ZX2 Project Member’s Voice 世代を重ねることで進化した、 軸のあるプレミアムサウンド
モバイルオーディオの世界に新風を吹き込んだNW-ZX1を超え、新たなフラッグシップになったウォークマン「NW-ZX2」。ひとえに高音質を追求し、困難な自己革新に挑んだ開発メンバーに、飛躍的な進化を遂げた秘訣や、エンジニアとしてのこだわりをじっくりと聞いた。
目指したのは、キレがあるのに刺さらない高音質
佐藤 浩朗[音質設計]
NW-ZX1は周波数特性的にはフラットですが、「エッジのきいた元気で楽しいサウンド」になっていました。このNW-ZX2はさらに上のモデルになるので、その点を踏まえ、より上品でなめらかなテイストに仕上げてあります。ベースはNW-ZX1でありながら「キレがあるのに刺さらない音」を狙ったわけです。
佐藤 浩朗[音質設計]
たとえば、ボーカルの子音などが耳につかないということです。自分を含め、スピード感のある楽曲が得意なNW-ZX1のサウンドを好きな方もたくさんいらっしゃると思いますが、実は「音がやや硬い」というご意見をユーザーの方からいただきました。そこで、NW-ZX2ではスローなボーカルや生楽器も楽しめる要素を追加しました。
田中 光謙[商品企画]
音の傾向の硬い・柔らかいという話以前に、ベースの音質が非常に高いということは強調しておきたいですね。搭載している部品のサイズ、質量ともにモバイルではありえないレベルなので。
佐藤 浩朗[音質設計]
そうですね。たとえば、低音の量感がひと回りスケールアップしました。もちろん量が増えただけではなく、締りがあるサウンドになっています。
吉岡 克真[電気設計]
ものすごくシャープな音が出る回路なんですが、そこにホームオーディオで使うような大きな部品を積むことで少しまろやかになっています。
佐藤 浩朗[音質設計]
ほんとうに理想的なパターンが引けたのも強みだと思います。本来は基板のサイズが決まってから引くのが普通なのですが、今回は「オーディオ回路のパターンありき」で基板のサイズが決まるという、逆の順序だったので。
吉岡 克真[電気設計]
電気設計担当として、NW-ZX1はその時点でできる限りの高音質化を図りましたが、NW-ZX2では構造・部品配置・基板などを一から設計することができたので、より自由な発想で理想の音質を追求できました。
佐藤 浩朗[音質設計]
DSD音源をリニアPCMに変換する過程で、ある帯域以上のノイズをカットするフィルターがあります。その特性を変えることで音質が変化するので、せっかくだからいくつか作ってみようということになりました。
デフォルト設定は「スローロールオフ」で、PCM変換ながら、柔らかさや温かみなどDSDならではの良さを十分に感じていただけると思います。もうひとつの「シャープロールオフ」は、「スローロールオフ」とは印象の異なるシャープな音質に設定してもらいました。
※ NW-ZX1は2014年3月実施のアップデートによりDSD(リニアPCM変換)再生に対応。ただし、DSD64(2.8MHz)のみの対応で、デジタルフィルターの切り替え機能はなく「スローロールオフ」の特性のみになります
原田 紀[ソフト設計]
フィルターの係数をいろいろ調整しながら、全部で6種類作りました。開発メンバーで聴き比べながら途中で3つに絞って、振れ幅が大きかったものは今回採用を見送りました。最終的に残ったのが、「スローロールオフ」とシャープな音質になる「シャープロールオフ」です。
佐藤 浩朗[音質設計]
やっぱり、ウォークマンはオーディオ機器の入り口でもあるので、こういったフィルターの切り替えで音が変わるっていう体験をしていただくのも意義があることなのかなと思います。最近はDSDでも幅広いジャンルのコンテンツが手に入りますし、ロック系の曲などは「シャープロールオフ」のスピード感のある音の方がはまるケースもあると思うので、曲調や気分によって気軽に選んで楽しんでほしいですね。
ウォークマンZXシリーズ
NW-ZX2
磨き抜かれた、高音質技術の結晶