「いつまでも守り続けたい日本の自然」をテーマに、1983年から毎年開催されてきた『「日本の自然」写真コンテスト』(朝日新聞社・全日本写真連盟・森林文化協会主催、ソニーマーケティング株式会社協賛)。第38回目となる今回は、世界的な新型コロナ禍にも関わらず前年から3割近く応募数が増えた前回からさらに応募数が増えました。その応募総数はなんと13,867点(写真データをそのまま審査するデジタル部門が8,492点、紙に出力した写真で審査するプリント部門が5,375点)。苦難の時代に負けまいとするカメラファンたちの強い意志を感じる大きな成果と言える数字です。
残念ながら昨年度に引き続き受賞作品発表と表彰式はオンラインでの実施となってしまいましたが、昨年同様、審査委員を代表して写真家の福田健太郎さんが上位入賞作品について講評する動画が配信されています。
この動画の中で、今の時代だからこその写真の可能性について、福田さんは次のように語ります。
「デジタルカメラの進歩と共に、動植物の営みを捉えたネイチャー写真であったり、日本の四季折々の表情を丹念に見つめた風景写真などを撮影する楽しみをたくさんの方が得ております。(写真を撮ることで)自分の心も豊かになりますし、作品を見る人の心も揺り動かす、そういった可能性を写真が秘めていると信じております」
ここでは、過去最大の応募写真から選ばれた入賞作品の一部について、撮影した皆さんからいただいたコメントを、その作品と共に公開します。
なお、今回の受賞作品は2021年8月から行われている巡回展(詳しくはこちら)または、公式サイトから注文可能な作品集(詳しくはこちら)にて観賞可能です。また、デジタル部門受賞作品については、ソニーの液晶テレビ/有機ELテレビ ブラビア向けアプリ「My BRAVIA」でも配信しています。
※ネットワークに接続されたAndroid TV機能搭載のブラビアが必要です。
Webから直接応募でき、しかも応募料無料の「デジタル部門」は、今やコンテストの中核を担う部門といっても過言ではないでしょう。30歳以下の若手フォトグラファーを対象とした「ソニーネクストフォトグラファー賞」もあることから、かつては若手中心の部門となっていましたが、今では老若男女幅広い層から作品が送られてくるようになりました。この「デジタル部門」の頂点となる「最優秀賞 ソニー4K賞」は、高精細なデジタルフォトを、デジタルデータのまま大画面4Kテレビに表示して鑑賞するスタイルに相応しい作品に贈られます。その受賞作と、受賞者の声をお聞きください。
最優秀賞 ソニー4K賞
デジタル部門応募作品の中から、30歳以下の若手が撮影した作品に贈られる「ソニーネクストフォトグラファー賞」。審査委員の福田さんはこの賞を獲得する人には「単に若いだけではない、自然と向き合う真摯な姿勢をもつ」ことが求められると言います。今回の受賞作品も、まさにそれに相応しいものでした。
ソニーネクストフォトグラファー賞
大変光栄な賞をいただきありがとうございます。私自身写真歴は4年程ですが写真を始めて間もない頃から「日本の自然」写真コンテストのことは知っており、その中でもソニーネクストフォトグラファー賞は憧れでした。通知が来たときはうれしさのあまり自宅の廊下を何往復もしました。
この作品では、自然の美しさの中にある怖さ、ふだん見ることのできない桜島の姿を表現しようと考え撮影しました。そこで望遠レンズで俯瞰の位置から撮影することで火山雷の迫力をより強調しています。桜島は私の住んでいる場所からはっきりと肉眼で見ることができ、毎日桜島を横目に通勤しています。そして洗濯物を外に干した時と洗車した時はよく噴火し、灰を積もらせます(笑)。
桜島の噴火活動が活発だった2019年の12月頃、SNSで仲良くさせていただいている方々が噴火の写真を撮影していたので、私もそれを追うように撮影地に通い、噴火の瞬間を狙い始めました。この写真は、桜島から10kmほど離れた場所から望遠レンズを構えて撮影したものです。火山雷発生の瞬間、桜島の山頂がピカピカ光るのを肉眼でも確認することができ、今でもその光景が脳裏に焼き付いています。
『α7 III』は高感度耐性の高さとダイナミックレンジの広さが表現の幅を広げてくれるためありがたいです。桜島と火山雷を撮影したときも『α7 III』の性能に助けられました。また、レンズに関しては特にGMレンズの解像感の高さがとても気に入っています。いつも撮影した被写体を拡大してニヤニヤしています。
今後は九州だけではなく日本全国、世界の風景をカメラに収めたいと考えています。また、自分の撮影した写真をより多くの方々に楽しんでいただくために写真展を開催してみたいです。
▼▼受賞作品をクリックすると、拡大してご確認いただけます▼▼
厳しい北海道の冬を生き抜くキタキツネのたくましさと、もふもふした冬毛の美しさを表現すべく、逆光に輝く毛並みと雪原を白飛びに注意して撮影しました。カメラ歴は3年4ヶ月ほどで、当初から『α7 III』を使用しています。このカメラを選んだのは、撮影性能に妥協せず、北海道の自然と真摯に向き合うため。連写性能や瞳AF、ダイナミックレンジの広さなどに全幅の信頼を置いています。
厳冬期の洞窟、人知れずに暗闇でひっそりと育った氷筍が逆光を浴びて怪しく輝く美しさに焦点を当て、迫力とともに表現するため超広角レンズを使用し可能な限り寄って正面にドーンと配置し、タイトルどおりの「暗闇のダイヤモンド」としてフィーチャーしてみました。撮影機材は2019年6月より『α7R III』を使用しております。これ以上ないほどの手応えと現像耐性などがとても気に入っております。特に夜景を撮るときなどは大満足の写りであるため他機種への移行は考えられません。最高です!
