商品情報・ストア Feature 一聴して分かるレベルのさらなる高みへ「音」に込められた想いまで届ける。NW-WM1ZM2 / NW-WM1AM2

開発者INTERVIEW(開発者インタビュー)

一聴して分かるレベルのさらなる高みへ
「音」に込められた想いまで届ける。
NW-WM1ZM2 / NW-WM1AM2

『NW-WM1ZM2 / NW-WM1AM2』製品画像
『NW-WM1ZM2 / NW-WM1AM2』製品画像

MEMBER

田中の写真
商品企画担当
ソニー株式会社
田中
佐藤の写真
音質設計担当
ソニー株式会社
佐藤
関根の写真
プロジェクトリーダー
ソニー株式会社
関根
横山の写真
デザイン担当
ソニーグループ株式会社
横山
POINT 01

「一聴して分かるレベルの
さらなる高み」を目指した
新フラッグシップ
ウォークマン

ウォークマンの新たなフラッグシップモデル『NW-WM1ZM2』は、先代モデル『NW-WM1Z』と同じく「Signature Series」の一角という位置付けの製品となります。まずはこのSignature Seriesについて改めて定義を聞かせてください。

田中:Signature Seriesは、ソニーが長年の商品開発の中で培ってきたアナログとデジタルの高音質技術を結集し、最高峰のパーソナル音楽体験を実現するフラッグシップモデル群の総称となります。2016年に発売された先代『NW-WM1Z』はその第一世代モデルで、シリーズ全体として「アーティストの伝えたい音楽の感動や空気感を再現する」ことを掲げ、徹底的に高音質化を追求してきました。その目指す音の方向性は今でも全く変わっていません。

なお、第一世代ではシグネチャーシリーズの設計思想を汲んで設計された兄弟機も含めて「Signatureシリーズ」としていましたが、その後、定義をより厳格化してカテゴリーごとに1機種としたため、今回は『NW-WM1ZM2』だけがSignature Seriesということになりました。

インタビュー風景の写真

新モデルの特長を簡単に教えてください。

田中:まず製品のコンセプトですが、「あらゆる音楽ソースを最高の音質で楽しめる究極のポータブルプレーヤー」となります。先代モデルからの進化点として大きく3つ挙げられます。

1つ目はやはり最も大きな期待を寄せられている音質の進化です。Signature Seriesには『DMP-Z1』という2018年に発売されたこれまでになかったコンセプトで劇的な音質向上に実現したハイエンドプレーヤーがあるのですが、そこで培われた数々の高音質化技術・設計を惜しみなく盛り込むなどして、ポータブルプレーヤーとしてこれまでなかった領域の高音質を実現しています。なお、開発メンバーは先代モデルの顔ぶれをほぼそのまま引き継いでおり、ご好評いただいている従来までの流れを受け継ぎつつ「一聴して分かるレベルのさらなる高み」を目指して開発を行いました。

2つ目は対応する音源のさらなる拡大です。ハイレゾ対応など高音質化が進むストリーミング音楽配信サービスや音楽ダウンロードサービスに対応すべく、今回、満を持してフラッグシップモデルにAndroid OS搭載を果たしました。なお、詳しくは後ほどお話しますが、懸念される音質やバッテリー駆動時間への影響にはしっかり対策を施しております。

そして最後の3つ目が操作性の進化です。現在、世界的な流れとして、音楽をより深く楽しむ「傾聴」のシーンがポータブルオーディオでも増えてきており、それに伴い、音楽体験を阻害しない操作性の重要度が以前と比べて大幅に高まってきています。そこで、新モデルでは従来より大型化・高精細化した5.0型HDタッチパネルディスプレイを採用し、操作レスポンスについても向上を図っています。

POINT 02

Signature Series
『DMP-Z1』で培った技術と
ノウハウを凝縮

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新しい『NW-WM1ZM2』および『NW-WM1AM2』の音質面の進化について、深掘りさせてください。まずは、その基本的な進化の方向性について教えていただけますか?

