WM1Z/WM1A Project Member’s Voice 目指したのは、アーティストの想いまで伝わってくる高音質
ZXシリーズを超える、ウォークマンの新たなフラッグシップとして誕生した「WM1シリーズ」。理想のポータブルオーディオを追求し、制約のない環境で一から作り上げた開発メンバーに、フルデジタルアンプへの強い想いやチャレンジングな筐体設計の内幕、そしてエンジニアとしての細部にわたるこだわりを聞いた。
部屋でのリスニングをイメージしたUI。「音の見える化」や「アナログ感」も大事なテーマに
原田 紀[ソフト設計]
これまでのウォークマンには「Aシリーズ系」と「Android系」の2つのソフトウェアプラットホームがあったのですが、冒頭のコンセプトで商品企画から話があったように、今回はソフトウェアも制約をなくして自由な発想で制作しました。
まず最初に決めたことは、UIの骨格です。ご存知のようにウォークマンにはさまざまな機能があるのですが、それらの機能をどういった体験でお客さまに提供すべきか皆で議論を重ねた末に、「再生画面をメインにする」というコンセプトが生まれました。
原田 紀[ソフト設計]
繰り返しますが、これまでのウォークマンのようにホーム画面を経由する必要がなく、再生画面がメイン画面として真ん中に置かれます。これが大前提です。
それで、【再生画面】って疑似体験でいうとどんなシチュエーションかな……と考えていったときに、「部屋でソファに座りながら音楽を聴く」というイメージが浮かんできました。
次は、聴くコンテンツを選ぶシチュエーションです。今はあまりないのかもしれませんが……「CDラックから選ぶ」という、ちょっとソファから立ち上がって取りに行くイメージで【ライブラリートップ】を上に置きました。
そして、自分好みの音質に設定するというシチュエーションです。これはそんなに移動することもなく「手元で操作する」イメージで【各種音質設定】を下側にレイアウトしました。
原田 紀[ソフト設計]
今度は、いま再生しているアルバムの曲目をチェックするシチュエーションです。ここは「CDケースにチラッと顔を向ける」というイメージで、左側に【再生リスト】を入れました。
では、右側に置く画面は何だろう……と考えていったときに、昔のミニコンポだと自分でプログラムしてオリジナルのプレイリストが作れたと思うのですが、そういったシチュエーションから「お気に入りのものを置くサイドテーブル」というイメージにつながって、【ブックマークリスト】を右画面に割り当てました。
まとめますと、部屋の真ん中にソファ【再生画面】があって、その上にCDラック【ライブラリートップ】があって、下側に機器の操作パネル【各種音質設定】があって、CDケース【再生リスト】やサイドテーブル【ブックマークリスト】が左右両側の手が届く範囲に置いてあるというように、疑似的なイメージをUIに落とし込んでいます。
佐藤 浩朗[音質設計]
これは私たちからソフト設計にリクエストした機能です。スタンダード/女性ボーカル/男性ボーカル/パーカッション/ストリングスの5つのモードから選べるのですが、例えば「女性ボーカル」なら高音の伸びや艶っぽさを押し上げる効果が得られます。
これまで「DSEE HX」は基本的に圧縮音源用という位置づけでしたが、CD音源にかけても本当にハイレゾのような音になるので、今回のモード追加を機に積極的に使っていただければ嬉しいです。
原田 紀[ソフト設計]
かつてのコンポのグラフィックイコライザーのような、スペクトラムアナライザーの画面を追加しました。「DSEE HX」をオンにして再生画面の表示切り替えを行うと、スペクトラムアナライザー画面右端の「HIGH」というパートでその効果を視認できるようになっています。この他にもアンプのVUメーターのようなアナログレベルメーター画面を入れるなど、今回は「音の見える化」というテーマで、音楽を目で体感できるようにしたところもUI刷新のこだわりのひとつです。
原田 紀[ソフト設計]
従来の5バンドから10バンド(31Hz〜16000 Hz)に増やしました。今回はきっちり1オクターブ毎の帯域で、0.5dBずつ±20段階(−10.0〜+10.0)の調整ができるので、より自分好みの設定を追求していただければと思います。
佐藤 浩朗[音質設計]
スライダーを上下させて調整した設定を、曲線のグラフで表示できるようにしたところもポイントですね。
佐藤 浩朗[音質設計]
これは3年ぐらい前からずっと検討し続けてきた機能で、今回ようやく搭載することができました。端的に言うと、低域の位相特性を伝統的なアナログアンプの特性に近づける機能です。
なぜこの機能が必要かと言うと、ウォークマンのフルデジタルアンプ「S-Master HX」(CXD3778GF)には、伝統的なアナログアンプとは違いカップリングコンデンサーが入っていないからです。
カップリングコンデンサーというのは直流成分と非常に低い周波数の信号をカットする部品ですが、低域の位相も進ませます。コンテンツによってはカップリングコンデンサーの有無の差……つまり低域の位相差が大きく感じられる場合がありますので、その際は「DCフェーズリニアライザー」をご使用いただくと効果が得られると思います。
佐藤 浩朗[音質設計]
びっくりするほどの違いはないのですが、「DCフェーズリニアライザー」と相性の良い、この機能を必要としているコンテンツの場合は「ああ、これこれ。この低域のパンチが欲しかったんだよね」という感じで、はまるとしっくりきますね。ちなみに、位相特性の異なる6つのモード(A/Bパターン×High/Standard/Low)から選べるので、ぜひいろいろと試してみてください。
原田 紀[ソフト設計]
ZX2の2倍の120ステップに増やしました。しかもゲイン切り替え(Normal/High)の設定もできるので、お使いのヘッドホンやイヤホンに合わせてゲインを切り替えていただくと、細かいステップを使いこなせて便利だと思いますね。
原田 紀[ソフト設計]
そうですね。昔のオーディオ機器の世界観をなんとかUIで表現したいという思いは強くありました。例えば、いま話に出たボリューム調節のツマミ操作感もそのひとつ。再生画面の一番上にあるボリュームバー表示をタップするとボリューム調節ツマミのUIが出てくるので、それを指でタッチ操作して音量を変えられます。あとはトーンコントロールのツマミ画面も同様に用意しました。
ウォークマンWM1シリーズ
NW-WM1Z / WM1A
「音」に込められた想いまで、耳元へ