張った意図とは?
背面下部のふくらみは、高音質をあきらめなかった――むしろ優先した証なのですね。

矢代 昇吾 [ デザイン ]
持ったときの重心を考慮して起伏や傾斜を微妙に調整したり、ソフトな肌触りのラバーを張ったり。ふくらんだ部分が使用時にネガティブな要素にならないよう、指掛かりとして機能するように工夫しました。金属やプラスティックそのものよりも、ズシッときたときの持ち心地がやっぱり良いので。

土屋 亮 [ メカ設計 ]
ラバーはウォークマン®ではあまりなじみのない素材ですが、ソニーは一眼とかデジタルカメラでノウハウがあるのでスムーズに実現できました。

シルバー&ブラックのモノクロな世界で、ヘッドホンジャックのゴールドがアクセントになっています。
シルバー&ブラックのモノクロな世界で、ヘッドホンジャックのゴールドがアクセントになっています。
シルバー&ブラックのモノクロな世界で、ヘッドホンジャックのゴールドがアクセントになっています。

矢代 昇吾 [ デザイン ]
このジャック部をガードしている真鍮は当初の設計要件にはなく、大型ジャックをしっかりと固定するために私の方から提案したものなのです。また、実は直径3.5mmのステレオミニプラグはソニーが初代ウォークマン®を作るときに開発した規格で、それが世界標準になったものです。そのストーリーも含めて、この部分を史上最高峰ウォークマン®アイコニックなポイントにすることは意義深いと考えました。

シルバー&ブラックのモノクロな世界で、ヘッドホンジャックのゴールドがアクセントになっています。
付属キャリングケースも、デザインコンセプトの延長線上にあるのが良くわかります。
付属キャリングケースも、デザインコンセプトの延長線上にあるのが良くわかります。

小野木 康裕 [ 商品企画 ]
キャリングケースは、ファッションアイテムのように色やスタイルで好みがわかれるので、誰でも無難に使えるようなシンプルなテイストのデザインをお願いしました。

矢代 昇吾 [ デザイン ]
単純な平面的な要素だけを使ってミニマムでボディを包んだときに自然に生まれてくる形状にしました。本体と同様に余計な色付けはしていません。

付属キャリングケースも、デザインコンセプトの延長線上にあるのが良くわかります。
付属キャリングケースも、デザインコンセプトの延長線上にあるのが良くわかります。