佐藤:先ほど田中が話したこととも重複しますが、一言で言えば「正統進化」です。その上で、『DMP-Z1』で多くの方々に驚いていただいた音の広がり感、左右だけでなく、高さ方向、奥行方向への広がり感をこのサイズの製品で出すことに挑戦しています。

音質については、最上位モデルらしく、どんなジャンルでもしっかりと楽しめるように作り込んでいます。その上で細かな改善を積み上げていくことで、出音がよりナチュラルに、滑らかになっており、高域の伸びや低域の沈みこみについてもより表現力を高めることができました。これらを特定の画期的な革新ではなく、高音質化のための細かな改善の地道な積み上げで実現したのがポイントです。

それによって具体的にどのジャンルが良くなったといったことはありますか?

佐藤:先代モデルは生の楽器はもちろん打ち込み系の音の良さも高く評価していただいていましたが、新モデルではこれまで以上に生楽器演奏の音質が大きく向上したと考えています。もちろん、全てのジャンルで音質の向上を実感いただけるはずです。

新モデルには『DMP-Z1』で使われている技術が多数盛り込まれているとのことですが、具体的にはどういった点に使われているのでしょうか?

佐藤:最も大きなところでは電源ですね。『DMP-Z1』のように3系統のバッテリーセルを入れて……みたいなことをやるとああいう大きさになってしまうのでやりませんが(笑)、そこで得たノウハウを活かしてデジタル電源の強化を行っています。

より具体的には『DMP-Z1』と同じく、電源回路に巻線コイルを採用しました。数値的には2019年に発売した『NW-ZX500』などでも使っている積層コイルの方が優秀だったのですが、実際に音を聞き比べてみると巻線コイルの方が良かったからです。音を聞き比べて部品の選定をするというやり方はこれまでもずっとやってきたのですが、今回、デジタル電源部分にもそれを適用しています。また、バッテリーと基板を繋ぐケーブルにOFC(無酸素銅)を採用しました。

インタビュー風景の写真
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関根:普通、バッテリーにOFCケーブルを使うなんてことはないので、製造をお願いしているパートナーさんにかなり無茶なお願いをして、専用に対応してもらいました。また、コンデンサーも従来モデルで使っていたFTCAP(高分子コンデンサー)をこの製品から新世代のもの(FTCAP3)にしているのですが、ウォークマンに使うということでこちらも特別にチューニングし、良いものをさらに良くして使っています。

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佐藤:ちなみに先代モデルではこのFTCAPの第一世代のものを使っていて、これが『DMP-Z1』で第二世代(FTCAP2)となり、今回、さらに進化させた第三世代のものを載せています。この開発にはものすごい時間と手間をかけていて、社内のHi-Fiチームのもと、これまでのノウハウを詰め込み、たくさんの試作を重ねて最終的にこのかたちに作り上げていきました。個人的にとても思い入れの強いパーツの1つですね。

そしてこの製品ではさらに、大きな脚付きのコンデンサーを入れています。これはずっとやりたくて、実は2015年に発売した『NW-ZX2』の時にも挑戦しているのですが、その時はウォークマンのサイズに落とし込むことができず断念せざるを得ませんでした。その後、『DMP-Z1』でやっと実現することができたのですが、今回、パートナーさんが新しい大容量・高効率の脚付きコンデンサーを作っているということを聞きつけ、それをウォークマン向けに最適化して搭載しています。

脚付きのコンデンサーというのは音質面で有利なのですか?

佐藤:そうですね。ウォークマンのような小型機器で利用する表面実装用のコンデンサーはその性質上、薄く、小さくせねばならないため、その分、音質にも若干ですが影響が出てしまいます。ただ、脚付きコンデンサーはものすごく場所を取ってしまうので、この製品では電源の大元のところに1つだけ使うことにしました。でも、それで充分すぎるほど大きな貢献をしてくれています。

インタビュー風景の写真
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しかし、見るからに大きなコンデンサーですが、これを搭載するのは大変だったのではないですか?

