鳥居「HT-ST7」の音質については、僕も自宅で使わせていただいていてよくわかっているのですが、お世辞ではなく、映画を見るときだけ使うというのはもったいないですね。普通のテレビ番組の音も明瞭でくっきりとした音で楽しめる「TV VOICE」モードも使いやすいですし、音楽再生もかなり満足できる音で楽しめます。
三浦「HT-ST7」の開発は、何をおいてもまずは音質ですから、映画だけでなく音楽もきちんと楽しめるように仕上げました。
鳥居なかなか言いづらい面もあるとは思いますが、特定のライバルを想定したりはしたのですか? 他社の同種の製品と比べて負けない音にするとか。
三浦音質的な意味でライバルというか目標としたものはいくつかありますが、それはいわゆるサウンドバータイプではありません。価格的には同等となる海外のスピーカーメーカーの単品システムと比較し、それには負けないものを目指しました。
鳥居なるほど。単品コンポでステレオ再生をしている人でも納得できる音を目指したということですね。志が高いというか、大変な挑戦ですね。
三浦たしかに高い目標ですが、やりがいのある目標でもあります。機構や信号処理、すべての開発メンバーの努力がこの音に表れています。
得永そして、高音質はもちろんのこと、操作性や使い勝手の良さも徹底的に追求しました。「HT-ST7」は高価格な商品ですし、購入されるユーザーもオーディオ機器に詳しい方が多いのではないかと思います。しかし、それで操作性が犠牲になってはサウンドバータイプの特徴である、ご家族の皆様が簡単に使えるという利点が失われます。そこで、Bluetooth搭載によるワイヤレス再生やNFC対応によるワンタッチリスニングの機能も継承し、リモコンなどの使い勝手の良さにもこだわりました。
鳥居音楽再生はBluetoothでワイヤレスで楽しめるし、サブウーファーもワイヤレス接続なので配線の引き回しは不要と、使い勝手の良さはそのままですね。ただ、ちょっと意地悪な言い方をすると、音質のためには機能をそぎ落とす、という選択肢もあったのでしょうか。特にワイヤレス接続は便利なのですが、電波を受信するアンテナを持つということはノイズも拾いやすいわけですから。
大嶋ノイズの問題についてはおっしゃる通りです。僕が担当するのはデジタルアンプの駆動などのオーディオ回路の制御をふくめ、すべての機能を統合的にコントロールする部分ですが、機能が多くなるとノイズ対策は大変です。例えば、入力切り替え時にノイズが出てしまう問題などについては、ソフトウェアの制御で解決しています。Bluetoothなどワイヤレス接続の問題も電波を通しにくいアルミボディ採用のため苦労しました。アンテナ感度を上げると音質に影響が出ますので、機構設計などとも協力して十分な感度を持ちながら音質に影響が出ないようにきちんと対策しています。
鳥居高額な製品なのだから、高音質だけでなく多機能も当然とユーザーは思いますが、やはり高音質と多機能を両立するのは大変なのですね。
得永従来のホームシアターやサウンドバーのユーザー訪問の調査も数多く行いました。その調査結果から、多機能でも簡単に使いたいというニーズがあることを見つけました。
鳥居機能が多すぎて、あるいは操作が複雑で使いこなせないという人は少なくないでしょうね。操作が難しいとせっかくの機能も使わないままになりがちですからね。
得永そこで、大嶋やデザイナーとも相談し、リモコンによる操作や設定メニューの構成を一から見直し、誰でも簡単に使えるようにソフトを再構築し直しました。
大嶋人の声を聞きやすくする3段階の「VOICE切り替え」機能、サブウーファーの音質を調整できる「サブウーファー トーン」など、細かな調整機能は数多く搭載していますが、操作メニューをわかりやすくすることで、選択しやすくしました。
得永リモコンも、機能を落とさずにボタン数を極力減らして分かりやすくし、音質調整はカバー内に収納することで、すっきりとしたデザインを実現しました。これにより、お父さんだけではく、家族のどなたでもお使いいただける商品になったと思っております。
鳥居サウンドバーは、映画のためのシステムというわけではなく、音楽など家庭内のエンターテイメントに幅広く使えるものだと思います。僕個人としては、PCやゲーム機と接続するのもアリだと思いますし、テレビと組み合わせたスタイルもリビングでさまざまなAVの楽しみを満喫できるよい形だと思いますね。しかも、これだけの音質のものが作れるとわかったのですから、次はPCオーディオやネットワークオーディオのハイレゾ再生にも挑戦してほしいです。
得永今後もお客様に感動をもたらし、好奇心を刺激し続ける商品を企画していきますので、ぜひともご期待ください。
鳥居今までの取材では聞けなかった細かな部分をたくさん知ることができ、改めて「HT-ST7」の凄さがよくわかりました。今年のソニーはハイレゾ製品を中心に話題作がたくさんありますが、「HT-ST7」も音の実力やこだわった作りは同等かそれ以上だと思います。今回はありがとうございました。
(Text by 鳥居一豊)
■鳥居一豊の「良作×良品」
ひたすら音に拘(こだわ)る最上級サウンドバー ソニー「HT-ST7」
「レ・ミゼラブル」が歌い上げる人々の迸(ほとばし)る感情を体感
http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/torii/20130924_616235.html
■ ソニー、波面制御サラウンドの最高峰7.1chサウンドバー
4K時代のプレミアム機「HT-ST7」。磁性流体+S-Master
http://av.watch.impress.co.jp/docs/news/20130808_610237.html