地域医療連携と専門医教育を強化するツールとしてビデオ会議を採用。 新潟大学医歯学総合病院内に設置されたPCS-XG80。 新潟大学医歯学総合病院でのビデオ会議システムの導入には2つの背景があります。一つは、県内全体の医療レベルの向上や地域医療への医師の定着が課題となっていた点。もう一つは2004年に発生した中越地震で、医師不足と医師の移動が困難な状況が重なり、迅速な対応が思うようにできなかった経験があります。この2つの問題を解決する為には、日常から大学病院と地域病院が1つのチームとして情報共有し連携することが重要と考え、地域病院と大学病院との連携を実現させるツールとしてビデオ会議システムの導入の必要性を感じました。そこで2005年度の文部科学省公募プログラムに新潟県内病院でのビデオ会議システムの活用を「中越地震に学ぶ赤ひげチーム医療人の育成」という内容で応募し採択され導入が決定。導入後は病院連携ツールとして評価が高く、さらに2008年度には、多様化・複雑化する国民の医療ニーズに対応できる質の高い医療人の育成を目的とした「NAR大学・地域連携『+α専門医』の養成」を秋田大学、琉球大学との共同事業として文部科学省プログラムに採択されたことを受け、既に導入済みのビデオ会議システムを有効活用できるよう互換性のあるビデオ会議システムを導入し、関連医療機関及び大学間のネットワークを拡張することができました。優れた映像品質と音声品質、シンプルな操作性を評価。 データソリューション機能を活用し、パソコン画面や書画カメラ映像を接続先と共有する。 ビデオ会議システムの仕様策定にあたり、高精細な映像品質、音声品質、安定性を重視してソニー製品が導入されました。1、2回の説明で誰でも操作方法を理解でき、電話をかけるような感覚で使用できる操作性も決め手の1つとなっています。またISDN、光回線など設置地域の実情に合わせた回線を選択できることも重要でした。実際、当時は光回線が未開通の地域が多く、ISDN回線を利用できたのは有用でした。赤ひげチームプロジェクトで導入したスタンダードモデルPCS-G50は、選定時の狙い通り、画質や音声品質、操作性などが各病院で好評を得ています。NARプロジェクトでは、HDの画質の良さ、HD機としては手ごろな価格、そして操作性の良さを評価し、PCS-XG80が導入されました。既存システムとの互換性も十分あり、どの拠点にも簡単に接続でき、資料の共有もスムーズにできます。 2つのシステムを統合し、より広範囲なネットワークを実現。 2005年の「赤ひげチーム医療人の育成」プログラムではスタンダードモデルのPCS-G50を採用し、大学病院に1台、地域病院12施設に1台ずつの計13台をISDN回線で接続しています。2008年の「NAR大学・地域連携『+α専門医』の養成」プログラムではHDモデルのPCS-XG80を採用し、大学病院と新潟県内の関連医療機関に計8台、秋田県内に5台、琉球大学に1台を設置し、光回線で接続しています。現在は両プログラムの相互接続を行っています。さらに、PCS-G50にはデータソリューションボックスを、PCS-XG80にはHDデータソリューションソフトウェアを追加して、パソコン画面やレントゲンデータなどを共有します。
これまで通り地域医療連携や専門医教育用のツールとしての利用を中心とした運用を継続しながら、さらに広範な情報の共有が可能になりました。また、PCS-XG80を導入したことで、レントゲンなどのデータやパソコン映像のページ送りやマウスの動きなどがよりスムーズに表示されるようになり、ストレスが軽減されました。 診察時の疑問や不安の解消と、多地点接続によるセミナーを実現。 ランチョンカンファレンス。大学病院からビデオ会議システムでセミナーを配信。 ビデオ会議システムの活用により、地域病院の医師が大学病院の各科の専門医に相談できる機会が増え、診断時の疑問や不安などをすぐに解消できるようになりました。ビデオ会議システム利用の7〜8割は医療相談・検討会で、赤ひげチームプロジェクトの3年間での利用回数は、約400件ありました。地域病院にいても大学のバックアップを受けられるという安心感は、チーム医療への意識付けにつながったと思います。この他に、地域病院の医師が地域特有の症例を大学病院に対してシェアしたり、ミーティングに使用したりなど、平均して週に2、3回はビデオ会議システムを利用しています。また、7月からは7〜8拠点の多地点接続を行い、ランチョンカンファレンスの配信を開始しました。ランチョンカンファレンスとは、学生や研修医を対象に毎週水曜日のお昼休みに大学病院で開催しているセミナーです。すでに3回ほど配信を行いましたが、遠隔地から質疑応答にも参加できるため、地域病院の医師からも好評を得ています。 すでに6台のPCS-XG80追加が決定。 Web遠隔コントロール機能により、新潟大学病院から一括して接続、管理することも可能。 医療相談・検討会で共有する映像は、カメラ映像よりもPC画面などのデータがメインとなります。PCS-G50の映像でもデータを読み取ることはできましたが、NARプロジェクトで導入したPCS-XG80は画質が鮮明でなめらかに再生することが可能で将来的にはエコー映像(動画)の共有など、診断レベルでの利用や、相手の状況を詳細に確認できる機能を生かし、新潟大学病院の高次救命災害治療センターの緊急時遠隔支援ツールとしての活用を検討していきたいですね。今後はPCS-XG80の6台の追加をはじめ、県内の多くの病院に設置を行い、地域病院との連携を含めた質の高い医療人の育成のためのツールとしてさらに活用していきたいと思います。
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