佐藤:実はすでにデザインがほぼ固まった段階でこの脚付きのコンデンサーのサイズを大きくしたので、デザイナーには迷惑をかけてしまいましたね。先にお話したように、設計の初期段階から脚付きコンデンサーを搭載することは決めていたのですが、当初はもう少し径の小さなものを使う予定だったんです。ところが試作の途中、パートナーさんが径の大きなものも作ってくれて……それがあまりに良くてやっぱりこっちを載せよう、ということに(笑)。

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デザイナーとしては、その方針転換を聞いてどう思われましたか?

横山:ふだんの開発では製品の方向性や仕様がある程度固まってからデザインに取りかかることが多いのですが、この製品では初期段階からデザイナーが開発に参加しています。そのため、設計チームのメンバーが語る高音質への思いやそのための手法を細かくヒアリングし、対話を重ねてそれらを最大限にいかすかたちでデザインをまとめようと当時も試行錯誤を重ねていました。ですので、この変更についても佐藤が言うほど急な変更で困り果てたということにはなっていません。むしろ、脚付きのコンデンサーの部分を象徴的に隆起させるといったアイデアも提案するなどしていたくらいです。なお、最終的には脚付きのコンデンサーの位置を調整し、本体の厚くなっている部分を少し長くするというかたちで対応しています。

これらの工夫によって、具体的にはどう音がよくなったのでしょう?

佐藤:音質はいろいろな部分の組み合わせで決まってくるので、個々の効果は説明しにくいのですが、1つひとつ部品を交換して実際に音を通し、それを聞き比べて選んでいくという方法で音質を詰めていきました。結果、極めて自然で作り物感のない、Signature Seriesが目指す「アーティストの伝えたい音楽の感動や空気感を再現する」にさらに一歩近づけたと感じています。

ちなみにここまでのお話は、『NW-WM1ZM2』だけでなく『NW-WM1AM2』も同様なのでしょうか?

関根:はい。そこは全く同じです。モデル間で差をつける事も考えましたが、可能な限りより良い音楽体験を提供したいと思い、両モデル共通で搭載する事にしました。

佐藤:結果としてハードウェアの差異は先代モデルよりも少なくなりました。先代『NW-WM1A』は元気の良いサウンドと評価されることが多かったのですが、『NW-WM1AM2』はそこから少し大人になった、上質感も備えた音になっています。ぜひ両者を聞き比べていただきたいですね。

POINT 03

純度99.99%の無酸素銅シャーシ&
極太キンバーケーブルが
Signature Series
『NW-WM1ZM2』の
アドバンテージ

インタビュー風景の写真

さて、そうなると気になるのが、Signature Series『NW-WM1ZM2』ならではの作り込みです。具体的にはどういった点が『NW-WM1AM2』と異なり、それによってどういった音の違いが生み出されているのでしょうか?

佐藤:まず最も大きな違いはシャーシの材質です。先代モデルと同じく『NW-WM1ZM2』が無酸素銅に金メッキを施したものを、『NW-WM1AM2』がアルミニウムを使っています。ただし前者は無酸素銅の純度を99.96%から99.99%にまで高めており、それによって伸びのある高音、クリアで力強い低音の再生を実現しています。

たった0.03%でそこまで変わるものなのですね。

佐藤:そうなんです。0.03%くらいで何が変わるんだと思われそうですが、聴き比べてみると全然違っていて(笑)。これも『NW-WM1Z』の後継機では絶対にやろうと長らく仕込んでいました。

インタビュー風景の写真
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その他、シャーシについて工夫したこと、苦労したことがありましたら聞かせてください。

横山:デザイナーからは『NW-WM1ZM2』のリアカバーを、プレス成形ではなく、アルミ切削で作ることを提案しました。先代『NW-WM1Z』では背面の内側にアルミ製のリアパネルを配置していたのですが、それを精度の高い切削部品にしてボディの剛性にも寄与するように組み付けたら音が良くなるのではないかと考えたのです。デザイン的にも切削加工でないとできない形状にでき、目を惹く特徴になりますしね。

