バンド部分にスマートウォッチ“本体”を組み込み、ヘッド部分を自在に交換できるというユニークなアイデアで注目を集めた「wena(ウェナ)」シリーズ。初代モデルから約5年を経て登場した第3世代モデル『wena 3』は、妥協なき理想追求の果てに誕生した、まさに“完成型”と言える仕上がりが早くも話題です。ここでは、待望のSuica対応など、多くの課題を乗り越え実現した新モデルに込めた情熱を、プロジェクトの発起人であるwena事業責任者 對馬(つしま)ら、開発を牽引してきた中心メンバーたちが語ります。
MEMBER
『wena 3』は、より多くの人に使ってほしい!
まずはスマートウォッチ市場の現状について教えてください。
wena事業責任者 對馬:スマートウォッチ市場は現在、全世界でおよそ1兆円規模。ここのところは毎年10〜20%くらいの速度で順調に拡大しています。約7兆円とも言われる既存の腕時計市場との差はまだ大きいのですが、こちらはもう長らく成長していません。そして近年はアナログ腕時計にスマートウォッチとしての機能を持たせたハイブリッドスマートウォッチも注目を集めつつあり、まだまだ小さな存在ではあるものの、こちらも順調に市場規模を拡大しています。
好調にファンを増やしているスマートウォッチが、今後、さらに市場を拡大していくために解決しなければならない課題はどこにあるとお考えですか?
對馬:近年、スマートウォッチの便利さが徐々に世の中に広まりつつある一方で、スマートウォッチ特有の不自由さも目に付くようになってきました。たとえば、毎日充電しなければならないとか、その日の気分や服装に合わせたデザインを選べないとか……。wenaはこれまでもそうした不自由さからユーザーを解放したいという想いを込めて開発し続けてきたのですが、特に今回の『wena 3』では「便利を、自由に。」をコンセプトに、多くの点を改善・改良を施しています。
その改善・改良についてもう少し具体的に教えてください。
對馬:『wena 3』の進化点は大きく5つあります。1つ目が交通系IC/電子マネー「Suica(スイカ)」に対応したこと、2つ目が大画面タッチディスプレイを搭載したこと、3つ目が活動ログ機能をさらに強化したこと、4つ目がAmazonの提供する音声サービス「Alexa(アレクサ)」に対応したこと、そして5つ目が、メタル、レザー、ラバー、3種類のバンドに対応し、18mm~24mmまでのラグ幅に対応し、より多くのヘッド(時計部分)を取りつけられるようになったことです。
これらの進化によって、美しいアナログ時計を身につける喜びと、スマートウォッチの利便性を両立させるというwenaならではの魅力を、より多くのお客さまに試していただけるようになったのではないかと考えています。
初代モデル、第2世代モデルが切りひらいた市場を、完成度を高めた第3世代モデルでより大きく拡大していこうということですね。
對馬:はい。今回、製品名称をシンプルに『wena 3』としたのもそのためです。第3世代であること、3種類のバンドが選べることが由来ですが、何よりより短く、記憶に残りやすい名称とすることで、これまで以上に多くの方々にwenaの存在を知ってもらいたいと考えました。
ちなみに、商品ロゴのレインボーカラーの円にはwenaが抑圧からの解放、自由や個性を象徴する存在になってほしいという想いが込められています。また、裏テーマとして朝〜夜までの24時間の時間の移り変わりを表現し、腕時計と同じく時間を刻んでいってほしいという意味も込められています。
待望のSuica対応を実現
使い勝手も切り換え不要で快適
では、それら5つの進化点について1つずつ深掘りさせてください。まずはSuica対応について。これは使える電子マネーにSuicaが追加されたという理解で合っていますか?