青森県下北半島の放牧地で、寒立馬(かんだちめ)の厳寒の姿を撮影しました。当日は大変な荒天でしたが、少しの晴れ間に光が差し、目の前にいる集団から離れた一頭が地吹雪に巻かれながらも、こちらに歩き向かってくる瞬間を収めることができました。映画やゲームに出てくるような伝説の名馬が登場する1カットを表現しています。カメラは『α99 II』を2年半ほど前から愛用中。シャッターを押した時のダイレクト感、レスポンスの速さ、撮っている時のラグの無さなどが気に入っています。
2019年1月に『α7R III』を購入して本格的にカメラを始めました。ふだんはエゾクロテンやキタキツネなどの動物をメインに撮影してます。エゾクロテンの写真は穴から顔を出しているもののがほとんどなので、動きのある写真を撮るために行動を観察するところから始めています。昨年8月に動物の動きのある写真を撮りたくて『α9』に買い換えたのですが、AFも速くて追従性も良く、なおかつ秒間20コマなので撮れる写真が変わりました。
鷲同士の戦いを迫力あるように表現したいと考え、顔つきや鉤爪の様子がわかるようになるべく寄りで撮影しました。迫力を演出するために蹴散らした粉雪を入れることは最初から決めており、高速でシャッターを切るようにしています。戦いは一瞬なので、鷲たちをよく観察し、どの鷲が戦いそうなのかを見極めてカメラを構えました。野生動物を撮影することが多いため、AFの高速性と追随性、高速連写ができる『α9』を使っています。
20代、子供ができたのをきっかけに、一眼レフ(フィルム)を購入。40代、デジタル化の波に飲まれ、デジタル一眼レフを購入。50代、野鳥撮影にハマり現在に至る。表現などは全く考えていません。狙っていなかった偶然の一枚が楽しいのです。現在は3年前に購入した『α9』を愛用中。軽量コンパクトで高性能なところが気に入っていますが、『α1』への買い換えも検討しています。
ここは初めて訪れた場所で、被写体のラッコもこの時はじめてこの場所にいることを知りました。100-400mmのレンズを購入し初めて撮影した被写体でもあったのですが、400mmでも遠く、もっと大きく撮影したかったというのが本音です。それでも、ハスの葉氷がきれいだったので、ノートリミングで絵になるようにラッコの配置を考えました。防寒が不十分だったこともあり、すぐに撮影をあきらめてしまったのですが、今考えるともったいなかったな、もっと頑張っていろいろ撮影すればよかったと思っています。
動物(野生)たちも人間と同じ。母親らしさ、子供らしさがあり、楽しい事、辛い事、守るべきこと、甘える事、感情だって普通にある、何も変わらない事が伝えられないか? という思いがあります。母キツネの表情が子キツネに隠れないように、またその逆もないような瞬間を狙いました。カメラは『α7R III』を使用。今までのレフ機では構図を決めつつ瞳にピントを合わせるという作業が必要でしたが、動物瞳AFに対応する『α7R III』なら、瞳をカメラに任せ、その間、構図づくりに専念してストレスなく撮影する事ができます。
極寒の北海道で野鳥、動物たちの生きる力には日々感動し撮影しております。この作品では、雪上バトル(縄張り争い?)で派手に舞い上がる雪飛沫(ゆきしぶき)をうまく表現できないか? と試行錯誤して撮影しました。鳥さんの動きがとても早いので、鳥さんの動きを止めるための設定にも苦労しました。愛用の『α9』はAFの精度が抜群で気に入っています。ソニーストア札幌のトークイベントで井上プロが「『α9』のAFは別格」とおっしゃっていたのですが、ホントに別格でした(笑)。
ツキノワグマは近年人里へ出没し世間を騒がせていますが、人里離れた山奥でひっそりと暮らしているクマたちもたくさんいます。身近なようで遠い存在であるツキノワグマに興味を持ち、長年観察を続けています。この作品はまるでおとぎ話の中で出会ったようなツキノワグマを写真で表現できないかと考えて撮影を続けたうちの1枚です。ツキノワグマは黒い被写体であるため、AFが効かずにピントを合わせることが困難ですが、この場面では『α7R III』の動物瞳AFが作動してくれ、見事ツキノワグマの瞳にピントを合わせることができました。
