「地域医療の崩壊」を抑止するため、都市部の病院と連携を密にし、地理的なデメリットを解消したい。 距離を感じさせない臨場感の高いカンファレンスを実現。 現在、「地域医療の崩壊」や「医師不足」「医師偏在」が問題となっています。都市部の有名研修病院に医師が集中する一方、地方の病院では、慢性的・構造的な医師不足に悩まされています。医師不足により、現在いる医師の業務負担が増大、燃え尽きて退職、という負のスパイラルが常態化しています。当地域も例外ではなく、強い危機感を持っています。医師は自らの技術の研鑽を求めて動きます。特に若手医師はその傾向が顕著です。よって、医師不足対策には教育研修環境の充実が最優先課題であると認識し、まずは、都市部の病院との連携、人的交流事業などを開始しました。しかし、学会・勉強会・研修会への出席などに関する地理的な不利を解消することは事実上不可能であり、何らかの対策が求められていました。 映像や音声の品質、サポート体制が選定のポイント。 フルHDの高画質で遠隔地との医療画像の共有も可能。 都市部の病院との連携強化には、遠隔地間での合同カンファレンス(実際の症例についてスライドを用いて検討・議論する会議)が有効であると考え、ウェブ会議システムを導入しました。しかし、「動画が止まる」「音声が途切れる、不明瞭」といったトラブルが頻発。ウェブ会議は、ある程度の広さと人数になると、想像以上にハウリング等の音声制御が難しく、使いにくいものであることを実感しました。「このままだと近い将来会議そのものが成立しなくなる」と考え、代替案を探していたところ、遠隔地間での会議を主催している医師と偶然お話しする機会があり、我々と全く同じ理由でソニーのHDビデオ会議システムの導入にいたったとのこと。 そこで、ソニーのデモを幹部職員と見たところ、ウェブ会議システムとは映像も音声も「似て非なる、全く別もの」。とにかく、臨場感が比べ物になりません。 複数社のHDビデオ会議システムから最終的にソニーを選んだのは、画像や音声、アノテーションといった性能面はもちろん、価格面や多地点接続への対応に加え、全社をあげてのサポート体制も理由のひとつでした。単にシステムを入れてメンテナンスするだけでなく、一種のビジネスパートナーとして相互に提案、開発するといった、発展性・将来性が期待できること、これが大きなポイントとなりました。 兵庫県立尼崎病院やグループ5病院をつなぐHDビデオ会議システム。 グループ病院(豊岡病院、日高医療センター、出石医療センター、梁瀬医療センター、和田山医療センター)間を結ぶ、bit-driveのインターネットVPN網を構成。豊岡病院と姉妹提携している兵庫県立尼崎病院ともカンファレンス用に接続可能。
カンファレンス、コンサルテーションに活用。日程調整困難な会議も実現。移動時間やコストを節約でき、参加者が増加。 複数の医療機関とも同時にカンファレンス開催が可能に。 ビデオ会議システムを導入したことで、離れた病院間でのカンファレンスやコンサルテーションが可能となりました。ウェブ会議で頻発していたような音声トラブル等によるストレスもありません。円滑なコミュニケーションにより、病院間の緊密な連携、医療レベルの向上が実現しています。グループ病院はそれぞれ車で30分〜1時間程度の距離にあり、会議の出席のために半日潰れたり、医師であれば診察に穴をあけなければならないこともありましたが、一カ所に集まらなくても顔を見ながらの会議が可能となったおかげで、移動にかかる時間と経費の節約になる上、これまでなら日程調整ができずに参加できなかった会議にも参加が可能となり、実際、時間外に病院を離れられない当直医を交えての会議も実現しました。 臨床・研修の充実のため、都市部の病院や大学病院、近隣医療機関との連携も模索。 症例報告のレポートなど、PCデータも鮮明、かつ容易に共有。「豊岡県医局開設布告文」140年を越える歴史を刻む。 現在は、グループ5病院と兵庫県立尼崎病院でHDビデオ会議システムを整備、接続していますが、将来的には県内全域に連携を拡大していきたいと考えています。あたかも隣の町にいるように最新の知見や技術を得る事ができる環境は、地域の中小病院の孤立を防ぎ、「地域医療の崩壊」「地方の医師不足」「医師の偏在」を解決する糸口になると考えます。 実は、このように都市部と地域を結ぶことによってメリットがあるのは地域だけではありません。互いの良いところを持ち寄り、切磋琢磨することは、結局、都市部の病院、そこで勤務する医師や看護師、更には住民にとっても大きなメリットとなります。 看護教育への拡大も検討しています。病院で必要とされる「認定看護管理者」の認定を受けるには、決まった施設で数ヶ月に及ぶ研修が必要ですが、都市部と異なり、この地域からは時間面でも費用面でも通学が困難で、家庭の事情で資格取得を断念せざるを得ないケースも出ています。このような問題もビデオ会議システムよる遠隔講義が認められれば負担も軽減され、受講者が増えることが期待されます。 実際の診療への応用はまだこれからですが、もうすぐ、ビデオ会議システムが電話のように「あって当たり前」になる時代が来るのかも知れません。 「豊岡県医局開設布告文」には、「田舎であることにより病気になったり死んだりすることのないよう、ここに病院を開設する」と書いてあります。140年以上時代が経っても同様な状況にあることを思うと、地方ゆえの不利は常につきまとうようです。これを断ち切る道具として、ビデオ会議システムが有効に機能することを願っています。
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