對馬:そうですね。wenaはかねてより、楽天EdyやiD、QUIC Payといったさまざまな電子マネーに対応していたのですが、ここに新たにSuicaが加わりました*。Suicaに対応したスマートウォッチは他にも存在しますが、ここまで多様な電子マネーに対応したものは存在しません。また、それぞれの電子マネーを切り換え操作不要で使えるのもポイントです。他社製スマートウォッチでは初期設定以外の電子マネーを利用する際に切り換え操作が必要になるのですが、『wena 3』ではその必要がありません。レジで店員さんに使いたい電子マネーを伝えた後、リーダーにかざすだけで会計が終了します。
* Suica以外の電子マネー機能はおサイフリンクアプリを利用します。初期設定時のみiOS端末が必要です。Android端末をお使いの方でも、お手持ちのiOS端末で初期設定をすると電子マネー機能を使うことができます。
それはスマートフォンでの電子マネー決済などと比べても便利ですね!
對馬:そうなんですよ。さらに『wena 3』は内蔵バッテリーとは別に約24時間分の予備電力を内蔵しており、移動中にバッテリーが切れてしまっても、予備電力で電子マネー機能を動かし、改札を通過したり、買い物したりできます。
そのほか、電子マネー回りで『wena 3』が進化している点がありましたら教えてください。
對馬:より幅広い電子マネーに対応したことと、あとで詳しくお話しするスマートロックに対応したことを踏まえ、紛失防止タグ「MAMORIO(マモリオ)」にも対応しました*。これによって、どこかに『wena 3』を忘れてきてしまった場合でも、クラウドトラッキングの仕組みを利用して、スマートフォンのアプリ画面上に『wena 3』の現在位置を表示することができます。お金と鍵、とても大事なものをお預かりするので、セキュリティには最大限配慮しています。
* 「MAMORIO Inside(マモリオインサイド)」機能。発売日以降、ユーザーアップデートにて対応予定です。
見やすく操作しやすい、そして美しいタッチ対応大画面ディスプレイ搭載
続いて2つ目の進化点であるディスプレイについても聞かせてください。目に見える進化ではこれが一番目立つポイントですよね。
設計プロジェクトリーダー/ 無線回路・アンテナ設計担当 友藤:wenaは、2017年末に発売した第2世代モデルで初めてディスプレイを搭載したのですが、消費電力などの兼ね合いから画面サイズがとても小さく、お客さまからはもう少し大きく、見やすくしてほしいというご要望をいただいていました。そこで『wena 3』には従来モデルと比べて約5倍(面積比)という大きな有機ELパネル(モノクロ16階調)を搭載しています。また、タッチパネル化することで操作性も大きく改善しました。
對馬:今回やりたかったことの1つが、wenaに一般的なスマートウォッチと同じ水準の機能を妥協なく入れ込むということ。ですので、大画面化とタッチ操作対応は譲れないポイントでした。
大画面化とタッチ操作対応で具体的にどんなことができるようになったんでしょうか?
友藤:手首を持ち上げると内蔵センサーが動きを検知してディスプレイがオンになり、ホーム画面が表示されます。あとはスマートフォンなどと同じく、アイコンをタッチすることで、任意の機能を呼び出せます。もちろん、アイコンの配置は自由にカスタマイズ可能です。また、上スワイプで活動ログを、右スワイプでスケジュールをといった形でワンアクションでさまざまな情報を確認できます。
對馬:これによって、これまでのようにいちいちスマートフォンのアプリを起動する必要がなくなり、全ての機能や情報に手首の『wena 3』からすぐにアクセスできるようになりました。
実用性がさらに大きく高まりましたね。
對馬:なお、これは本当に細かいことなのですが、今回、英語と数字のフォントはwenaの世界観に合わせたものを新たに作成しました。日本語表示についても「通知はありません」といった定型の表示は見やすいものを作って画像として格納しています。ここはかなりこだわったところです。
そんなところまで作り込んでいるんですね。でも、フォントは腕時計で言うところの文字盤のようなものですから、そこにこだわるのはとても大事なことだと思います。
對馬:かっこいいだけでなく、『wena 3』のディスプレイの解像度に最適化することで可読性も高めているんですよ。
なるほど。ところで可読性と言えば、『wena 3』のディスプレイは従来モデルと比べて、かなり明るく、見やすくなったように感じます。やはりこの辺りもスペックアップしているのでしょうか?