佐藤:これも実際にやってみたら確かに音質が向上して、私としてはうれしい結果でした。でも確かに経験上、ボディは切削でやった方が音は良くなるんですよね。鋳造と比べて、ギュッと締まった塊から削り出しますから。それは今までの機種での実験でも検証されています。

シャーシ以外の2製品の差異についても聞かせてください。

佐藤:先代『NW-WM1Z』では、アンプとヘッドホンジャックを繋ぐ内部配線を米KIMBER KABLE社のキンバーケーブルにするということをやっており、当時も「Engineered with KIMBER KABLE」特有のBraid(編み)構造によって、高周波レンジまでインピーダンスがフラットに伸び、残響音や余韻などをよく再現できると謳っていました。今回、そのケーブル径を、Signature Seriesのヘッドホン『MDR-Z1R』などに使用できる「MUC-B20SB1」と同じ、より太い4本編みケーブルにしてさらなる音質向上を図っています。

この小さなボディに、太いケーブルを入れるのは大変だったのではありませんか?

佐藤:はい。メカ開発担当に、製造時の開発効率も考えながら、きちんと無理なく収まるようなやり方を検討してもらいました。実はここにもかなりこだわっていたので実現できたのはとてもうれしかったです。

これによって、アンプの根本から耳元まで全く同じ仕様のキンバーケーブルで繋げることができるようになったのですが、こんなことができるのはヘッドホンとプレーヤーの双方を作っている我々くらいでしょう。『MDR-Z1R』は音に対する思想も同じですから非常に相性がいいんですよ。『NW-WM1ZM2』の音質の良さを最大限に引き出す組み合わせのひとつとしておすすめしたいです。

ちなみに『NW-WM1AM2』は従来通りのOFCケーブルを使っているのですが、これはこれですごく良いものなんですよ。

POINT 04

全ての部品を繋ぐ
はんだの進化によって
音質を底上げ

今回、目に見えない改善点として、ソニーの多くのAV機器で使われている「高音質はんだ」が進化したと聞きました。具体的にはどういった改善が施されているのでしょうか?

佐藤:『DMP-Z1』の時は、手作業ではんだ付けする音質の重要部分に関しては、金を添加した「高音質はんだ」を利用していたのですが、基板上に部品を実装する工程で使える高音質はんだについては開発が追いついていませんでした。その開発がついに完了し、この製品から初めて、全てのはんだに金入り高音質はんだを使えるようになりました。

インタビュー風景の写真
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はんだの開発というのはそんなに大変なことなのですか?

佐藤:それぞれの材料をどれくらいの比率で混ぜるかによって特性が大きく変わってしまうので、試作して、使ってみて、また試作して……というトライ・アンド・エラーに膨大な手間がかかります。また、音質的な特性だけでなく、高音質モデル特有の大きな部品をしっかり固定できる強度や信頼性の高さも求められるため、その試験にもけっこうな時間と費用がかかってしまうんです。そのため、採用できる品質までもっていくことが難しかったのですが、『DMP-Z1』の発売から3年かかってやっと満足いくものを作りあげることができました。

それによってどれくらい音質が変わるものなのでしょうか?

佐藤:音の広がり、透明感が大きく高まっています。全体的な音質が一段底上げされたような効果を感じていただけるはずです。

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はんだを良くするだけでそこまで大きな違いが生まれるものなのですね。

関根:全ての電気部品ははんだで接続されているのですが、その効果は我々の想像を超える物でした。実際にはんだ違いの試作機を作って聞き比べを行ったのですが、はっきり差が分かるくらい違いました。高音質はんだの開発には時間がかかりましたが、苦労して作り上げた甲斐はあったと思っています。

その他、高音質化のための取り組みについて特筆すべきことがありましたらお話ください。

佐藤:これも『DMP-Z1』由来のものなのですが、水晶発振器の端子部分を金メッキにすることで音の分離感、低音の質感を向上させています。元々は部品メーカーさんが耐久性を上げる目的で金メッキにした部品なのですが、比較してみたところ音もよくなることがわかったので、新モデルにも搭載することを決定しました。

