商品情報・ストアデジタル一眼カメラ αα99 開発者インタビュー
第3回 AF/トランスルーセントミラー・テクノロジー編 被写体の一瞬の変化も逃さないα99の「デュアルAF」システム

“α”のアイデンティティのひとつ「トランスルーセントミラー・テクノロジー」。ミラーを動かすことなく常にイメージセンサーと位相差AFセンサーへと光を導くことにより、被写体にレンズを向けた瞬間にフォーカスを合わせ始め、被写体が動いても正確に合焦しつづけることができる。α99は常時駆動する高速・高精度な19点の位相差AFセンサーモジュールにくわえイメージセンサー内に新たに102点の位相差AFセンサーを搭載。合計121点の位相差AFセンサーが広大な“面”として駆動することで、動き続ける被写体にも正確に追随し続け、シャッターチャンスを逃さない。

102点ものAFセンサーを用いる新たなオートフォーカス技術はどのようにして生み出され、α99の撮影に何をもたらすのか。α99のオートフォーカスシステムとトランスルーセントミラーのハードウェア、ソフトウェア開発を担当した陰山、水上に話を聞く。

“点”と“面”を組み合わせた広大で緻密(ちみつ)なフォーカスエリアが一瞬のチャンスを写真に残す

──実績のある位相差AFモジュールに像面位相差センサーが組みあわさることで、α99のAFはどう変わるのでしょうか。

陰山:α99に搭載された19点の位相差AFセンサーモジュールは、単体でも速度・精度ともに35mmフルサイズセンサーにふさわしいAF性能を備えています。ただ、AFセンサーモジュールはカメラ内での配置場所などの制約があり、AFセンサーの配置場所や数が限られるため、被写体を捉えるフォーカスエリアの大きさや形も限定されたものとなります。いっぽう、像面位相差AFセンサーは、大きなイメージセンサの撮像面を使用できるため、フォーカスエリアの自由度は格段に向上します。つまり、位相差AFセンサーモジュールと像面位相差AFセンサーを組みあわせて動作させることで、高速で高精度、なおかつ被写体を捉え続けることができるオートフォーカスが実現できます。

水上:世界初(※)の「デュアルAF」システムは、19点のAFセンサーモジュールと、“面”のように動作する102点の像面位相差AFセンサーが同時に駆動します。センサーの数が限られている従来のAFセンサーモジュールだけですと、測距“点”上に被写体がない場合はフォーカスが合わない“抜け”が発生してしまうことがありました。「デュアルAF」システムでは“面”の役割を持つ像面位相差AFセンサーが被写体を捉え続けます。さらに広い“面”のどこかに被写体がかかっていれば、被写体が動いても高精度にフォーカスを合わせ続けることができます。“点”と“面”を組み合わせたα99の「デュアルAF」は、激しいスポーツや動物など動きが早い被写体を写真に収めるときに重宝するでしょう。
*フルサイズセンサー搭載レンズ交換式デジタルカメラにおいて(2012年10月発売予定)

妥協や現状維持をなくすことで誕生した新たなオートフォーカスシステム

──画素が敷き詰められているイメージセンサーにAFセンサーを埋め込む。言葉にすると簡単ですが、どのように実現したのでしょうか?

陰山:イメージセンサーは光を取りこむための、デジタルスチルカメラにとってはいわば最重要部ですから、撮影画質に影響しないようにAFセンサーを埋め込む作業は試行錯誤の連続でした。開発途中からはイメージセンサーの開発者や信号処理技術者と協力することはもちろん、オートフォーカス開発メンバーもイメージセンサーを猛勉強して、最終的に画質もオートフォーカス性能もどちらも満足いく形で102点の像面位相差AFセンサーを埋め込むことができました。

──AFセンサーが19+102点もあることで、センサーが取得したデータの処理やオートフォーカスの制御処理も変化したのでは?

