──大きな撮像素子がもたらす明るく繊細な色彩表現など、デジタル一眼カメラの動画は写真が動き出したかのような美しい映像が魅力です。
花田:α99はフラッグシップ機にふさわしい高品位な静止画を提供するカメラであると同時に、フルサイズセンサーの持つ映像表現の幅を生かした動画性能も兼ね備える必要がある、そういう位置づけのカメラとして開発当初からとらえていました。そこでα99の動画画質の設計においては、社内のビデオカメラチームとの連携を図り、ビデオ視点でのチューニングも取り入れることでその完成度を高めています。たとえば顔認識を基(もと)にしたAE/AF/AWB制御、逆光補正やDレンジオプティマイザーといった階調処理、そしてフルハイビジョンの60p出力が提供する動画の滑らかさは、TVをはじめとする 外部出力モニター側の画づくりを加味した動画画質としての最適化を行なっています。また、“ハンディカム”の手ブレ補正(アクティブモード)を取り入れることで、動画撮影特有のブレに対しても非常に強くなっています。
──表現の手法も写真と動画ではちがいますよね。たとえば写真のフォーカスは一瞬で合うことを求められますが、動画では少し時間をかけてジワッという感じで合うほうが自然に見えます。
花田:フォーカス速度に代表されるように、技術だけでなく表現の方法やノウハウも静止画と動画ではちがいますね。長年にわたり映像に携わってきたソニーには“α”だけでなく“ハンディカム”や業務用カムコーダーで培ったさまざまな技術やアイデアがあります。動画撮影におけるAF感度を3段階から選択できるという機能も、本格的な動画撮影においては欠かせません。α99は最高峰の静止画クオリティを実現する一方で、35mm大判センサーの映像表現の可能性を動画性能というベクトルにも引き出したカメラになっています。その画質と性能は、α99での撮影を動画主体に想定されている方の期待にも、十分応えられる仕上がりになっています。