カメラを始めておよそ10年間、野鳥や風景などを撮影し続けてきました。この写真は、マガンやサギなどの渡り鳥が飛来する溜池をこのままの形で次世代に残したいと考えて撮影しました。カメラは『α7S III』のほか、『α1』『α7R IV』を所有しています。『α1』は鳥や動物の瞳をとらえて続け30コマの連写で今までにないシーンを撮影でき、『α7S III』は早朝や夕方の薄暗いシーンを低ノイズで撮影できる、今ではどちらも自分には欠かせない機材になっています。
野生動物のことを少しでも知ってもらうため、その動物が生きている環境も写すことを意識しています。被写体にカモシカを選んだのは、その不気味なイメージを払拭したいと思ったから。「怖い」と言われがちなカモシカの、凛々しい姿や可愛らしい姿を撮ってやろうと今年の題材にしました。機材は『α1』と『α9』の2台体制。今回の入選作は『α9』のものですが、最近は『α1』を持ち歩くことが増えました。野生動物は近くでの撮影が難しいことが多く、『α1』のトリミング耐性の強さはありがたいです。
平成元年に富士山麓に移り住んでから、日夜、富士山に発生する雲の追っかけをしています。また、コロナ禍で中断していますが、富士と名のつく日本100名山の撮影にも傾注しています。出品写真は笠雲とつるし雲が発生した朝のカットの一枚です。特につるし雲の輪郭が朝日によって明瞭となったカットを選びました。フィルム時代から長らくAマウントのカメラを使い続けており、現在は『α99 II』のほか、『α77 II』『α7R IV』も愛用しています。
この作品を撮影したのは大分県くじゅう連山の天狗ヶ城山頂で、どの方向も素晴らしい景色が広がっていました。中でも特にステンドグラス状に氷結した御池がとても美しかったのでシャッターを切りました。モルゲンロートに染まる手前の雪肌と、背景の久住山がバランスよく構図に入るようにしています。現在愛用しているカメラは2020年春に購入した『α7R IV』。コンパクトなボディに6000万画素とGMレンズの圧倒的な解像力、トリミング耐性、バッテリーの持ちの良さなどがとても気に入ってます。
撮影者自らがプリントまでを行い応募する「プリント部門」。「デジタル部門」と比べて応募数が少ないとは言え、古くから自然写真を手がけてきたベテランフォトグラファーが多く集う激戦区となっています。ここでは、そんな「プリント部門」入賞作品の中から、αユーザーの撮影したものをピックアップして紹介します。
▼▼受賞作品をクリックすると、拡大してご確認いただけます▼▼
夜明けの直後、日の出と反対側の空が薄紅色に染まります。この美しい薄紅色に、冠雪した利尻富士が染まる瞬間を捉えたいとイメージしました。さらに前景にスローシャッターで波模様を浮かび上がらせ、波間に浮かぶ利尻富士に仕上げました。『α7R III』はボディサイズが小さいため持ち運びの負担が減ったこと、コストパフォーマンスに優れている点が気に入っています。
カメラを始めたのは10年ほど前で、すでにデジタルでした。主に野鳥と星景を被写体としています。この作品は雄大な山をバックに飛ぶ、渡りの途中のマガンとハクガンの生きる姿、そのスケールの大きさを表現したいと考えて撮影しました。
カメラ歴は2019年から。主にヒグマのような野生動物や、サメ、クジラといった海洋生物を、アフリカなどで撮影をしています。この作品では水族館では見ることのできないイルカの本当の姿を見てほしいと思いました。カメラ素人の人間でも被写体さえあればプロと同じものが撮影できる。それがαシリーズの魅力だと思います。
カメラを始めたのは25年ほど前。風景やスナップ、身近にいる虫などを撮っています。『α7 III』は2018年9月に購入。『FE 24-105mm F4 G OSS』との組み合わせはピントが合いやすく色が綺麗でスナップ、風景などが思うように撮れるところがとても気に入っています。今回の作品では海に面したフジバカマ畑、青空のもと飛ぶアサギマダラの姿に感動したことを通じて、自然と人間との共存を表現しようと考えました。