水上:オートフォーカスの制御には常に膨大な演算処理が必要になります。たとえば19点のAFセンサーモジュールのみを搭載するα77でも、マイコンに割り当てられていた演算性能をフルに使用していました。102点の像面位相差AFセンサーが加わったα99はまさに桁ちがいの情報量で、今までのオートフォーカス制御やデータ処理とは比べられるレベルではありませんでした。

──しかもAFセンサーモジュールと像面位相差AFセンサーが“デュアル”で同時に駆動する。

水上:センサーの制御やデータの処理には今までの演算手法を高速化するだけでなく、新しい考え方や工夫が必要になることがわかりました。そこで、AFシステムを全面的に見直すことで、必要な処理を実現しました。像面位相差AFセンサーから得られるデータは質、量ともに素晴らしいというよりスゴイ!というほどのものです。測距性能が1段上がったような、別の次元にはいったような感覚を味わいました。

α99の高速・高精度なオートフォーカスが動画撮影の表現を変える

──デジタル一眼カメラを使った動画撮影は、階調表現の豊かさや交換レンズによって変わる表現力がとても魅力的で、カメラや映像が好きな人なら誰もが挑戦してみたい撮影のひとつです。しかし一部のデジタル一眼カメラは構造上、動画撮影時のオートフォーカスを不得手として、せっかくの撮影チャンスをあきらめなければならないこともありました。

水上:α99をはじめとする「トランスルーセントミラー・テクノロジー」を採用した“α”シリーズは動画撮影中も写真を撮るときと同じように、常に高速なオートフォーカスを使用できます。ふだんはビデオカメラで撮影していてα99で初めてデジタル一眼カメラの動画撮影に挑戦する人も、フォーカス速度に不満を感じることなく撮影に集中することができるでしょう。α99を被写体に向ければ、素早く合焦して一瞬の表情の変化も映像に残すことができます。

陰山:写真は一瞬を切り取るため瞬発力のあるオートフォーカスが求められますが、動画はジワッとフォーカスが合うほうが自然な雰囲気に見えますから、α99は動画撮影時のオートフォーカスの反応速度を3段階から選べるようになっています。動きの速い被写体、たとえば近づいてくる車や自転車の映像を撮るときは一瞬で合焦するように、人物を撮影するときは遅めの合焦で落ち着きのある映像にと、フォーカスの反応速度の違いによって映像に新しい表現が生まれるかもしれません。

新しいオートフォーカスは“α”から始まる

──“α”のフラッグシップが世界初(※)のAFシステムを搭載する、ということに、感慨深い想いを抱く方もきっといらっしゃると思います。

陰山:そうですね。一眼レフカメラの本格的なオートフォーカス技術は、かつてミノルタが“α”において初めて実用化しました。そしてイメージセンサーやCPUといったソニーの技術があわさることで、カメラそのものはもちろん、オートフォーカスのさまざまな技術がステージを駆け上がるようにレベルアップしました。像面位相差検出もそのひとつです。像面位相差検出はオートフォーカス技術に関わる者として実用化したかった技術。α99という“α”の頂点、象徴ともいえるカメラで「デュアルAF」システムの立ち上げに参加できたことはとても幸運だと感じています。

水上:先端技術である像面位相差AFの搭載、そしてフラッグシップ機にふさわしいスピードと精度を実現するうえで、従来のAF処理の枠を飛び越えた膨大な情報量の使いこなしには本当に頭を悩ませました。しかしその結果として、新しいオートフォーカスの技術を開く、これからの基準となるようなシステムができたと思います。

*フルサイズセンサー搭載レンズ交換式デジタルカメラにおいて(2012年10月発売予定)

実績のあるAFモジュール方式と最新の像面位相差AF方式を組み合わせることで、α99の「デュアルAF」システムはオートフォーカスに新しい道を拓(ひら)いた。高速・高精度で、かつてないほど追尾性に優れたオートフォーカスは、一瞬のシャッターチャンスを確実にモノにすることを求められるフラッグシップ機にふさわしい。またひとつ、新たな時代のオートフォーカスが“α”で花開いた。

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αはソニー株式会社の登録商標です。