マスターテープに刻み込まれた空気感さえも表現できると言われるハイレゾ音源。そのハイレゾで、生々しい熱量が込められたライブアルバムを聴いたとしたら?
今回『大人のソニー』では、尾崎豊の一人息子でシンガーソングライターとして活動している尾崎裕哉氏に、尾崎豊のライブアルバム『MISSING BOY』のハイレゾ版※を聴いていただくことに。会場は、1984年に尾崎豊が伝説のデビューライブを行った〈新宿RUIDO〉の流れをくむライブハウス、〈新宿RUIDO K4〉。そして裕哉さんは奇しくも尾崎豊の没年と同じ26歳という奇跡のようなタイミング。魂を震わせる歌とパフォーマンスで生涯を駆け抜けた尾崎豊のライブレコーディングを聴き、裕哉さんは何を思ったのでしょうか?
また今回、株式会社アズミックスの代表取締役 落合壽年さんにも楽曲を聴いていただきました。尾崎豊の伝説のデビューライブが行われた1984年当時、〈新宿RUIDO〉で新人スタッフとして働いており、そのライブをはじめ、1985年の代々木オリンピックプール、1988年の東京ドームで尾崎豊のライブを観ていた人物です。
尾崎裕哉
1989年東京生まれ。慶應義塾大学大学院卒。ミュージシャン。父は尾崎豊。
落合壽年
ライブハウスやインディーズレーベルの運営を行う株式会社アズミックス代表取締役。
ステージの上で、自分自身が尾崎豊になったかのような気持ちに。
まず、尾崎裕哉さんには、セカンドシングルであり代表曲のひとつ「十七歳の地図」を聴いていただきました。『MISSING BOY』ですが、「十七歳の地図」が収録されたテイクは1985年11月14日に行われた代々木オリンピックプールでのもの。デビューから間もない尾崎豊による勢いのあるパフォーマンスをハイレゾ音質で聴き、裕哉さんはどのように感じたのでしょうか。
「ハイレゾ楽曲を聴くのははじめてだったので、聴くまでは正直そんなに期待していませんでした(笑)。『そんなに変わらないだろう』と。でも、音量を上げれば上げるほど臨場感が増して、観客側として会場にいる気持ちになるのかと思ったら、まるでステージにいるような気持ちになって驚きました。ドラムも低音が響き、まるで自分の後ろでドラマーが叩いているようだし、途中マイクがハウるんですけど、本当に自分が使っているマイクがハウっているように感じますね。そして尾崎豊の声が、なんだかすごく不思議な気分で...。隣に尾崎豊がいるというよりは、まるで自分で歌っているような、ステージで自分が尾崎豊になっているような気持ちになりました」
そばにいるような感覚ともまた違う、自分自身が尾崎豊になったかのような感覚さえ覚えたという尾崎裕哉さん。
「僕は尾崎豊のライブに行ったことがあるらしいんですけど、やはりとても小さい頃だったので覚えてなくて。そういう意味でも、すごく貴重で良い体験ができた気がします」
「ハイレゾ楽曲というとクラシック音楽の印象があったんですけど、良い意味で今までのイメージが覆らされましたね。自宅の地下にオーディオルームをつくっているようなお金持ちの人が、贅沢な設備で聴くようなイメージがあったのですが、こんな小さなウォークマンやスピーカー、ワイヤレスのヘッドホンで手軽に聴けることに驚きました」
尾崎豊が残した楽曲が父親がわり。音楽だから伝わったメッセージ。
「母はあまり尾崎豊の楽曲を聴かせてくれなかったので、自分でCDラックから取り出して聴いていました。それこそ14歳くらいまでは父親の曲しか聴いていなかったくらいで、ある意味自分のリファレンスなんですよ。自分の父親でありミュージシャンで、音楽といえば尾崎豊。その後AC/DCと出会ってからはギターに走ったんですけど(笑)。子どものころに聴いていた音楽がルーツになるという話もありますが、そういう意味では僕のルーツですね。曲をつくろうと思ったときも、立ち返るのは尾崎豊です」
「『自由はなんだ? 夢ってなんなんだろう?』と考えていた時期、尾崎豊がそんな曲を歌っていたこともあり、歌を聴けば、まるでとなりで助言をしてくれているみたいな感じがあって、すごく助けられたという思いがあります。でも、絶対に尾崎豊って説教臭いタイプだったと思んですよ(笑)。だから、曲を通してのコミュニケーションである意味良かったのかもとも思います(笑)。音楽は言葉だけじゃなくてメロディーがあるから、その分ごまかせる部分があったり、感情に直接訴えることもできる。だからこそ伝わってくるものもありますからね」