デザイン/メカ設計担当 青野:そうですね。先代モデルではケースとディスプレイの境界を消し込んで、点灯しているときだけ文字が見えるようにしたかったので、ケース表面に強めのスモークをかけていました。結果として視認性が若干損なわれていたことは否めません。対して、今回の『wena 3』では透過率の高い保護ガラスの直下に有機ELパネルを配置しているので格段に明るく、見やすくなっています。
對馬:屋外でも表示を確認できるくらい見やすくなっています。
今回は視認性を優先したということですね。
青野:はい。でも、だからといってデザイン面で妥協したということではありません。金属蒸着でパターンを成膜した有機ELデバイス特有の質感を活かす形で、メタルケースとのマッチングを図っています。ディスプレイ自体が金属のように光を反射するので、表示がオフになっている時でも自然にケースになじむんですよ。
友藤:その効果は試作機と比べていただければ一目で分かります。試作機では表示をオフにするとパネル部分がグレーに抜けてしまうのですが、製品版では表示オフの状態でもディスプレイ部分が周りの光を美しく反射する一体感のあるデザインになっています。
左:試作機 右:製品版
たしかに! 視認性を大きく高めつつ、デザイン面でも一切の妥協がないことが分かりました。
青野:ちなみに、手首のカーブに合わせて表面のガラスも湾曲させているのですが、ここにもかなりの手間がかかっています。よく見ないと分からないと思うのですが、全体の強度を高め、メタル製のベゼルとの一体感を高めるためにガラスを段のついた複雑な形状に加工しているんです。
對馬:簡単に見えるかも知れませんが、ガラスを高温にしながら20工程くらいかけてこの形に曲げているんですよね。当然、コストもかかっているのですが、『wena 3』を最も小さく、高密度に作ろうとするとこの形状が最適なので、ここは譲りませんでした。結果として、第2世代モデル『wena wrist active』と比べ、体積で約30%、厚さ約2.5mmの小型化・薄型化に成功しています。
しかし、そうなると心配なのがバッテリーの持ちです。wenaは一度の充電で1週間使えることが売りでしたが、その美点は継承されているのでしょうか?
友藤:もちろん、そこにも妥協はありません。企画段階からあれもやりたい、これもやりたいという話が出ていましたが、その上で、1週間充電せずに使えることは絶対に譲れないところでした。ただ、だからといってバッテリーサイズをむやみに大きくしてしまうと本体サイズが大きくなり、デザインが損なわれてしまいます。そこで基板サイズを従来モデルの半分以下にしたり、配置を工夫したりすることで、本体サイズをそのままに大容量バッテリーの搭載を実現しています。
青野:先代の『wena wrist active』では、基板を左右に分割し、ケースの真ん中の湾曲の少ない部分にバッテリーを入れるということをやっていましたが、今回は基板やモーターなどを小型化した上で片側に寄せ、残りの空間をフルに使って大きなバッテリーを入れ込んでいます。当然、カーブしている場所には四角いバッテリーは入らないので、空きスペースにフィットするような曲がった電池を特注で作成、これによって、『wena wrist active』の約2倍のバッテリー容量を確保することができました。
對馬:さらにアルゴリズムの見直しなどでCPUの消費電力量をおよそ半分にしたり、照度センサーを搭載してディスプレイの明るさを細かく調整するなどといった工夫で、目標だった1週間のバッテリー駆動を達成しています。
友藤:なお、『wena wrist active』では、光学式心拍センサーをオンにするとバッテリーが1週間持たなくなってしまっていたのですが、『wena 3』ではその辺りも改善し、心拍センサーをオンにした状態でも1週間、連続して使えるようにしています。
持久力からストレスレベルまでより多彩な活動ログを取得可能に
光学式心拍センサーのお話が出てきたところで、3つ目の進化点である活動ログ機能の強化についても聞かせてください。
對馬:歩数、心拍数、睡眠の深さについては従来モデルでも計測できたのですが、『wena 3』ではそれらに加えて、最大酸素摂取量(VO2 Max)と、ストレスレベルを測定できるようになりました。
それは内蔵センサーがより高性能になったということですか?
