地域ごとの発達支援情報の較差をサポートする遠隔システムを必要としていた。 子ども発達臨床研究センターに設置されたPCS-G50が親機となる。 子ども発達臨床研究センターは、1978年に乳幼児発達臨床センターとして設立し、2006年から現在の名称となりました。 子どもたちの抱える“生きづらさ”を多様な視点から分析し、家庭や学校、地域社会などとの連携対応のあり方について研究しています。 2007年度より、文部科学省の戦略的研究推進事業として、当センターを中心に、子どもの発達に心配のある保護者や、子ども自身が地域で安定した生活が営めるような「軽度発達障害児・者に対する生涯教育支援プログラムの開発」が採択されました。 その事業の中の「道内各地との遠隔相談の実施と遠隔支援方法の開発」にビデオ会議システムを活用することにし、研究の最先端にいる専門家の方針や考え方を地方の直接支援の現場に提供したり、保護者へトレーニングを行うことで、地方と都会の支援・情報較差を少なくしたいと考えました。(田中教授) 運営趣旨や拠点数、回線環境などに最適なシステムとして導入。
PCS-G50を親機とし、PCS-1を4拠点に導入。貸与用にPCS-TL33も。 2007年6月、親機となるスタンダードモデルPCS-G50と50インチディスプレイ、書画カメラなどの資料映像を送信するデータソリューションボックスを、当センターに導入しました。また、子機となるセットトップモデルPCS-1と32インチディスプレイは、北海道内の4地域の発達支援センターに設置しました。ビデオ会議システムを導入した発達支援センターは4拠点ですが、最適な効果を図り、当センターと2拠点をつなぐ合計3拠点で実施しました。(田中教授・内田様・久蔵様)2008年3月には、オールインワンモデルのPCS-TL33を2台導入しました。こちらは、遠隔支援を希望する施設に当センターから貸し出す形で配送し、現地でセッティングしてもらいます。そのための専用キャリーボックスとマニュアルも用意しました。まだビデオ会議システムを導入していない施設に対しても、情報の較差をなくす努力を進めています。(田中教授・内田様・久蔵様) 遠隔トレーニングによってきめ細かい情報伝達を実現。さらに地域ごとのコミュニケーションが深まった。 トレーニングではホワイトボードも活用する。 ホワイトボードの文字は、カメラを通してクリアに読み取れる。 2007年11月と12月に、発達支援センターを利用する保護者への遠隔ペアレントトレーニングを施行しました。はじめは、ビデオ会議を利用してトレーニングや情報発信を行うことそのものに価値を感じていました。しかし、試行後に保護者に対しヒアリングしてみたところ、マイクをオフにすることで会場ごとのディスカッションが活発になり意見がまとまりやすくなったことや、職員と保護者のコミュニケーションが一層深まったことなどの所感があげられました。確かに遠隔支援は企業の会議と異なり、積極的に発言しあうことが目的ではありません。ただでさえ不安を抱える保護者の方々にとって、ビデオ会議越しに発言する行為は直接顔をあわせて発言することよりも緊張を伴うものです。そこで、ディスカッション時のマイクオフだけでなく、発言者をクローズアップするようなカメラ操作をあえて行わないなど、圧迫感を軽減する工夫をしました。その結果、ビデオ会議によるトレーニングの実施と情報交換に加え、コミュニケーションの円滑化という二重の効果を得られたと感じています。(田中教授・内田様・久蔵様) 地域較差を埋める手応えあり。本格稼動のためのプログラムを検討。 PCS-TL33用に専用キャリーボックスを用意し、各施設に貸し出す。 4つの発達支援センターと行ったビデオ会議を利用した遠隔ペアレントトレーニングは、システムに馴染んでもらうための試行であり、本格稼動はこれからです。しかし、ビデオ会議システムを利用することによって、単なる一方的な情報配信ツールとするのではなく、保護者や直接支援者にとって心の触れ合いを感じられるプログラムになるという手応えは感じています。さらに当センターが対象としているのは、福祉現場の職員や医療関係者などの直接支援者も含まれます。支援者向けの研修は主に都市部で開催され、地方の支援者がそれに参加するためには、勤務している施設を休館にして、1日がかりで移動しなければならないこともあります。これではなかなか研修へ参加できません。このような状況をおぎなうためにもビデオ会議システムは役立ちます。将来的には、北海道内にある八十数か所の発達支援センターに対して支援を広げ、地域較差をなくしていければと考えています。(田中教授・内田様・久蔵様)
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