ユーザーの声に応え進化した第2世代
吸熱・装着性を高め
利用シーンを広げていく
『REON POCKET 2』
ユーザーの声に応え
進化した第2世代
吸熱・装着性を高め
利用シーンを広げていく
『REON POCKET 2』
“着るクーラー”という新発想で、夏は心地よい冷感を、冬には温感をも与えてくれるウェアラブルサーモデバイス「REON POCKET(レオンポケット)」に、吸熱性能を約2倍*に高めた第2世代モデル『REON POCKET 2』が登場。また、それに合わせて大手アパレルブランドから対応ウェアが多数リリースされました。ここではその進化点と製品に込めた想いについて、開発を主導した3人のエンジニアたちが解説します。
* 従来モデルRNP-1Aと最大冷却レベルの吸熱性能(開始60分の平均吸熱量)を比較した場合。ただし使用状況、環境により変動します。
伊藤(健):「REON POCKET」は、首もとに接触するパッドの温度をスマートフォンから自在にコントロールできるこれまでにないウェアラブルサーモデバイスです。夏場の暑い時期は首もとに冷感を、冬の寒い時期には温感を付与するというかたちで一年中使っていただけます。2020年7月に初代モデル『REON POCKET』の一般販売を開始し、2021年4月には後継機となる『REON POCKET 2』を発売しました。
伊藤(健):発売してみて分かったのは、我々が想定していたよりも幅広い使われ方をしているということでした。もともとこの製品は通勤や外回りなど、移動時の暑さ寒さに苦しめられているビジネスパーソンの課題を解決するために作ったものだったのですが、実際には屋内外で作業する方や、ゴルフなどで使われている方がとても多く、もっと冷却能力を上げてほしいという声を多くいただきました。そこで、最新モデル『REON POCKET 2』では吸熱性能を約2倍 * に高めた「レベル4」というモードを搭載しています。
* 従来モデルRNP-1Aと最大冷却レベルの吸熱性能(開始60分の平均吸熱量)を比較した場合。ただし使用状況、環境により変動します。
もうひとつ想定外だったのが、初代『REON POCKET』リリースのタイミングに新型コロナウイルスの感染拡大が発生して、通勤という行為自体が少なくなってしまったこと。そのため2021年3月に専用ネックバンドを発売し、在宅テレワークならではのカジュアルなスタイルでもご利用いただけるようにしています。
伊藤(健):これまでは、「REON POCKET」の本体を首もとに固定するためには、背面にポケットの付いた専用インナーウェアを着る必要がありました。しかし、この専用ネックバンドがあれば、Tシャツやポロシャツなど、着る服を選ばずに「REON POCKET」をご利用いただけるようになります。もちろん、新旧どちらの製品でも利用可能です。
伊藤(健):新機軸ということでまだ実績のなかった初代『REON POCKET』を購入してくださった皆さんに1日でも早く提供したいと考えたからです。また、少しでも多くの方に利用していただけるよう、価格も1,430円(税込)と抑えています。
なお、とても簡単な形状に見える専用ネックバンドですが、性別や体格を問わずしっかりと本体を首もとに固定できるようにするため、形状、素材とも時間をかけてしっかりと吟味しました。ネックバンドのカーブをソニーの首かけ型ヘッドホンを参考に作り込むなど、ソニーならではのノウハウも数多く盛り込まれています。
* 従来モデルRNP-1Aと最大冷却レベルの吸熱性能(開始60分の平均吸熱量)を比較した場合。ただし使用状況、環境により変動します。
伊藤(健):吸熱性能を高めるために、内部の部品それぞれをより大きな電流を扱えるものに変えています。また、それに伴い発生する熱を効率的に排出できるよう、空冷ファンのコントロールをこれまで以上に細かく行うようにしました。
伊藤(陽):この際、苦労したのがバッテリーの制御です。システムに高い電力をかけるとバッテリーの電圧が一時的に大きく下がってしまい、不意にシステムリセットがかかるといった不具合が起きてしまうんです。一方で、冷却速度をゆっくりにして電圧低下を防ぐと、今度はユーザーの感じる冷感・温感に物足りなさが出てしまいます。このバランスを取りつつ上手に制御する仕組みを作るのは思っていた以上に大変でしたね。
