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大規模処理回路を実現するため、新規に6個のLSIを搭載しました(写真9)。主要LSIのうちM4は、MUX/DEMUX機能を持ったLSIで、BSデジタル、i.LINK、セルフエンコードストリーム、ATAバスと様ざまなストリームに対応した、CPU内蔵のマルチストリームマネージャーです。BSデジタル放送を再エンコードして記録するとき、オーディオおよび文字のストリームはそのままで再エンコードされたビデオ信号と再多重されるため、長時間記録モードでもオーディオ信号の切り換え、および文字の入/切の選択が可能です。RNは、HDデコーダーの機能を持ったLSI。高速デコードにより、HDストリームのスムーズな特殊再生を実現。マルチ放送に対応した3画面マルチ表示機能も搭載しています。RSは、グラフィックスを扱うLSIです。多彩なGUIを備えたグラフィックエンジンを搭載し、HD信号にも対応しています。電子番組表(EPG)のズーミングもこのLSIが行っています。EVEは、PCIブリッジ用のLSIです。PCIインターフェースを持つ多様なLSIを一手にコントロール。そのほかパラレルバス、シリアル、I
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C
ドライバーも搭載してい
ます。
部品をマウントする基板には、6層ブラインドスルーホールガラスエポキシ多層基板を採用。多層基板とは、基板の内部にも配線層を持った基板で、他の配線を避けるための遠回りを合理的に回避できるとともに、部品の実装密度も高めることができます。6層としたことで、4層の信号層に加え、独立した電源層とグラウンド層を設けることができました。配線パターンもインピーダンス特性などを考慮した引き回しが余裕を持って行えるので、忠実なデジタル信号伝送が可能。画質の向上に大きく貢献しています。
写真9.新規採用のデジタル処理LSI
地上波放送およびアナログ入力による録画の場合には、映像信号をデジタル化する前に3次元Y/C分離を実行しています。さらに地上波受信時にはゴーストリダクションチューナーからのビデオデータを直接入力することにより、D/A、A/Dの変換を省略でき、変換による映像の情報量の低下を抑えています。
BDZ-S77では、コンポジットビデオとS映像に対応したライン入力を2系統装備しています(写真11)。
写真11外部入力/出力端子
入力信号はデジタルTBC回路を通ります。これにより、テープに録画しておいたテレビ番組などのライブラリーを、ブルーレイディスクにMPEG-2 TSで録画し直して楽しむことができます。ディスクに移すことで、頭出しも高速化。VHSビデオ相当の画質であるLRモードで録画すれば、ディスク1枚に約12時間記録できますので、連続ドラマなどもすっきり保存しておくことができます。
また、テープメディアよりもかさばらないので、ライブラリー全体もコンパクトにまとめることができます。
D映像出力端子を装備しています(写真10)。1080i(有効走査線数1,0805本のインターレース)信号や、750p(有効走査線数720本のプログレッシブ)信号といった高品質信号を、相互干渉の少ないコンポーネント接続で楽しめます。出力する信号は、接続するディスプレイなどにに合わせてD4/D3/D1に切り換え可能です(ボタンにより切り換え)。
※DVD再生時には525p(有効走査線480本のプログレッシブ)信号で再生することができます(D4/D3出力選択時)。
写真10.出力信号切り換え可能なD端子を装備
デジタル処理回路はもちろん、最後に高画質の鍵を握るのは、アナログ出力回路です。BDZ-S77では、アナログ出力回路に高性能パーツをふんだんに投入。たとえば、ビデオ出力のバッファーアンプには要求性能を上回る高速オペアンプを使用。通常、周波数特性は30MHz、出力電流は20mA程度あれば足りるのですが、BDZ-S77で使用したものは周波数特性200MHz、最大出力電流140mA、スルーレート特性も335V/μsと、大きく余裕を持っています。また、D/Aコンバーターからバッファーアンプまで、D端子出力系のすべての電源部に機能性高分子コンデンサーを使用し、広帯域にわたって低ノイズかつ低インピーダンスな電源を実現しています。さらに、D/Aコンバーターの基準電圧には、低ノイズかつ低インピーダンスの大容量タンタル電解コンデンサーを使用。回路の安定動作とビデオSN比の改善を行っています。さらに、クロック発生には低ジッターのPLL回路を使用。ハイビジョン画像のエッジノイズ発生を抑えています。
SR/LRモードで記録するときにはVBR(Variable Bit Rate)エンコードを行っています。この方式は、シーンに合わせてデータ量(ビットレート)を自動的に調整し、効率よく記録する方法。映像の動きが激しい場面ではデータ量を高く設定し、動きが少ない場面ではセーブします(図28)。つねに一定量を使用するCBR(Constant Bit Rate)方式に比べ、ムダが少なく、全般にわたる高画質が得られます。
図28.VBRエンコードによりデータ容量を有効に活用
ビルなどの建物や、山などの障害物があると、直接アンテナに届く電波と、障害物に反射して遅れて届いた電波が重なって届くことにより発生するゴースト現象。映像が二重三重にずれて映ります。BDZ-S77の地上波チューナーには、定在的に発生するゴーストを軽減するGRチューナーを搭載しました。これによりクリアな映像を受信できます。なお、視聴チャンネルに関係なく電子番組表(EPG)機能を利用できるようにするためBDZ-S77にはEPG専用チューナーも搭載しています。
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