對馬:はい。まず、先代モデルにも搭載されていた光学式心拍センサーの精度が高まっています。従来の光学式心拍センサーは緑色LEDの光を手首に照射することで心拍数を測定していたのですが、緑色LEDは血流だけでなく筋肉の動きも捉えてしまうので、例えば測定中に手を閉じたり開いたりすると精度がガクっと落ちてしまう問題がありました。そこで『wena 3』では新たに筋肉の動きだけを捉える赤色LEDを追加し、緑色LEDで取得した情報から引き算することでより精度の高い心拍数データを取れるようにしています。そうして得られた精度の高い心拍数データから最大酸素摂取量(VO2 Max)とストレスレベルを算出します。
最大酸素摂取量(VO2 Max)とストレスレベルがどういった情報なのかをもう少し分かりやすく教えていただけますか?
對馬:最大酸素摂取量(VO2 Max)は、簡単に言うと体力スコア、持久力の指標のようなものです。性別、年齢別にまとめたベンチマークデータがあるので、それを元に自分の体力が同世代と比べてどうかを確認できます。通常、最大酸素摂取量(VO2 Max)を計測するにはかなり大がかりな装置を身につけて激しい運動をする必要があったのですが、『wena 3』では、日常生活の中で記録される心拍数データにソニー独自のアルゴリズムを掛け合わせることで、簡単にこの数値を導き出せるようにしています。
ストレスレベルは心拍のゆらぎをキャッチし、その日のストレスレベルを推定するというもの。日々の生活の中で、どういった時にリラックスしているのか、ストレスを感じているのかを確認する目安として使える情報です。
どちらも心拍数を元にしているため、より精度の高い心拍数データの取得が必要だったということですね。
對馬:その通りです。なお、それによって睡眠の深さについてもより精度の高い情報が取得できるようになり、従来モデルでは2段階だった睡眠の深さを4段階まで細分化して確認できるようになりました。
ちなみに光学式心拍センサーはどこに組み込まれているのでしょうか?
對馬:先ほどもお話ししたよう、バッテリー容量を充分に確保するため、センサーやモーター、基板などは全て本体の端に寄せています。ここでポイントとなるのが、光学式心拍センサーの高さ。光学式心拍センサーは肌にしっかり密着させる必要があるため大きく突起させなければならないのですが、『wena 3』ではその突起の裏に振動モーターを組み込むことで効率的にスペースを活用しています。
薄型ボディを実現した背景にはそんな工夫もあったんですね。ところで、これまでのwenaで取得した活動ログは『wena 3』にも引き継ぐことができるのでしょうか?
對馬:残念ながらデータをそのまま引き継ぐことはできません。ですが、後日のアップデートでiOSの「ヘルスケア」アプリとAndroidの「Google Fit」アプリに対応しますので、そちらで新旧のデータを集約して確認していただけるようにする予定です。
手元からクイック操作でスマートデバイスをコントロール
4つ目の進化点であるAlexa対応についてはいかがでしょうか? スマートウォッチでAlexaが使えるようになるとどう生活が便利になるのですか?