伊藤(陽):従来のCOOL「レベル3」は通勤時の5分〜10分の移動を想定したものだったのですが、「レベル4」ではより長い20分〜30分の散歩などでも充分な冷感を感じていただけるようになっています。私個人の感想ですが、室内では寒いと感じるほど強力です。
伊藤(陽):WARMの「レベル4」については、安全面も考慮して、初代『REON POCKET』の「BOOST」くらいの温感に抑えています。
伊藤(健):「レベル4」は強力な反面、バッテリー消費が大きく、充電池持続時間がCOOL動作時で約1時間、WARM動作時で約2時間となりますが、モバイルバッテリーをご利用いただくとより長時間お使いいただけます。
伊藤(健):はい、長時間使いたいというご要望にお応えして、2020年11月のファームウェアアップデートでUSB給電しながら使えるようにしました。一般的な3,350mAhのモバイルバッテリーなら「レベル3」でも約13時間お使いいただけます(連続使用は1時間で一時停止)。
伊藤(陽):モバイルバッテリーは、USB Type-C 端子を備えていれば市販のものを広く使っていただけます。ふだん使いであれば3,000mAh前後くらいのコンパクトなものが持ち歩きやすくておすすめですね。
伊藤(健):なお、『REON POCKET 2』では、モバイルバッテリーを繋いだ状態でも専用インナーウェア、専用ネックバンドに装着しやすいよう、付属のUSBケーブルの端子部分を邪魔にならないL字型にしたほか、長さも100cmに延長するなどといった工夫を施しています。
伊藤(健):パソコンのUSBポートから給電する場合にもちょうど良い長さになっています。ちなみに、このL字型コネクタは接続時の横幅を少しでも抑えられるように特注しています。一見、ただの白いケーブルに見えるのですが、とことんこだわりました。
伊藤(陽):この1年でいただいたさまざまなご要望の中で、ゴルフのラウンド中、ずっと冷感を感じていたいというものが思った以上に多く、その声に応える形で実現しました。モバイルバッテリーの併用が前提となるのですが、高い冷感を保ちながら『REON POCKET 2』を長時間使い続けていただけます。早朝からのラウンドを想定した「MORNING MODE」で約7時間、日中のラウンドを想定した「DAYTIME MODE」で約5時間の長時間利用が可能です(連続使用は1時間で一時停止)。
伊藤(健):「REON POCKET」は、ランニングやサッカーなどといった、たくさん汗を流すようなスポーツでの利用を推奨していません。その点、ゴルフは運動量という点で「REON POCKET」と相性が良かったというのがあります。
また、ゴルフというスポーツがスタイリッシュさ、エレガントさを大事にしていると言うところも大きかったです。「REON POCKET」は外見に違和感無く身に着けられることが特長の1つなので、暑い日も寒い日も、普段のスタイルを崩すことなくラウンドしていただけます。
伊藤(陽):実際にゴルフをやっている方には分かっていただけると思うのですが、ラウンド中ってコートを着たり脱いだりしている暇もないほど慌ただしいんですよね。その点、「REON POCKET」ならポケットに入れたスマートフォンから冷感・温感をコントロールできますので快適にプレイしていただけます。
伊藤(健):そうなんです。実際、プロゴルフコーチの方にも試していただいたのですが、問題なくスイングできるとお墨付きをいただくことができました。
伊藤(健):見た目の唯一の変更点にもなるのですが、肌に接するパッド部分が腕時計にも使われている、耐腐食性に優れたステンレススティール「SUS316L」という素材になりました。また、従来モデルではここに滑り止めとして白いシリコンシートを貼っていたのですが、『REON POCKET 2』では専用ネックバンドなどでしっかり首もとに固定できるようになったこともあり、あえて金属パネルを表出させています。
伊藤(健):やはりシリコンシートがあると、少し冷感・温感が損なわれてしまうんですよね。『REON POCKET 2』ではシリコンシートを排したことで、よりダイレクトに効果が伝わるようになっています。なお、別売の専用シリコンコーティングシートを貼っていただくことでこれまで通りの装着感を再現することも可能です。
