SONY

BE MOVED RX cyber-shot

Engineer's Voice 開発者の想い

ソニーのイノベーションで生まれた光学式可変ローパスフィルターを搭載。

― ローパスフィルターを電気的にオン/オフにできるという、
全く新しい機構も備わっていますね。

竹尾 明
(光学式可変ローパスフィルター担当)

竹尾(光学式可変ローパスフィルター)
もともとRX1はレンズの解像性能が非常に高いため、場面によっては偽色やモアレと呼ばれる現象が出てしまうというところがありました。RX1R IIは、24メガセンサーから42メガセンサーになって画素数が増えたということもあり、モアレや偽色の発生頻度はかなり下がってはいます。しかし、原理的にモアレや偽色は出てしまいます。そのため、お客様のニーズに合わせて解像感とモアレや偽色の低減効果を選択できるように、光学式可変ローパスフィルターを搭載しました。
このクラスの機種をお求めになるお客様は、プロフェッショナルな方も多く、非常にシビアに偽色やモアレを気にされることがあります。従来こういったお客様は、ある場面でカメラを固定して撮影し、偽色やモアレが出てしまった場面では、その場でフォーカス位置を変えるか、画角を変えるといった方法でしか解決することが出来ませんでした。しかし今回、光学式可変ローパスフィルターを用いることによって、決められたフォーカス位置、画角の中で偽色やモアレを任意に減らすという新しい機能を提供することができるようになりました。
搭載への経緯としましては、この光学式可変ローパスフィルターは、もともと社内で研究開発を進めてきたものでして、原理検討が完成したというところに、これを載せられるセットとして最もマッチしたのが、RX1R IIだったのです。RX1R IIでは「究極の画質を目指す」という目標があったので、究極の解像感、究極のモアレ・偽色の低減を選択できるようにしたい、ということで搭載が決まりました。

若月(プロジェクトリーダー)
当初RX1R IIにこのデバイスを搭載するという話はなかったのですが、設計が進む段階で技術の目処が立ちました。RX1とRX1Rがローパスフィルターのあり・なしの兄弟機種ですから、このデバイスを使うことによって、その2つのカメラを1台のセットで表現できることになります。これを搭載する事により各技術要素での設計の見直しが必要となりますが、その価値があると判断し搭載に至っています。

竹尾(光学式可変ローパスフィルター)
設計面では、一般的な光学ローパスフィルターは普通の水晶の板なのですが、今回は電気的に駆動させますので、ソフトウェアや電子回路も新規に開発しています。またこのデバイスはカメラの中心に位置し、つまりレンズ鏡筒が前、イメージセンサーが後、EVFが横、といった具合に、周囲に大きな影響を与えるため、RX1のサイズ感を損なわぬよう、各関係者と設計的に調整するとことに非常に苦労しました。
製造面では、可変ローパスフィルターは、2枚のローパスフィルターの間に、液晶が封入されているという基本構成を取っています。ローパスフィルター自体は一般的なカメラでも使われている水晶ですが、その間に液晶を封入したのがソニー独自、世界初の技術です。ローパスフィルターは光線の偏光状態に応じて、直進、または屈折させるという特性があるのですが、その偏光状態を液晶が調整しています。ソニーには、これまでに可変NDフィルターを開発して量産導入してきた経緯があり、液晶を使ったカメラ向け光学デバイスという点ではその技術も引き継いでいます。
機能面では、ローパスフィルターのオン、オフ以外に、「標準」があるのですが、実は、開発に一番時間をかけたのがこの標準モードです。オンとオフはある程度、物理的に最大値と最小値が決まるのですが、標準は解像感と偽色やモアレのベストバランスを目指しています。そのバランスを取るためには液晶の駆動を精密に行う必要があるので、

その部分の特性の追い込みに、画質グループと求める動作状態を協議し、制御方法や製造方法を追い込んでいったという経緯があります。自然の風景は「オフ」で、建物や人物の衣装などは「オン」がいいかもしれません。ただし撮影時には偽色やモアレはなかなか確認できません。そんな時は「オン」「オフ」「標準」のブラケット撮影もできるので、より安心して撮影していただくことができます。