「それにしても、ハイレゾ楽曲は贅沢。普通の音源のときもきれいだなと思っていたけど、それぞれの楽器の旋律がこんなにも分離したきれいな音だったと分かると『尾崎豊はスタジオでレコーディングしていたとき、こんな感じで聴いていたのかな』なんて考えますが、そんな音を聴いて日常を過ごせるというのはすごく贅沢ですよ。もし10年前にハイレゾ楽曲があったら、僕はもっと音楽うまかったかもしれないな...と思いました(笑)。この音ってこうやってつくってるんだとハッキリ伝わってくるので」
父親と息子の関係としてだけでなく、ミュージシャンとしても尾崎豊の楽曲が原点だという尾崎裕哉さん。
「僕の声が尾崎豊に似てると言われるのは、やはり半分は遺伝だと思うんですけど、もう半分はずっと彼の歌を聴いてきたからなんですよ。声は似ても息遣いが自然と似ることはないと思うのですが、細かいブレスのタイミングなんかは、やはり何度も聴いてきたから似ているんです。今ハイレゾの音源で聞くと、さらにはっきりわかるので驚きです。ソニーさんがもっと早くこれを出してくれていれば、ボーカルスタイルも楽に勉強できたんじゃないかなと思います(笑)。本当に今、これを使える世代が羨ましいですよ」
「目の前に尾崎豊がいて歌っているんじゃないかって...」
次に楽曲を聴いていただいた落合さん。『MISSING BOY』に収録されている「Teenage Blue」を、実際にその目と耳で、現場で体感していた落合さんにも、ハイレゾ音質で聴いていただきました。
「正直なところ、ライブ当日のことってそんなに覚えてないかも...なんて思っていましたが、歌唱の声や間奏で入ってくるギターを聴くと、非常に臨場感があって。当時の記憶がよみがえるようでした。でも客席にいる自分が浮かぶというよりは、まるでステージ上に自分も立っているような感じがしましたね。目の前に尾崎豊本人がいて歌ってるんじゃないかというくらいで」
「私は何度か尾崎豊のライブを観ているのですが、とにかくオーラがすごかったですね。パフォーマンスも強烈なインパクトがあって、1984年はずっと尾崎さんの余韻が〈新宿RUIDO〉に残っていたくらいです。新曲がリリースされるたび、何か新しい動きがあるたび、スタッフの間で何度も話題に上がりました」
『MISSING BOY』収録曲のうち3曲を会場で聴いている落合さん。やはりデビューライブの余韻を胸に、その後の尾崎豊の活動を追いかけていったのだそう。
「自分が働いているライブハウスで伝説のライブをやったアーティストをずっと見ていきたいというのもあったし、ファンになったということもありました。当時尾崎豊は19歳だったのですが、代々木でのライブは『あんなデカい会場でどんなパフォーマンスをするんだろう』とわくわくして観に行きました。今回ハイレゾ音質で聴いて興奮がよみがえりましたね」
今や〈新宿RUIDO K4〉ほかライブハウスやレーベルを運営する社長、落合さんにとって、"ハイレゾ"とは。
「ハイレゾ音質は本当に良い音なので、とにかく浸透していってほしいですね。テレビも数年前にHDになりましたが、もうそれ以前の映像には戻れないですよね。音楽は一度MP3が普及してみんなの感覚が落ち着いてしまいましたが、ハイレゾ楽曲はそれを上げるチャンスになる。だからハイレゾ音質はオーディオマニアだけのものだけじゃなく、気軽に聴けるようになって大衆化していって欲しいですね」
ハイレゾ音質で聴けば、アーティストの存在をすぐ近くに感じる。
ハイレゾ音源がよみがえらせた、彼にまつわる2つの記憶。まるで尾崎豊本人になったよう、ステージ上に自分が立って目の前に尾崎豊がいるかのよう、2人がそう表現したハイレゾ版『MISSING BOY』。3月中旬に発売予定のウォークマン® NW-ZX100 尾崎豊生誕50周年記念モデルにプリインストールされています。
ワイヤレスで聴いても、Wi-Fiならハイレゾ音質で、Bluetooth接続でもLDACで、ハイレゾ音質相当の音質を聴くことができます。スマホやウォークマンからスピーカーに繋いでハイレゾ音質で。外で聴くときには、ヘッドホンで。ミュージシャンの息遣いが感じられるミュージックライフをどうぞ。
月刊「大人のソニー」が新しくなります
月刊「大人のソニー」は、来月から毎月のテーマに基づいて、ちょっと上質な遊びや体験を、ソニーならではの切り口で提案していきます。ご期待ください。