伊藤(健):また、見えない進化点として耐水・耐汗構造を本体全体に拡げています。従来モデルではパッドの部分にだけシーリングを施していたのですが、『REON POCKET 2』では内部部品をコーティングするなどといった工夫で、内部に水滴・ほこりが侵入しにくくなっています。これによって、先ほどお話ししたゴルフなども含めた、よりアクティブなシチュエーションでお使いいただけるようになりました。
寺崎:リニューアル前のアプリはシンプルであることにこだわっており、結果として「使い方がわからない」「使いにくい」という声はほとんど上がっていません。一方で、我々があまり推奨していない使い方をされてしまことがあったので、まずはそこを進化させたいと考えました。
寺崎:最も強力なモードをずっと使い続けるような使い方ですね。ハードウェアへの負担が大きくなりすぎるほか、ユーザーも冷感・温感に慣れてしまい、冷たさや温かさを感じにくくなってしまいます。しかし、従来のアプリは単に「REON POCKET」に命令を送るだけの一方通行の構造になっており、ユーザーをより適切な使い方に導くことができませんでした。そこで新しいアプリでは「REON POCKET」の状態をスマートフォンでも把握できるようにして、それを元に適切な操作をしてもらうという双方向の構造をコンセプトに再設計しています。
寺崎:連続1時間動作して「REON POCKET」が停止したことを知らせる通知を表示できるようになったほか、画面右上にパッド部分の温度状態を表示するようにしました。「REON POCKET」の状況をユーザーに伝えることで、冷感が物足りないと感じた時にその理由を客観的に判断できるようにします。例えば、パッド部分はしっかり冷えているのに冷感を感じにくい場合は、本体が正しく首もとに接触していない可能性があります。逆にパッドが冷えていなければ、本体側の問題だと分かるわけです。この際、単に温度状態が分かるだけでなく、状況ごとにどうすればいいのかのガイドを掲載しているのがポイントです。なるべく適切な使い方をサポートすることを目指しました。
寺崎:もう1つの大きな進化点が、冷感・温感をあらかじめ指定したレベル、時間で繰り返す「マイモード」です。この機能自体は従来のアプリからあり、開発チームとしては推し機能だったのですが、実際にはあまり使っていただけていない課題がありました。そこで新しいアプリではUIを変更して導線を分かりやすくした上で、現在のレベルや動作時間などをきちんと確認できるようにして使いやすくしています。
寺崎:その通りです。デザイン面では、動作レベルを指定するボタンが大きくなり、左右どちらの手で持っていてもコントロールしやすいようになっています。
伊藤(健):ユーザーにどういった情報を提示して、どういった操作をしていただくかというコミュニケーションの部分はまだ試行錯誤しているところです。今後は、これまで以上に双方向性を高めつつ、最終的にはそれぞれのユーザーの望む状態をオートメーションで実現できるようにしたいと思っています。
伊藤(健):第1弾として、『REON POCKET 2』の発表と同時に3つのブランドから「REON POCKET CERTIFIED」というかたちで8つのアイテムが発表されました。デサントジャパンの持つ3つのブランド(デサント、マンシングウェア、ルコックスポルティフ)から発売されるゴルフ用ポロシャツはぜひ「ゴルフモード」で使っていただきたいですね。
伊藤(健):ウェアとしての基本的な部分はデサントジャパンにお任せしているのですが、「REON POCKET」を収納するポケットの部分については我々の希望をお伝えしています。具体的には、スイング時に大きく身体を捻っても本体がズレてしまわないよう、フレームのようなコシのある生地をポケットの周囲に配置してもらっています。また、「ゴルフモード」で使いやすいよう、装着時に本体の電源端子がくる部分の背中側に穴を開けており、そこからケーブルを挿せるようにもしているんですよ。
また、デサントジャパンからはゴルフウェアのほか、幅広くスポーツシーンで活用できるTシャツも発売されます。
伊藤(健):そして、ハイファッションの領域からはエストネーションから対応ウェアが発売されることになりました。同社とは他の商品でお付き合いがあったのですが、今回、『REON POCKET 2』が出る時にお声がけいただいて、対応Tシャツを作っていただけることになりました。