5年前にミラーレス一眼カメラを購入し、本格的に写真を始めました。絶景を撮影しているうちに北海道の風景と野生動物に惹かれ、思い切って2年前に北海道へ移住しました。北海道では害獣と呼ばれることが多いキタキツネですが、厳しい環境のなかで懸命に生きる彼らはとても尊い存在と感じます。そんな彼らの営みの結晶である子供のキツネの後ろ姿を通して、家族の絆や愛情を感じてほしいと思いました。あえて表情が見えない後ろ姿を写すことで、キツネの表情を自由に想像してもらえたらと思います。
冬を元気に生きるニホンザルの姿を現地の空気・温度感と共に表したくて、周囲の猿たちの位置や湯けむりのあがり具合、降雪状況など、環境が整った中で子猿が飛び込んでくれるのをひたすら待ちました。カメラを始めたの10年以上前なのですが、19年12月に訪れた北海道で野生動物に魅了され、風景から動物撮影中心に切り替えています。それに伴いフォーカス性能に長けたソニーのデジタル一眼カメラを導入。『α9 II』は20コマ/秒の連続撮影速度と正確なAFが肉眼では見えない動物の動きや表情を捉えてくれるので、頭の中で描いたイメージ通り、時にはそれ以上の一瞬を切り取ってくれます。
繁殖期、雄鹿は角の突き合いをします。その際角が絡まった鹿同士は、大抵は餌が食べられず、両者衰弱して死ぬ運命を辿ると聞きます。ところが、死んだ相手の頭をぶら下げて生きている鹿がいる!と噂に聞き、2頭の鹿に何が起こったのか、自然の営みの末の姿を実際にこの目で確かめたくて、真冬に一人で撮影に行きました。実際にこの鹿を目にした時、2頭を主役に出来るような角度で撮ることを意識しました。タイトルを付ける際、命を落とした鹿にも思いを馳せ「戦友と共に」と付けさせて頂きました。2頭に起きた運命を想像し、何かを感じていただけると嬉しいです。
猿の温泉ショットを撮影したくて毎年冬場に出かけます。今回は子猿たちの無邪気な表情、仕草に癒されながらの撮影となりました。2017年に『α6500』を使い始め、昨年『α7 III』を購入。小型軽量、AFの速さ、写真が綺麗。私にとって最高のカメラです。いつも持参して気軽に撮影を楽しんでいます。
今回の「日本の自然」写真コンテストの受賞作品および応募作品を、4Kブラビアの大画面で楽しめる巡回展が2021年8月から2022年8月までの1年間、全国14カ所で開催される予定です。開催場所やスケジュールはこちらよりご確認ください。
ソニーストアでは、ご自身が撮影した写真やお持ちの映像を、実際の4Kブラビアに映し出してご覧いただけます。
テレビで楽しむ写真鑑賞スタイルの体験などにご利用ください。
私の住む土地の「当たり前」が
世界に誇れる魅力あるものだと伝えたい
自分の住んでいる地域で撮った写真が大きな賞として評価されたということが何よりうれしいです。うれしくて結果発表ページを何度もスクリーンショットしていました。いつも応援してくださっている地域の皆様への感謝の念が尽きません。
私は2017年に北海道へ移住し、そのタイミングで本格的にカメラを始めました。今は現地の高校に勤務しており、ほぼ毎日、出勤前や退勤後に撮影をしています。赴任当初は多くの方から「何もない田舎に来ちゃったね」と言われましたが、私にとっては毎日が刺激的な大好きな地域です。この写真も休日の部活動の帰りに撮影した一枚です。氷点下20度ほどでしたが夢中で撮っていたので寒さも感じませんでした。
この写真を撮ったのは、私の住む地域の「当たり前」が、世界に誇れる魅力あるものだと伝えたいと考えていたから。北海道には魅力的な野生動物や絶滅危惧種の珍しい動物が数多くいますが、エゾシカは特段珍しい動物ではなく、食害やロードキルの問題もあり、良いイメージを持っていない方も少なくありません。しかし、身近にこのような生き物がいるという事実が私にとってはいまだに新鮮であり、彼らのフォルムは物凄く魅力的であると思っています。決して珍しいシーンではありませんが、大吟醸のように研ぎ澄ませた、シンプルかつ格好良い撮り方を模索しました。
『α7R III』はお世話になっている諸先輩方の薦めで購入。広いダイナミックレンジとトリミング耐性のおかげで撮れるものの選択肢が増え、より多くの撮影イメージを持つことができるようになったと思っています。
仕事柄転勤が多いですが、どの地域に行ってもその地の魅力を見つけて被写体に拘らず楽しく撮影できればと考えています。多感な高校生たちにも地域の魅力を伝え、写真を撮る子が増えたらうれしいですね。