對馬:実は私、家に3台もAlexa対応のスマートスピーカーがあって、1日100回は「Alexa、○○して」とお願いしている超ヘビーユーザーなのですが、『wena 3』があれば、「Alexa」という最初の呼びかけ(ウェイクワード)が不要になります。ホーム画面のAlexaボタンをタップして「電気をつけて」「テレビをつけて」というだけでOK。Alexaを呼び疲れている人にぜひ試していただきたいですね(笑)。
私も自宅でAlexaを使っているので、呼び疲れする感覚はよく分かります(笑)。
對馬:このAlexa連携機能は外でも使えるので(ペアリングしたスマートフォンを介してインターネットに接続)、帰宅途中に自宅のエアコンをつけたり、天気などのちょっとした調べ物にも使えます。スマートフォンで同じ事をやろうとすると何ステップもかかってしまうのですが、『wena 3』なら1ステップで済むんです。これはすごく便利ですよ。
たしかに手元から呼びかけられるのは便利そうですね。
對馬:そうそう、Alexaとは関係ないのですが、スマートデバイス連携ということで、『Qrio Lock』対応についても紹介させてください。『Qrio Lock』は自宅やオフィスの玄関ドアの鍵穴に被せるようにして使うスマートロックデバイスで、スマートフォンのアプリから鍵を開け閉めできるようにするというものです。就寝前にベッドの上から鍵の状態を確認できたり、出先から解錠・施錠ができたり(要別売周辺機器)と、とても便利なデバイスなのですが、買い物帰りなど両手が荷物で塞がっている時など、スマホを取り出してアプリを起動してという操作に手間取ることもありました。
慌てて操作してスマホを落としてしまった、なんてこともありそうですね。
對馬:そうなんです。でも『wena 3』を使えば、Alexa同様、ホーム画面からワンタッチで鍵の開け閉めが可能になります。なお、『wena 3』には、側面ボタン長押しあるいはダブルクリックに任意の機能を割り当てることができるショートカット機能が用意されているのですが、ここに『Qrio Lock』の解錠・施錠を割り振っておくと、さらにスピーディな利用が可能になります。もちろん、ショートカット機能にはAlexaの呼び出しを割り当てることもできます。
さまざまなライフスタイルにフィットする3つのラインナップで自分らしさを表現
5つある進化点の最後の1つ、選べる3つのラインアップについて教えてください。
對馬:『wena 3』では、これまでのラインナップを整理し、1つのモデルでメタル、レザー、ラバーの3つのバンドを選べるようにしました。メタルバンドはさらなる高級感を追求すべく従来モデルよりもバンドのコマのサイズを小さくし、さらに細かな微調整も可能にしたことでフィット感を大きく高めています。もちろん素材は、従来から引き続き高品位かつ高い堅牢性を持ったステンレススティール「SUS316L」を採用。また、ヘッドとの接続に利用するエンドピースを従来の3サイズ(18mm、20mm、22mm)から7サイズ(18mm〜24mmまで1mm刻みで用意)にまで細分化し、より多くのヘッドにフィットするようにしています。
對馬:レザーは引き通しタイプのバンドになっています。ベルト幅は18mm、20mm、22mm、24mmと4種類を用意。つけたいヘッドのベルト幅に1mmくらいの余裕をもった状態でもお使いいただけますので、実質18mm〜25mm台のヘッドに対応しています。レザーは革に関する国際的な安全・環境基準である国際皮革環境認証「LWG」を取得しているタンナーが製造した革を採用しており、風合いの良さはもちろん、耐久性にも優れています。また、色はプレミアムブラックとブラウンの2色から選んでいただけます。
對馬:最後のラバーは一見、先代『wena wrist active』と似た形状なのですが、エンドピースコネクタの形状を刷新することでバンドを装着した状態でもヘッドの着脱ができるようになりました。
青野:構造を刷新したことでバンド側に空いていた穴やバンドのテーパーもなくなり、ヘッドをつけない状態でも、スマートバンドとして違和感なく使っていただけるようにしています。また『wena 3』では、ヘッドとバンドのボリューム感に落差が生じないよう、エンドピース(18mm〜24mmまで1mm刻みで用意)とバンドをつなぐエンドピースコネクタのボリュームを調整することで、バンドからヘッドまで滑らかにつながるようにしました。
本体部分の構造は同じですが、それぞれバンドを繋ぐ部分の構造が異なっているんですね。
對馬:はい。それぞれのスタイルに最適な形状を新たに設計しています。エンドピースの形状も大きく変わっているので、第2世代までのwenaでお気に入りの時計がつけられなかったという人も、『wena 3』なら装着できる可能性が高くなります。
青野:今回、より多くのヘッドに対応できるよう改めて構造を練り直しています。エンドピースの厚みを削って、なるべく干渉しないようにしたほか、先代まではエンドピースに固定されていたバネ棒をフローティング構造にし、さらにストロークを長く取るなど、さまざまな工夫をしたことで、18mm〜24mm台のどんな幅にも対応することができました。
そして、これら3つのラインナップに加え、有名デザイナーによる新作ヘッドや、一流腕時計メーカーとのコラボモデルも発売されるということですが、これらはどういったコンセプトの製品になるのでしょうか?