あと、細かいところでは、水晶発振器の電源も別にしました。これは社内でICレコーダーをやっているチームのメンバーからアドバイスを受けたもので、試してみたらすごく良かったんですよね。ウォークマンの開発をしているフロアにはいろいろな分野のすごい人たちがいて、これに限らず、今までソニーが培ってきたノウハウを共有してもらえる環境があります。ですので、この製品はあくまでポータブルプレーヤーなのですが、ソニーのオーディオ全般のノウハウをかなり活かしたものになっています。

ソニーならではの、ソニーだからこそできるものづくりと言えそうですね。

佐藤:そうですね。今、お話ししたのは技術的なことですが、それ以外にも音質について相談にのってもらえたことにも助けられました。先ほどから何度か実際に音を聞き比べながら部品を選んでいったというお話をしていますが、音質の良さは数値で評価できない部分が多いんです。この部品に交換したらオーディオレベルが27から80に上がったので採用、みたいなことが言えないんですね。

そういうところは当然、我々が耳で聞き比べるかたちで比較していくのですが、困ったことに苦労して作った部分って、自分たちで試聴すると良く聞こえちゃうんですよ(笑)。それをどんなに俯瞰しようとしても限界があります。でも、ソニーには長らく高音質モデルに取り組んできたエンジニアがたくさんいますから、そういう方々にも試してもらって音質を詰めてくことができました。

POINT 05

DSDリマスタリングエンジンなど
信号処理でも音質を錬磨
DSEE Ultimateは対
ロスレスコーデックの
音質が向上

『DMP-Z1』譲りの高音質化という観点では、「DSDリマスタリングエンジン」がウォークマンとして初めて搭載されました。これはどういったものなのでしょうか?

関根:「DSDリマスタリングエンジン」は、あらゆる音源を11.2MHz相当のDSD信号に変換し、より滑らかな、アナログに近い音に変換してくれるというものです。『DMP-Z1』では最大5.6MHz相当だったものが、本機では11.2MHz相当までの変換を行えるように進化しました。

信号処理による高音質化という点では、DSEEも最新の「DSEE Ultimate」になりましたね(先代モデルは「DSEE HX」搭載)。

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田中:DSEE Ultimateは、AI技術を駆使することで、曲のタイプを自動で判別し、高音域に加えて、微細な音まで高精度で再現するというものです。本機に搭載したのは、既存のウォークマンに搭載されているものと比べて、CD音質相当のロスレスコーデックに対するアップスケーリング精度が向上した最新バージョンとなっています。

関根:元々、圧縮音源を対象にした機能だったDSEEを、今回、ロスレス音源をターゲットに進化させたところがポイントです。昨今、ロスレス音源を扱うストリーミングサービスが増えてきているので、ユーザーメリットは大きいのではないかと考えています。

POINT 06

ソニーのAndroid OS搭載
ウォークマンは
“これまで以上”の
高音質を約束する

高音質ハードウェアについて一通り聞かせていただいたところで、続いてはフラッグシップモデルでは初となるAndroid OS搭載について聞かせてください。Android OSを搭載したことによって、さまざまなオンラインサービスを利用できるようになった反面、音質的にはネガティブな見方をしているユーザーが多いように感じられます。このあたり、皆さんはどのように捉えているのでしょうか?

