- _開発にあたって新規に要望された点はあったのですか。
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- 梶原の発言
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梶原 逆なんです。新規性があっては困るんですね。F-115の音、耐候性・耐久性、信頼性をそのまま復刻してもらうことが僕たちの願いでした。とにかく耳に染み付いているF-115の音と、どんなときでも安心して使える信頼性が最大の目標でした。
- 村上(信)の発言
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村上(信) 強いて新しく要望した点といえば、コードとマイクの接着部のゴムが劣化しやすいので対策してください、といったことぐらいですね。それ以外はまったくF-115のままであることが願いでした。これが今回の開発プロジェクトの大きな特長といえるかもしれませんね。
- 村上(佳)の発言
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村上(佳) すでにF-115の設計者は在職していませんので、検証・研究からスタートしました。TBSさんからもマイクをお借りして、屋外の厳しい環境下で10年前後も使える不思議な事実(笑)を検証したわけです。そういう事実を知ったことが、逆にプレッシャーになりましたね。そこでソニーを代表するサウンドエンジニアである神田さんをはじめとした精鋭のチームにプロジェクトを委ねることにしました。
- 神田の発言
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神田 幸か不幸か(笑)、私はF-115の製造をフォローする立場だったので、ある程度の知識はありました。というより、いまではF-115を知っているのは私ぐらいなんですね。図面や組立仕様書なども残っていましたから、F-115を復刻するという前提なら可能性はあるかなと思っていました。もちろん、簡単ということではなく、苦労させられるだろうことは最初から想定していましたけどね。
- 村上(佳)の発言
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村上(佳) 具体的には、まず耐候性・耐久性という構造面と音質面を分けて取り組み、試作の段階でそれぞれTBSさんにお願いしてテスト、評価してもらい、その結果を次のステップにフィードバックしながら最終形に仕上げていくことにしました。私たちの設計・製造段階でもそれぞれテストや評価は行うわけですが、たとえばお天気情報カメラを設置するような環境下での長期テストなどはメーカーでは難しいのでお願いすることにしたわけです。
- 梶原の発言
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梶原 あとで出てくると思いますけど、TBS伝統のテストもありますから、試作ができる度に耐候性・耐久性・防水性について社内でテストを行い、その結果をフィードバックしました。音についても同様です。30年余り使い、F-115の音は耳に染み付いていますから、ポータブルミキサーに接続してヘッドホンで聴くだけで、F-115の音にどれだけ近づいたか、判定するのは簡単なことです。
- 村上(信)の発言
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村上(信) 試作ができてくる度に、テレビとラジオで評価テストを行い、それぞれの情報を共有しながら改善点なりを要望するという形で行いました。やはり、音については長年愛用してきたことで評価の基準がテレビでもラジオでも一緒でしたから、スピーディーに次のステップに進むことができたと思います。