最近ではプログレッシブ信号をそのまま入力できるディスプレイ機器が増えてきました。せっかくプログレッシブで観賞できるなら幅広い映像をプログレッシブで楽しみたいもの。BDZ-S77は、高精細なプログレッシブ映像で楽しめるよう、IP変換(インターレース→プログレッシブ変換)回路に新開発のDMAIPC(Dual
Motion Adaptive IP Convertor)を搭載しました。このコンバーターは、映画などのフィルム素材をベースとしたソフトにはもちろん、従来は難しかったビデオ素材のソフトに対しても効果的に動作することが大きなポイントです。IP変換を簡単に説明すると、奇数番目の走査線と、偶数番目の走査線、それぞれを使って作られた、2枚のフィールド画像を重ね合わせて1枚のフレーム画像を合成し、送り出すことです。なぜビデオ素材の合成が難しいかというと、あるフィールドと次のフィールドの間には時間の経過があるからです。フィルム素材のものは、合成して再現するものが、フィルムのコマという静止画なので、同じコマから作られた奇数と偶数のフィールド同士を重ねれば、必ずきれいなフレーム画像が得られます。対して、ビデオ素材のものはフィールド間に60分の1秒という時間差があるため、単純に合成してしまうと、異なる絵柄のクシの歯を重ねて見たようにズレが生じるのです。ではこれまでビデオ素材の映像のIP変換はどのように行っていたのでしょうか。高度なものでは、映像内の動いていない部分(静止画エリア)はフィルム素材と同様、奇数フィールドと偶数フィールドを合成、動いている部分(動画エリア)は、同じフィールド内の上下の走査線から中間値を計算して間を埋める方法などが採られていました。DMAIPCでは、複数のフィールド情報を利用した時間方向と、同フレームの周辺画素を利用した空間方向の双方から動きを検出。その後、過去の動き検出をメモリーに保管しておくことで、さらに長い時間の情報を利用した動き検出処理を実行し、最も適した補間画素を選び出します。この作業を高速で行い、複数のフィールド情報を元にした1枚の奇数フィールド画像を生成し、偶数フィールドと合成。つまり、フィルム素材での、同じコマから作られた2つめのフィールド映像に相当する映像を創り出して重ね合わせているのです。こうすることで、ビデオ素材の映像でもフィルム素材に近いプログレッシブ映像を実現することができました。また、画面全体が静止画であるかの判断をすることで動き検出処理の精度を高めています。また、斜め線の部分のギザギザを目立たなくする処理も行っています。このIP変換は、DVDソフト再生時だけでなくD3/D4出力選択時は地上波放送や、BSデジタルのSD放送など480iの映像をいったん480pに変換し、最終的に1080iに変換して出力する時にも機能しています(図25、26)。