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関根:ご存じのようにソニーでは2019年に発売した『NW-ZX500』『NW-A100』からAndroid OS搭載を再開しており、今回もその知見とノウハウを活かした設計を施しています。Android OS搭載で不安を感じている方々の声を聞いていると、Android OSを動かすための回路を追加することによるノイズの増加を不安に感じている人が多いようですね。たしかに、Android OSを動かすには高いパフォーマンスのプロセッサーが必要になるため、それだけノイズが増えるというのは事実です。実際、ウォークマンでは『NW-ZX500』でプロセッサーをシールドしてノイズを抑え込むなど、さまざまな工夫でAndroid OSの利便性と高音質を両立させてきました。

佐藤:『NW-ZX500』では、プロセッサーを無酸素銅ではない銅に金メッキした金属のブロックで覆い、ブロック自体の重さも影響させるかたちで音質向上を目指しました。新モデルではこのアイデアをさらに一歩先に進め、無酸素銅削り出しに金メッキを施したブロックでプロセッサー部分をがっちり囲うことで、グランドの強化とノイズ遮断を行っています。その効果は実際に音を聴いてみていただければ瞭然。極めてクリアな音をお楽しみいただけます。

ちなみにソニーはこれまで先代『NW-WM1Z』など、Android OSを搭載していないモデルにも高性能なプロセッサーを搭載していました。当然、必要なノイズ対策はきちんと施しています。ですので、Android OS搭載になったからと言って、特別なことをしたという意識はないんですよね。最新モデルの工夫もあくまでこれまでの延長線上にあるという認識です。

インタビュー風景の写真
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なるほど。Android OS搭載以前から高性能なプロセッサーへの対策は確立しており、今回もそれを順当にレベルアップさせていった、つまり問題ないということですね。

関根:その通りです。その上で、何より重要なのは、Android OSで正しくハイレゾを扱えるようにすることです。実は現行のAndroid OSでは、扱えるサンプリング周波数の制限によりハイレゾ音源を劣化なく再生する事が難しいという課題があります。従来のAndroid OSには最大48Hz/16bitの出力制限があるため、ストリーミングサービス側がハイレゾに対応していても、Android OS搭載プレーヤーでは正しくハイレゾ音質で再生できない(ダウンコンバートされてしまう)問題がありました。

そこで我々は『NW-A100』『NW-ZX500』の時にハイレゾ音源を劣化なく再生できるよう、独自の信号パスの設計を行いました。今回のモデルにももちろんこの内容は組み込まれており、W.ミュージック及びハイレゾストリーミングサービス等のアプリでも音質劣化なく、正しくハイレゾ音源を再生することができます。全てのサービス(アプリ)に対応しているわけではありませんが、メジャーなサービス上で問題ない事を確認しています。

田中:なお、各種ストリーミングサービス対応に加え、ソニーが推進する立体音響技術「360 Reality Audio」にも対応しており、専用アプリ「Headphones Connect」を使った個人最適化でよりリアルな臨場感をお楽しみいただけます。

その他、Android OS対応に際してこだわったところなどありましたらお話ください。

佐藤:Android OS搭載でも従来機種と同じくボリュームを120段階で調整できるようにしています。しかも、OS内部では最大ボリュームで固定し、デジタルアンプ「S-Master」側からパルスハイトボリュームで絞るという、かなり真面目なボリュームコントロールを行っています。

POINT 07

連続40時間再生&
USB Type-C端子搭載など
充実基本機能で
ふだん使いも快適に

ここまで、『NW-WM1ZM2』『NW-WM1AM2』の音質に迫った話をたくさんお伺いしてきましたが、ウォークマンはふだん使いするものですから、バッテリー駆動時間など、ポータブルプレーヤーとしての基本性能も軽視できません。このあたりはどのように作り込まれているのでしょうか?

関根:まずバッテリー駆動時間ですが、プリインストールされている音楽再生アプリ「W.ミュージック」では、消費電力を抑える専用設計をしており、96KHz/24bitのハイレゾ再生時でも約40時間の連続再生が可能です。

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先代モデルが約33時間だったので、それよりもだいぶ伸びましたね。

関根:やはりウォークマンと名乗る以上は専用機ですからバッテリーの持ちにはこだわっています。なお、W.ミュージック以外のアプリを使った再生においては、W.ミュージックのような電力を抑えた再生ができません。そこで、過去のウォークマンの中でも最も大きなバッテリーを搭載することで、W.ミュージック以外のアプリを使った音楽再生でも約18時間の連続再生を可能としました。また、使用していない時(待機中)のバッテリー消費を抑える目的で、自動電源オフという機能を搭載しています。電源が切れるので起動に少し時間はかかりますが、気がついたらバッテリーが切れていたという事態を防げます。