こちらの特長は本体収納部分に熱圧着技術を採用することで生地の厚みを少なくしたシームレス仕様。適度な張りを持ちながら防シワ性、ストレッチ性、軽さを備えたトリコット素材製の『Boat Neck Tee』と、接触冷感とストレッチ性に富んだポリエステル素材製の『Inner Tee Shirt』の2種・各2色をラインアップしています。
伊藤(健):最後に紹介するEDIFICEからはビジネスシャツが2種類発売される予定です。
伊藤(健):言うまでもないことですが、これらの8つの対応ウェアはどれもしっかりとした縫製がなされており、ポケット周りの縫い目がチクチクするといったことはありません。また、共通する特長として、ポケット部分の塗装を熱の籠もらない明るめのカラーリングにしています。
伊藤(健):ポケット部分を黒っぽい色にしてしまうと直射日光の熱を吸収して本体内の温度が上がってしまうんですよね。そこで、デザインを工夫して明るい色にしていただくようお願いしました。
伊藤(健):はい。そして今後も、さまざまなメーカー、ブランドから「REON POCKET」対応ウェア、アイテムが発売される予定です。直近では、ゴルフウェアで有名なパーリーゲイツから対応ウェアがリリースされることを発表しています(7月1日発売)。これは同ブランドのベストセラーモデル『BEATRIX PLUSハイネック』に「REON POCKET」を装着できるポケットを設けたもの。ウェアの特長であるゴルフスイングの邪魔にならない設計を損なうことなく、「REON POCKET」をしっかり身体に密着させ、その重量を感じさせないような工夫を施しています。
なお、パーリーゲイツを展開する株式会社TSIは、先日、『REON POCKET 2』を利用した「空調温度を2℃上げてみようプロジェクト」を実施しています。これは、オフィス空調の設定温度を25℃から27℃に変更した上で、社員50名に『REON POCKET 2』を身につけてもらい、業務への影響を調査するというもの。オフィス全体(空調9台が稼働)で約20%の消費電力を削減できると試算されています。その上で実際にプロジェクトに参加した方々のうち、44%が空調の設定温度が上がっているにもかかわらず「ふだんと変わらなかった」と解答し、さらに32%が「ふだんより少しはかどった」と解答してくださいました(詳細は下図参照)。
伊藤(健):皆さん共通しておっしゃっていたのが、素材の工夫だけで服の基本機能をさらに向上させるのが難しくなってきたということ。そうした状況を打破するために、ソニーのようなこれまでアパレルの世界にほとんど関わっていないメーカーの技術を活用したいと思ってくださったことには面白さを感じています。
伊藤(陽):2020年にリリースした最初の『REON POCKET』は、発売後もお客さまの声に応えるかたちで多くのアップデートを行ってきました。もちろん新しい『REON POCKET 2』でも同様に製品を進化させていきたいと考えています。我々としてもまだまだ発展途上の製品だと思っておりますので、ぜひとも多くの方からご感想、ご要望をいただきたいです。よろしくお願いいたします。
寺崎:特に私の担当しているソフトウェアの部分はどんどんアップデートしていけるので、ぜひ楽しみにしていただきたいですね。なお、使い方については、Twitterの公式アカウント(@REONPOCKET_JP )でかなり力を入れて発信しております。ほぼ毎日、何かしらツイートしていますのでフォローしていただけるととてもうれしいです。
伊藤(健):現在、室内の快適性の確保はほとんど空調に頼っているというのが現状だと思うのですが、そこに「REON POCKET」を持ち込むことで、環境への負荷を少しでも小さくしていきたいという想いが初代『REON POCKET』の頃から変わらずあります。今回、その想いに共感してくださるパートナーがたくさん参加してくださり、世界観が大きく広がりました。今後もさらにこの取り組みを拡げていきたいですね。
個人的に大切だと思っているのが、ゴルフなどのエンタテインメントを入り口に拡げていくということ。我慢を強いるのではなく、楽しく、より自然なかたちで広められるものを提案していきたいと思っています。これからの「REON POCKET」にもご期待ください。