プロフェッショナルが納得する、
アマチュアが期待する、
本格的な動画撮影を実現する機能と設計
──最初にFDR-AX700は、
どのような背景で開発されたモデルなのでしょうか。
玉川準一朗 [商品企画]
近年、4Kテレビの普及や編集ソフトの利用が一般的になるなど、動画撮影を取り巻く環境が大きく変化しています。そのため動画撮影を趣味として楽しまれているアマチュアの方から、プロフェッショナルと遜色ないレベルの性能や使いやすさを求められるようになってきました。プロフェッショナルとアマチュアの境界線があいまいになってきていると言えるかもしれません。
ソニーでは、今まで一般のお客様が使う民生用カメラと、テレビの放送局や映画関係者が使う業務用カメラを明確に分けて商品ラインアップしてきましたが、商品もまたボーダレスに選ばれるようになってきました。
例えば、一般のお客様向けに開発された高性能デジタル一眼カメラ 「α(アルファ)」などが、プロフェッショナルの動画クリエーターからもご支持をいただいています。そこで今回、ビデオカメラでもプロフェッショナルとアマチュア双方のニーズにお応えしたいと考え、「XDCAM PXW-Z90(以下、Z90)」「NXCAM HXR-NX80(以下、NX80)」そして「ハンディカムFDR-AX700(以下、AX700)」の3モデルを発表しました。
この3モデルはZ90とNX80を業務用ビデオカメラとし、AX700を「ハンディカム」という民生用ビデオカメラのラインアップに位置付けています。これら3モデルはいわば“3兄弟”のような関係でして、画質は3モデルが同等の性能を持っています。違いはZ90とNX80にはローアングルの撮影や持ち運びに便利なハンドルや業務用途で求められるXLR端子が付いていて、さらにZ90には業務用の「XAVC」というフォーマットや放送業界で普及する端子を搭載していることです。
──AX700はハンディカムのラインアップにおいては、どのような狙いで開発されたのでしょう。
玉川準一朗 [商品企画]
これまで2014年発売のFDR-AX100(以下、AX100)が、ハンディカムシリーズの最上位を担うフラッグシップモデルでした。AX100は「4K動画記録」に対応し、写真を切り取ったような非常に高画質な映像を支持いただいてきたモデルです。
今回AX700は、その高画質を引き継ぎながら、さらに業務用で利用価値の高い機能を搭載して、AX100の上位モデルに位置づけました。アマチュアでも本格的な趣味として動画を撮影されている方たちの「もっと動画を楽しみたい、細かな設定をしたい」という声や、プロフェッショナルが仕事で使う一台として「プロフェッショナル向けの機能を使いたい」という声を商品開発に反映させています。
尾内伸啓 [商品設計]
開発は、これまで民生用ビデオカメラの開発を行ってきたチームと、業務用ビデオカメラの開発を行ってきたチームからメンバーを集めて混合チームをつくり、一つになって進めてきました。これは今までにも例がなく、それも単に集めたというだけではありません。業務用のクオリティーが必要なビデオカメラとは、どのようなメンバーで開発すべきか。そんな議論を重ね、業務用の設計担当者を主導に、民生用のノウハウを採り入れながら開発していく、という体制で取り組みました。
──具体的には、ユーザーのどのような声に応えていますか。
玉川準一朗 [商品企画]
AX100でいただいたお客様からのご要望が「オートフォーカス」です。AX700の開発で最も注力したポイントです。1型の大判イメージセンサーと4K記録の組み合わせでは、圧倒的に高精細な映像と、被写界深度の浅い表現が可能ですが、ピント合わせに関してはシビアになります。撮影中はピントが合っているように見えても、帰宅して大画面の4Kテレビで見るとピントが合っていなかった、ということがあるようです。一瞬の、撮り直しができないようなシーンできっちりピントを合わせる、当たり前のことですがお客様の一度しかない大切な撮影チャンスを失敗なく記録する。そういった思いで今回フォーカスに注力しました。
──その他に業務用ビデオカメラの、
どのようなところを受け継いでいますか。
尾内伸啓 [商品設計]
プロフェッショナルが求める“使い勝手のよさ”ですね。大きなところでは、メニューの構成や操作がハンディカムとは異なります。より細かな設定が可能になり、設定操作のしやすさにも配慮しました。
また、映像確認がよりストレスなくできるように「有機EL搭載の電子ビューファインダー(以下、EVF)」や「液晶パネル」をより高解像度にしています。かなり高価な業務用ビデオカメラ用のデバイスを積極的に採用しています。そして、安定して撮影できるようなグリップ形状を検討し、厳しい環境で酷使されることも考え、業務用の耐久性を基準に開発を進めました。