― 驚きの画質を実現するのが、イメージセンサーとレンズだと思いますが、
今回1.0型CMOSセンサーを採用したのはどういう理由からですか?
上田(画質設計)
今回は新しく開発した1.0型のCMOSセンサーを使っています。これを選択したのは、まずF1.8という明るいレンズを生かしたぼけを表現するためです。多くのコンパクトカメラに使われる1/2.3型や一般のプレミアムコンパクトカメラで採用されている1/1.7型でも不十分だと判断しました。ですが、大きくしすぎると今度はレンズが巨大化するので、ポケットサイズにするのは難しくなる。レンズのぼけを表現できて、かつ小型化が望める最大限のサイズということで1.0型に落ち着きました。
加藤(レンズ設計)
イメージセンサーがこれだけ大きければ、レンズも大きくなりますし、レンズが明るければなおさらです。最終的にこのサイズに収まったのは、自分で言うのもなんですが驚異的です(笑)。また、高性能とコンパクトさの両立には、今回新開発した大口径の薄型非球面レンズ「AAレンズ」が大きく貢献しています。
また、このレンズは手ブレ補正機構を内蔵した6群7枚の構造ですが、通常のレンズ構成でしたら、今よりも何割か大きくなっていたはずです。今回は手ブレ補正を駆動する群のみ別に分けて、駆動させています。小さくできますが、レンズが分かれてしまうことで偏心(光軸のズレ)が発生しやすくなります。この問題を解決するために、極限まで精度を追い込むことで、偏心の少ない高性能なレンズを作ることが出来ました。
― 有効画素数が2020万画素になった理由は?高画素化すると高感度でのノイズなど、
画質にマイナスの面も出ると聞きますが…。
上田(画質設計)
たしかに高画素化によるノイズと解像感はトレードオフの関係にあります。ただし、ソニーはイメージセンサーを自社開発できる強みがありますので、センサーの特性を見極めつつ、それこそ職人的に詳細まで徐々に詰めて、低ノイズでかつ解像感もしっかりある仕上がりになっています。高感度については"サイバーショット"と"α"の技術を結集して、今までの"サイバーショット"に比べてノイズを低減できています。結果的に通常撮影でISO6400、「マルチショットNR」を利用した撮影ではISO25600を実現しています。
それと画像処理エンジンの"BIONZ"も大幅にチューニングした結果、今までの"サイバーショット"より処理速度がアップしています。たとえば、有効約2020万画素で10fpsの連写が可能となり、AFも最速約0.13秒とより速く、より正確になっています。
皆見(商品設計)
画素数を抑えて低ノイズ化を実現しているカメラもありますが、高画素による解像感を求めるユーザーもいらっしゃいます。高画素化でノイズが目立ったり、NR(ノイズリダクション)を強くし過ぎて逆に解像感がなくなってしまったら意味がありません。今回の新開発センサーは高解像度・低ノイズを両立しているので、遠景の風景を撮っていただいても、細部まできれいに再現、描写できています。旅行先でも頼りになる1台です。
― このイメージセンサーだからそこ撮れるシーンというのは?
上田(画質設計)
ワイド側で5cmまで寄れますから、至近にあるものを絞り開放で撮影したときのぼけ味の美しさ、あとは遠景を撮ったときの描写力も違いますね。これはレンズの性能が飛び抜けていいということとも関係してきますけれども。