佐藤:そして外部接続端子がWM-PORTからUSB Type-C端子になりました。その利点はなんと言っても汎用性ですね。ほとんどのAndroidスマートフォンと同じ充電器、ケーブルがそのまま使えるので、ウォークマンの充電のためだけに専用のケーブルを持っていく必要がなくなりました。

関根:もちろん充電速度も体感できるくらい速くなっています。さらにデータ転送速度も先代モデルと比べて速くなっていますので、コンテンツ転送もスムーズに行えます。

接続性についてはいかがでしょうか?

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佐藤:そこは大きく変わっていません。接続安定性の高いΦ4.4mm(JEITA統一規格)バランス接続を採用するほか、ワイヤレス(Bluetooth)でもハイレゾ音質を楽しめるLDACに対応しています。また、本機をPCなどに接続し、外付けのUSB DACとして使えるようにする機能も継続して搭載しています。

POINT 08

持ち歩きたくなる
大きさと重さを見極め
快適に「傾聴」したくなる
プロダクトをデザイン

インタビュー風景の写真

新モデルのデザインについても聞かせてください。今回、全体の印象はそのままに大画面化などが行われています。全体的にはどういった方針でデザインを練り込んでいったのでしょうか?

横山:先ほども説明したように、今回の開発ではデザイナーが初期から参加したため、開発者の音質に対する想いや、高音質化のための要素を聞かせてもらい、それをどのように具象化していくかを考えるかたちでデザインを進めています。そうした中、どのくらいのサイズまでにまとめれば、ユーザーが持ち歩いてくれるのかということを考えました。

何かモチーフにしたものはあるのでしょうか?

横山:イメージしたのは私がふだん持ち歩いている小さな手帳でした。従来モデルよりも一回り大きいくらいのサイズだったのですが、最近はスマートフォンもだいぶ大きくなってきていますし、このくらいのサイズであれば持ち歩く気になるのではないかな、と。

その上で、今回はAndroid OSも搭載されるということで、画面サイズはできるだけ大きくしたいと考え、より大きな5.0型タッチパネルディスプレイを搭載しました。

高音質化を念頭に置きつつも、持ち運びできるサイズ感にまとめていったのですね。

横山:はい。その上で、先ほどもお話しした背面の切削アルミパネルと、サイドから見たときの背面の膨らみを主な特徴としてデザインしました。ここまでで説明された機能群をこのボディに注ぎ込みつつ、それらを隠すのではなく、できる限り積極的に表出させ、音質のために作られたこのプロダクトをストレートに表現しつつデザインすることを心がけています。

佐藤:なお、この際、『NW-WM1Z』と比べてボタン配置が若干上に移動しており、上端の隆起した部分に最上段の電源ボタンが配置されるかたちとなりました。

横山:結果、本体を握った時、本体右側面の指が掛かる場所に最も利用頻度の高い音量の「+」と「−」のボタンが配置されることになり、ブラインドでの操作性が高まっています。また、左側面に配置されているHOLDスイッチについても先代モデルから形状を変更し、間違いなく操作できるように工夫しています。

画面サイズを大きくしたことにはどういった狙いがあるのでしょうか?

田中:冒頭でもお話ししましたが、昨今、音楽を「傾聴」するという心構えで楽しむ人が増えています。そうした時、画面上、ストリーミングアプリのリストから聞きたい曲を選択したり、細かく音質を調整することがストレスになってはいけません。

確かに、昨今のストリーミングアプリは大画面スマホを前提としたUIを採用していますから、小さな画面ではかなり操作しづらそうですよね。大画面化によって操作が快適になることで、「傾聴」に集中できるというのはメリットだと感じました。

