ZX2 Project Member’s Voice 世代を重ねることで進化した、 軸のあるプレミアムサウンド
モバイルオーディオの世界に新風を吹き込んだNW-ZX1を超え、新たなフラッグシップになったウォークマン「NW-ZX2」。ひとえに高音質を追求し、困難な自己革新に挑んだ開発メンバーに、飛躍的な進化を遂げた秘訣や、エンジニアとしてのこだわりをじっくりと聞いた。
銅とアルミと金。絶妙な組み合わせが、理想の音を形作る
佐藤 浩朗[音質設計]
NW-ZX1では電気抵抗率が低く剛性が高いアルミの削り出しボディを使っていて、基板単体よりも筐体と組み合わせることで、音が想像以上に良くなったんです。今回のNW-ZX2でもシャーシの材質をいろいろ検討した結果、「シャーシの抵抗値を下げると、グラウンドの安定以外にもメリットがあるぞ」「あと重さも音に効いてくるな」というのが確認できました。「抵抗値の低さと比重の大きさ」が音質に貢献するというわけです。
そして、アルミより優れている素材を探っていたときに「銅」が候補に挙がりました。アルミよりもさらに電気抵抗率が低く、質量も大きい材料が銅なんです。さっそく試作したところ柔らかさも出ますし、高域の伸びや低域の重厚さなどが全体的にワンランク上がる感じでした。
堀本 宏樹[メカ設計]
銅は柔らかい素材なので、それだけでは筐体全体の強度が保てないのがネックなんです。そこで、柔らかく変形しやすい銅を固いアルミで包み込む構造を採用し、銅のデメリットをカバーすることに成功しました。
この銅プレートとアルミフレームの組み合わせによって、筐体の高剛性と一層の低抵抗を両立させることができたのが、NW-ZX1からの大きな進化ですね。なお、必要な箇所のみを銅にして、必要以上に重くならないように配慮してあります。
佐藤 浩朗[音質設計]
でも、銅プレートそのままだと錆びてしまうので、酸化防止のために金メッキを施しました。金は接触抵抗が低いので、銅プレートとアルミフレームおよび基板をぴったり接触させることもでき、電圧のズレが生じにくくなるので、電気抵抗率の低い素材同士を組み合わせた大きな安定したグラウンドとしてみることができます。
この金メッキ加工は装飾のためではなくて、ひとえに機能性を追求したものですが、外側から一切見られないのは少し残念ですね(笑)。
田中 光謙[商品企画]
銅に金メッキという仕上げは、このサイズのオーディオ機器だから可能な選択ですね。ホームオーディオなどの据え置き型では、コスト的に難しいと思います。
堀本 宏樹[メカ設計]
NW-ZX2では細部にわたって材料を吟味しています。たとえば、この小さな筒のような部品も銅製で、筐体のグラウンドと基板のグラウンドを接続する重要なパーツです。
吉岡 克真[電気設計]
小さいけれど電気的に大事なところなんですよ。オーディオ回路がある真下なので、音質にすごく影響してきます。
まずは、「OS-CON」追加の理由からお願いします。
佐藤 浩朗[音質設計]
NW-ZX1のときは、こんな大きなコンデンサーを4基以上入れ込むのはさすがに難しいだろうということで、チャージポンプ電源には「POSCAP」を使いました。NW-ZX2では、そこを「OS-CON」にすることで計7基になり、さらにノイズを除去したきれいな電気を流せるので最終的な音もより澄んできます。
佐藤 浩朗[音質設計]
NW-ZX1ではセラミックコンデンサーでしたが、今回は「キレがあるのに刺さらない音」を実現するために、フィルムコンデンサーを採用しました。思ったとおり、女性ボーカルの伸びや艶が一変したので、早く皆さんにもその効果を味わってほしいですね。
佐藤 浩朗[音質設計]
電源の安定性が格段に高まるので、ボーカルや低域など音質の向上につながりますし、それは数値的にも実証されています。
吉岡 克真[電気設計]
NW-ZX1に搭載しているものの数千倍の容量をもつコンデンサーとお伝えすれば、その性能をイメージしていただけるでしょうか。なにしろ大量の電力を貯めておけるので、電源変化の波ができたときにそれを平らにする能力が非常に高く、それだけ滑らかにすることができます。
佐藤 浩朗[音質設計]
低音がドカンと出たときなどに電流をたっぷり使うので、普通だと電圧がガクッと下がってしまうことがあるのですが、瞬間的に大電力を供給することで、それを余裕で防ぐことができる頼もしいパーツです。
吉岡 克真[電気設計]
アンプの近くにもう1個の電池があるようなイメージです。第二の電池なんですね。
堀本 宏樹[メカ設計]
ひじょうに柔らかくてもろく、しかも大きい。このやっかいなデバイスをどこに配置するのがベストなのか、さまざまな制約のもと検証に検証を重ね、デザイナーにも相談しながら背面のふくらんでいる場所になんとか収めました。握りやすさも兼ねたレイアウトですね。
佐藤 浩朗[音質設計]
電池容量が増えることで電池自体の内部抵抗値が下がるので、そのまま音質向上に結びつきますね。容量が約2倍に増えていますから、仮にNW-ZX1にこれを積んだだけでも音はぐんと良くなります。
吉岡 克真[電気設計]
保護回路基板のパターンを最適に設計し、そこで使用しているトランジスタも、よりインピーダンスが低いものに変えています。
佐藤 浩朗[音質設計]
社内にバッテリーを扱っている部署があるのが大きいですね。こういった細かい注文を遠慮なく出しながら、保護回路基板のパターンにまでこだわって専用に開発した電池パックだからこそ実現したクオリティーだと思います。
吉岡 克真[電気設計]
基板の層数はAシリーズと同じですが、より音質を優先したパターン設計ができました。またAシリーズよりも基板面積が広いのも強みで、そのぶんグラウンド面積を広くとることができ、高音質化に寄与しています。
ウォークマンZXシリーズ
NW-ZX2
磨き抜かれた、高音質技術の結晶