對馬:新作のヘッドはデザイナーズモデルということで、日本を代表するインダストリアルデザイナー・山中俊治氏と、イタリアの高名なカーデザイナーであるファブリツィオ・ジウジアーロ氏に、それぞれ『wena 3』のためのヘッドをデザインしていただきました。
山中氏とジウジアーロ氏、どちらも著名なデザイナーですが、このお二人はどういう基準で選ばれたのですか?
對馬:山中氏は実はISSEY MIYAKEの最初の腕時計をデザインした方でもあるんですよ。そこで今回、デザイナーズモデルを作るにあたり、最初にお声がけをさせていただきました。
山中氏は『wena 3』についてどんな感想をお持ちでしたか?
對馬:アナログ時計の美しさとスマートバンドの実用性という対極的なものが、1つのプロジェクトとして成り立っているところにシズル感(瑞々しさ)を感じるとおっしゃっていましたね。そして、それを表現するということでこのデザインになりました。これまでの腕時計にはない、『wena 3』にマッチしたデザインに仕上がっていますよね。
青野:バンド側にコンピューターが入っているというところに激しく萌えてくださったようです(笑)。結果、時計としての機能を突き詰めるのではなく、機械としてのシズル感を追求していったということでした。
ジウジアーロ氏のデザインについても教えてください。
對馬:ジウジアーロ氏はカーデザイナーということもあって、これまでにもハンドルを握った時に文字板が正位置を向くと腕時計を多く手掛けていらっしゃいました。結果、右利き用、左利き用の2種類を用意せねばならなかったそうなのですが、今回のモデルはそのアイデアをさらに発展させて、ヘッド部分を左右に30度ずつ回転できる機構を実現。どちらの腕につけていても使えるようにしています。
對馬:そして、その上でシチズンさん、セイコーさんとのコラボモデルも発売します。こちらはエコ・ドライブ電波時計やソーラー電波腕時計といった両社の戦略モデルを、『wena 3』に合わせたデザインにアレンジしていただいたもの。それぞれの製品に合わせたバンドをセットにして台数限定で販売します。こちらはヘッドだけの販売はありません、ぜひこの組みあわせで使っていただきたいですね。
満を持して登場した『wena 3』は開発チームの理想を具現化した決定版
最後に読者に向けてメッセージをお願いします。
青野:『wena 3』は、ガラスの質感から金属の研磨の具合まで、機能以外の触わり心地といった部分までしっかりとグレードアップしています。ぜひ実物を見て、触っていただきたいので、ソニーストアなどにお越しいただき、実機を手に取っていただければと思います。
友藤:今回、いろいろな新機能を搭載しただけでなく、使い勝手、UIのところにもしっかり手を入れて、これまでにない全く新しいプロダクトに仕上げました。ですので、これまでwenaを使ってくださっていた方々はもちろん、wenaを知らなかった人、スマートウォッチに興味がなかったという人にも触ってみていただきたいですね。日々の持ち物を減らしたい、身軽になりたいという人に使っていただきたいです。
對馬:2015年に初代『wena wrist』を発表してから約5年。これまでいくつもの製品を出してきたのですが、自分たちのやりたいことと、実際に技術的にできることにはどうしてもギャップがありました。それが今回の『wena 3』で、かなり理想に近いものが作れたのではないかと考えています。「便利を、自由に。」というコンセプトを体現した、自信を持っておすすめできるものに仕上がったと思っています。ぜひお試しください!