横山:その上で重さですね。重さを考えないで良いのであれば、もう少しサイズを大きくして、デザインで電流の流れを表現するなど、機能の表現をさらに押し進めることも考えられたのですが、500g、ペットボトル1本分の重さを超えるのはどうしても避けたいという思いがあり、機能表現だけよりも手に取りたくなる大きさ、重さを重視し、今回のデザインに行き着いています。

POINT 09

まずは手に取って、
新しいフラッグシップの
音と手触りを
体験してみてほしい

最後に読者に向けてメッセージをお願いいたします。

佐藤:大変長らくお待たせいたしました。生まれ変わった『NW-WM1ZM2』『NW-WM1AM2』では、新開発の高音質はんだとコンデンサーで従来機種からの延長線上にある音質向上が実現できたと思っています。取扱店舗などでその音を聴いていただき、気に入っていただければうれしいです。ストリーミングにも対応した新しいフラッグシップウォークマンをどうぞよろしくお願いいたします。

関根:最近は定額のストリーミングサービスでロスレスやハイレゾ楽曲を聴けるようになってきました。こうした体験がこれまでと異なっているのは、圧縮してない音源、しかも膨大な量を、手軽に楽しめるということ。自分の好きな音楽の音質体験が向上すると、その音楽がより好きに、より楽しくなります。『NW-WM1ZM2』および『NW-WM1AM2』は、そんな体験を提供できるものに仕上がったという自負があります。この製品を通して「音楽って楽しいな〜」って感じていただけたら幸いです。

横山:商品開発の起点から開発メンバーと対話を重ね、最大限音質を追求しながら、自然に身体の延長として扱えるようにデザインしました。このことによって最高音質と一体となる体験を提供できたらと思っています。ベースになる基本構成の工夫はもちろん、手に取った時の手触りにもこだわり、細部のディテールまで吟味を重ねた形状になっています。またプロダクトを眺めた時に、あらゆる面でハイライトが美しく流れるようにデザインしてあります。音質と共に、こういう点にも所有する喜びを感じていただけたらと思います。

田中: 『NW-WM1ZM2』は、先代モデルから約5年、Signature Seriesの更新という非常に高いハードルを超えて登場した新フラッグシップウォークマンです。CD音源から最新のハイレゾストリーミングまで全ての音源に対応し、ポータブルオーディオ最高峰の音質を目指して設計された、ウォークマンの歴史の中でも、とりわけ大きな到達点とも言えるプロダクトだと考えています。『NW-WM1AM2』も、このフラッグシップモデルとの共通設計によって、非常にパフォーマンスの高いプロダクトにすることができました。

音質はもちろんのこと、両機の持つ筐体の質感からも、その雰囲気が伝わると思いますので、まずはぜひ手に取ってトータルで商品をご体感いただければと考えています。


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ウォークマンWM1シリーズ[メモリータイプ]
NW-WM1ZM2

「音」に込められた想いまで届ける。厳選された高音質パーツがより豊かで広大な音場を生み出す、無酸素銅切削筐体モデル

2022年3月25日発売予定

商品情報

『NW-WM1AM2』製品画像

ウォークマンWM1シリーズ[メモリータイプ]
NW-WM1AM2

「音」に込められた想いまで届ける。透明感のある高音質サウンドに浸る、アルミ切削筐体モデル

2022年3月25日発売予定

商品情報

デジタルミュージックプレーヤー
DMP-Z1
独立バッテリー電源システムや高品位なアナログオーディオ出力ラインなどを採用した、新しいコンセプトのデジタルミュージックプレーヤー
ステレオヘッドホン
MDR-Z1R
追求したのは空気感の表現。ソニー最高峰の技術を注ぎ込んだフラッグシップモデル
ステレオヘッドホン
IER-Z1R
空気感までも描き尽くす高音質。ソニー最高峰インイヤー
DAC内蔵ヘッドホンアンプ
TA-ZH1ES
新開発の「D.A.ハイブリッドアンプ」を搭載し、最新規格のバランス端子など、さまざまなヘッドホン端子に対応したDAC内蔵のヘッドホンアンプ

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